バクエジオを探す
ちょっと精神的に辛いことがあって手が止まっていました。
土日の間にはまた更新出来るように頑張りたいと思います。
屋敷中に灯っていた明かりがほとんど消えたのを見て、俺たちはこっそり小屋から抜けだした。
流石は遺失属性の魔法というべきか、魔法に長けていそうな魔術師の近くを通っても全く気付かれる気配が無かった。
ああ、ついでにミファルが殺した死体も全て隠してある。
向こうからしたら、突然いなくなったのと同じなので、神隠しのように感じていることだろう。
現に今近くを通った騎士も顔を青ざめさせていた。
「神罰でも下ったのか……?だとしたら、次は我々なのでは……?」
ことを成したのが天使である事を考えるとそう間違ってはいないように感じるが、やったのはただの天使ではない。残念天使だ。
神罰というよりは自然災害のようなものだと思って気にしないでいた方がいいぞ。
動揺する敵の間をすり抜けて、俺たちは件の屋敷の前に辿り着いた。
ここからが問題だな。
「ミファル」
「はぁい。……やっぱり何かありますよぉ」
「どんなやつだ?」
「感知系かな?範囲内に、印を持たずに入ると術者に伝わるタイプだと思いますぅ」
「分かった。じゃあ突っ切ろう」
ミファルの報告を聞いて、俺は迷いなくそう決断する。
すると蚊帳の外にされたことが嫌だったのか、アルテミシアが話に混ざってきた。
まるで子供だな。
「……一応聞きたいんですけど、どうしてですか?見つかるって分かってて突っ切るのは……」
「バカだって言いたいのか?」
「その……」
はい、とは言えないか。
面と向かって罵倒するなんて、王族としてあるまじき事だからな。
「まあ、理由は簡単だ。その程度の罠なら、ミファルがいるだけで抜けられるからだ」
「えっと……?」
「どうやって、とは聞くなよ。答えたくないし、答えられないからな。とにかくそういうものだと思っておけばいい」
「わ、わかりました」
言葉だけは大人しく、アルテミシアは引き下がった。
俺がほとんど教えないせいで不平不満が募っているだろうが、これはある意味アルテミシアの為でもあるし我慢して欲しい。
もし教えても、アルテミシアの頭では理解できないどころか混乱させるだけになりかねないからだ。
罠が効かない理由なんて、その最たるものだ。
ミファルが天使であるということ。
それだけで、大抵の悪意あるものは無効化されるなんて事は、アルテミシアには理解出来ないだろう。
そもそもこの世界では天使という存在は現れた事がないようだし、それ以前の問題かもしれない。
いずれにせよ、この世界の魔法が地球にとっては証明できっこない超常現象であるように、天使という存在や地球の科学なんてのはこの世界にとっては理解出来ないものなんだろう。
「ミファルが先頭、俺が一番後ろでアルテミシアはその間。絶対に俺たちから離れるなよ」
「はい」
「じゃあ、行きまぁす」
カタリ、と音を立てて扉が開く。
魔法が一般的に普及している世界なだけに、鍵も【施錠】という魔法で代用されていた。
触れる事もなく、手をかざすだけで開いた扉を見てアルテミシアが絶句しているが、その背を押して立ち止まった足を無理矢理動かさせる。
ミファルから離れすぎると、感知系の魔法に引っかかってしまうからだ。
「驚くのはいいが、止まらないでくれ」
「す、すみません……」
軽く注意すると、アルテミシアは身を縮こまらせながら謝ってきた。
俺はそれに肩をすくめて返し、待ってくれていたミファルに追いつくために足を速めた。
「悪いな」
「いえ。気にしてませんよぉ」
ふんわりと微笑むミファル。
本当に気にしていないならその目はやめろと言いたい。どう見てもアルテミシアを睨みつけている。
ああ、怖がって俺の後ろに隠れやがった。
それを見て更にミファルの目付きが凶悪に……。
「……いい加減にしろ」
「「あたっ!」」
俺は二人の頭を軽く叩いた。グーで。
恨みがましく見てくる二人に、俺は小さい声で言う。
「仲良くなってくれたのは嬉しい限りだが、これ以上時間を無駄にすんな。それと声でかいからもっと小さい声で喋れ」
「はぁい」「ご、ごめんなさい」
バレて困るのはアルテミシアだけだが、それでもだ。
アルテミシアの面倒を見なければいけないのは俺なのだから、結局は俺に厄介ごとが回ってくるわけだし、その種はないに限る。
「それで、ミファル。バクエジオがどこにいるか分かるか?」
「ちょっと待って下さい」
そう言って虚空を見つめ、クルクルと指を回し始める。
つられたアルテミシアが目を回しているのを何とも言えない目で見ていると、その手を止めたミファルがこちらに向き直った。
「分かりましたぁ」
「おお。どの辺りだ?」
「それが……」
ハッキリしない態度をとるミファルだったが、それは焦らしたりしているわけではなく、本人も混乱しているようだった。
「……どうしたんだ?」
「えっと。場所は、たぶん地下なんですけど」
「けど、なんだ?」
「その、
……この屋敷、地下なんてないんです」
地下がないのに、地下にいる。
ミファルの言っている意味がわからずに俺は混乱したが、冷静になってくると最悪の考えが頭に浮かんだ。
「まさか、もう死んでるのか……?」
埋められたんじゃないか。
俺の頭の中を、そんな考えがグルグルと回っていた。




