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狐の森で

(取り敢えず、 狐の森へ行ってみよう)


案外簡単に、春保様が言った。


(この時代に、 残っているのですか?)


半信半疑。


私は尋ねた。



(うーん。 恐らくあの森かなって……。

陰陽師は、 色々修行するでしょ? 昔から

修行する場所があるんだ。 不思議な森で。

だから、 多分そこかなと。 代々伝えられてきた、 不思議な森。 さっき天后が言ったでしょ。 狐の森に、 君のお師匠様が身を隠してるって。 きっと、何か手掛かりになる

物を残しているかなってね)



考えておられている……。


先を見据え、道筋をたてる。


同じ運命(さだめ) を持つ陰陽師……。



私は、春保様に連れられ、この時代の狐の

森へ向かった。



日が段々と傾き始めてきたが、何かしらの

手掛かりはつかみたい。



道すがら、春保様について、様々な事を尋ねた。


代々陰陽師のお家に生まれ、幼き頃より

修行を重ねてきた。


お家に伝わる書物を護り、私が訪れる時を

待っていた……。



私にしてみれば、つい先ほどこの世に来てしまったのだけど、春保様からすれば、代々伝わる物……。


不思議な感覚である。




(さあ、 着いたよ)


わた達は森の入り口に立った。


木々が生い茂る、薄暗い森……。


平安の世とあまり変わらない気がしたが、

森の入り口には、花が咲いていたり、遠くからは、聞きなれない音がする。



静けさは、ない……。



私達は森へと足を踏み入れた。



差しては変わらない森。


けれど、時を超えた森……。


(多分、 何処かに何かあるはず)



春保様の言葉には、自信がある。


やはり、お師匠様の家系のお人だから?



どんどん奥へと進み、小さな祠らしき物を

見つけた。



(やっぱり。 これだったんだ。 昔から不思議な感じがしてたんだけど、 やっと分かったよ)


(何がですか……)


(お宝?)



宝……?


不思議そうな顔をした私に向かい、春保様は

笑いながら言った。



(ごめん、 言い方違った。 えーとね。 時が

来たら、探す様にって言われてたやつ。

色々あるから、 忘れちゃうけどね。 本当、

陰陽師の家系は面倒だよ)


そう言って祠らしき物をそっと触った。


春保様のお顔、嬉しそうなのは、気のせいであろうか……。




何やら呟く春保様。


暫くして、祠らしき物の中から、古びた木箱を取り出した。



(長い間、 開く事は許されなかった。 時が来て、 開く事が許された……)


そう言って、木箱をそっと開いた。



中には、一枚。文が入れられていた。


今にも破れてしまいそうな文を、春保様は

大事そうに出した。



(多分、 君のお師匠様からの物だと思うよ。

何かしらの手掛かりだよね)



私にそっと手渡した。



全身が震える……。


お師匠様は、あらゆる手を使い、私に伝え様として下さった。



私は震える手で、文を開く。



紛れもなく、お師匠様からの物だと確信した……。


(お師匠様からの文……。 お読みしても?)


(もちろん。 読んでもらわないと困るよ)



……覚悟を決め、お師匠様の文を読んだ。



(楠葉がこの文を読んでいると言う事は、我が家系の者が、これを見つけたと言う事。

すなわち、 天后が現れた……。 私が狐の森に身を隠した事も知った事になります。

不覚にも、 都隠すしかありませんでした。

楠葉の力なき今、 どうする事もできません。

しかし、 私の家系の者、 楠葉と運命を共にする者と、 都を救って頂きたいと……。

その者は、 運命に導かれし者です。 楠葉と同じ世に生きるべき者でした。 しかしなが

ら、 悪しきものより護る為、 時代を超えなければならず、 後の世に生を受けた……。

神により、 護られたのです。 そして再び巡り会う時、 二人力合わせ悪しきものと対峙する。 ……目まぐるしくも、受け入れなければならぬさため。 どうか理解し、己の道を、

受け入れて欲しいと願います)



……二人、言葉を失った。


どうにもならぬ運命。


己のさだめに従うしか、ない。



(同じ運命、 力を持つ者同士。 神のさだめに

従うしかない……)



朱雀の言葉が沈黙を破った。



じっと、私の話を、噛みしめるかの様に、聴いていた春保様。


何をお感じになられたのか……。




(うーん……。 まあ、 運命とか何だとか、いきなりは信じられないし、 呑み込めない。

けど、 自分の家に伝えられてきた物は、大切な意味を持つし、 力になれと言われてきたから、 何と無くだけど、 自分のやるべき事みたいな物があるんだなと……)



一つ一つを、己に言い聞かせる様に語りかけた。



(運命を受け入れる……?)


(決められた事ならね。 逃げられる物じゃないでしょ)



お強い、方……。


素直に、己の運命を受け止めるのか。


迷いや恐れ、様々な想いがあるはずなのに。



(楠葉と同じならさ。 十二神将の力、 借りられるのかな? だって、 別の時代に送られただけで、元は同じって事でしょ。 二人が同じ力を持つなら、 神将の力だって強くならない?)


考えもしなかった。



同じ運命(さだめ) にあるのなら、 確かにそうかも知れない。



己に正直な春保様。


私は出会うべくして出会った事を確信した。


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