9 着々と成長を続ける
俺の強化特訓は着実に進んでいった。
槍のスキルは多くの敵をまとめて倒すのにかなり適していて、それも効率化に拍車をかけていた。
数多の敵を討伐したことで、数多のドロップアイテムを入手することができたが、その中でも以下の二つが手に入ったことがかなりデカい。
【呪われたヘル・パ・ヘルドの太陽マント=天の楼閣(Lv.99)】
基礎防御値:物理99
装備に必要な力:VIT『SSS=5』
◎発動特性
【絶魔の結界】【被ダメージ減少】【物理ダメージ上昇】【VIT上昇】【潔癖の怨嗟】【確率被ダメージ無効】【オート回復】【確率スキル発動】
◎スキル
【隠されしもの】【盲目なるもの】【見つめるもの】【頂くもの】
【亜空間のピアス】
◎発動特性
【被ダメージ減少】【TEC上昇】【確率被ダメージ無効】【オート回復】【確率スキル発動】【回復率UP】【オートゲイン】【コインドロップ】
◎スキル
【亜空間ポケット】
以下、スキル及び特性の詳細。
【絶魔の結界】:魔法被ダメージを30%軽減
【被ダメージ減少】:被ダメージを30%軽減
【物理ダメージ上昇】:物理与ダメージを30%上昇
【VIT上昇】:VITステータスを50ランク上昇
【潔癖の怨嗟】:全ステータス異常を防止
【確率被ダメージ無効】:***A以上の者の受けるダメージを20%の確率で無効化する
【オート回復】:常時体力と魔力を回復し続ける
【確率スキル発動】:***A以上の者のスキルを必要時20%の確率で自動発動する
【TEC上昇】:TECステータスを50ランク上昇
【回復率UP】:回復効果を50%上昇
【オートゲイン】:ID時、自動でポケット内に取得
【コインドロップ】:攻撃時にコインがドロップ
【隠されしもの】:被魔力感知を完全に無効化する
【盲目なるもの】:180秒間、任意の物体を不可視にする
【見つめるもの】:範囲INT依存で魔力感知フィールドを展開する
【頂くもの】:防御フィールドを展開し、感知済み攻撃の吸収・防御を自動で行う
【亜空間ポケット】:固有亜空間にアイテムの出し入れが出来る
以上を反映した現在の俺が以下。
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◎ステータス
STR《腕力》 :SP=4
TEC《技術》 :SP=4
INT《知力》 :SP=4
CON《信仰》 :E
VIT《体力》 :SP=4
AGI《俊敏》 :E
◎装備
・武器【呪われたイコン・ヴェーダの聖槍=天の楼閣(Lv.99)】
・防具【呪われたヘル・パ・ヘルドの太陽マント=天の楼閣(Lv.99)】
・指1【会心の指輪】
・指2【カラビラリング】
・指3【イブリースの囁き】
・耳1【亜空間のピアス】
◎発動特性
【炎氷の天魔師】【閃光属性追加】【物理ダメージ上昇】【会心の心得】【STR上昇】【INT上昇】【禍根の怨嗟】【被ダメージ減少】
【絶魔の結界】【被ダメージ減少】【物理ダメージ上昇】【VIT上昇】【潔癖の怨嗟】【確率被ダメージ無効】【オート回復】【確率スキル発動】
【会心の心得】【確率ダメージ無効】【魔法弾発射】【ID率上昇】【DIQ上昇】
【被ダメージ減少】【TEC上昇】【確率被ダメージ無効】【オート回復】【確率スキル発動】【回復率UP】【オートゲイン】【コインドロップ】
◎所持スキル
【壊滅世界】【黄金世界】【不遜世界】【四季世界】
【隠されしもの】【盲目なるもの】【見つめるもの】【頂くもの】
【亜空間ポケット】
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まずマントを入手したことにより、この化け物どもが跳躍跋扈する四万層であっても、かなり自由に立ち回ることが可能になった。
何と言ってもスキル【見つめるもの】とイコン・ヴェーダの槍との相性が良すぎる。
槍の特性により俺のINTはほぼ最高ランクの”SP=4”であり、INT依存の【見つめるもの】はハンパなく広い索敵フィールドを展開することが可能となる。
魔力消費を鑑みても、十分すぎる広さを常時索敵しづけられ、それにより敵が俺より先に勘付くことはこの四万層においても皆無。
あとは槍の長距離攻撃により一方的に始末すれば良い。
つまり槍による強い立ち回りが、より強固に、万全な体勢となった。
そしてピアスの【亜空間ポケット】は、俺に持ち運び可能な無尽蔵の収納スペースをもたらした。
更に特性【コインドロップ】により殴る度に金が落ちるし、それらが自分で拾いに行く必要もなく【オートゲイン】で【亜空間ポケット】に収拾される。
圧倒的効率性――っ!!
おかげで消費アイテムやお金が亜空間ポケットにざっくざっく貯まっていく。
そんなこんなで42,212層から順繰りに敵が根絶やしになっていって、今では実に43,555層までが敵のまったくいない安全圏と化していた。
「うん、一体多数という観点では、最早圧倒的に僕より上だね」
ここ最近の俺の仕上がり具合について、師匠が評価する。
「ありがとうございます!」
俺はお手製のシチューをかき混ぜながら、感激した。
ちなみにシチューに使っている肉はブラックタイガーと命名したこのダンジョン特異のモンスターのものである。
ブラックタイガーの見た目はまさしく真っ黒い虎なのだが、何故だかその肉には甲殻類のような味わいも混ざっている為、鍋にすると奥深い味わいを生みだす。
このことを発見したのは俺で、今ではすっかり黒虎のシチューは俺の得意料理となっており、師匠もその味をかなり気に入ってくれていた。
「すっかりヴァンくんもダンジョン生活に適応したなあ。なにもしなくても寝床とご飯が用意されていく」
今はアジトではなく、出先の43,555階でキャンプを張っている。
ここ最近では一千層以上アジト階から進んでいることが多い為、そのまま帰らず、敵を根絶やしにしてその階層で寝ることが増えてきた。
「僕ひとりの頃には、アジト階以外ではいつも敵に見つからないように隅で丸くなって寝ていたものだけれど、こんなに大手を振ってキャンプできるなんて……、全部ヴァンくんのおかげだね。僕は今、猛烈に感動しているよ」
「あんまり褒めないでくださいよ、照れるじゃないですか」
「ダンジョンシェフとしての腕前も今では三ツ星レベルだ。その場で調達した食材をどう美味しく調理するか――そのセンスと手並みはもう僕以上だね」
「師匠の指導の賜物です。それに、師匠に美味しく食べてもらいたい――その一心でやってますから」
「ふふふ、ヴァンくんのような弟子を持てて、僕は幸せだよ」
「ありがとうございます。俺も師匠のような師を持つことが出来て、本当に幸せです」
でへへ、とお互いに照れあった。
「でもヴァンくん、ダンジョントラップにおける対応力については、まだまだ検討の余地がありそうだね。今日も三回くらい死にかけていただろう?」
「うっ」
そう、俺がここまでこの階層帯で立ち回れているのは装備の性能によるところが大きく、そしてその性能の多くは”戦闘面”に特化している。
故に、それ以外の――主に”探索面”においては未だ適応しきれているとは言い難い状況だった。
「……面目ありません。も、もっと精進します」
「あはは」
しかし師匠はおかしそうに笑った。
「冗談だよ。ヴァンくんは十分すぎるほどよくやっている。そもそもここは常軌を逸した深層帯なんだ。僕のように数年かけて少しずつ進んで来てるならともかく、やって来て数週間のヴァンくんがなんでもかんでも完全に適応できてるはずがないさ」
むしろ数週間でここまで伸びていることの方が驚きだ。
と、師匠は言い添えた。
飴と鞭。
なんて素晴らしい指導者なのか。
一生付いていきたい。
心の師匠だ。
「だから――そうだね、ヴァンくん。もしかすると当初の目的は、もう達していると言っても良いのかもしれない」
できあがったシチューをよそい、師匠に渡す。
師匠はお決まりの「きみの悲しみは今日も僕が背負う」という祈りを捧げる。俺もそれにならって祈る。
初日に師匠がそうやって祈りを捧げていたのを見たときには、この人はとても信心深い気質であるのだと――そう思ったものだったが、
しかし、
今なら分かる。
師匠の過去の話を聞いた今なら。
一緒なのだ――
今から俺たちが食べる肉は、かつて師匠が目の前で食べられそうになっていたゴブリンと同じ。
つまりその者と心を重ねた師匠とも同じ。
煎じ詰めれば、この肉を食べる俺たちは、かつて師匠を食べようとしたミノタウロスとなんら変わらぬ。
両者の立場を経験したからこそ、師匠はせめて祈っている。
いや、祈らざるを得ない。
彼はそれを一口食べて、「美味しいよ、ヴァンくん」と満面の笑みで言った。
「ありがとうございます」
「うん、…………ああ、それでね」
師匠は食べる前に話しかけていたことの続きを口にする。
「きみはもう一人前だ。だから、もうそろそろ、頃合いかもしれない。次にアジトに戻ったら――行こうか」
――超弩級ドラゴン階に。
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