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竜技の師と弟子  作者: 鷹城
第4章 封刃一族編
112/112

第112話 封刃主天vs 六剣士

 辺りはすっかり暗くなっていた。

 積もる雪があるものの降る雪は全くもって見えない。

 頼りになるのは民家から漏れ出ている黄色い灯里あかりと細く突き立っている白い光を灯している街頭のみだ。


 剣の国の民は封刃一族ふうじんいちぞくに恐れをなし家の中から外へと出る事はない。


 かといって他の国に逃げようと考える者はそこまでいなかった。


 頼りになる者がいる、速剣竜そけんりゅうオーダを初めとする風凛華斬ふうりんかざんの剣士の存在、三重みえ美芸びげい霊霧りょうむ竜アストラルと花斬かざん竜アテネの助力もあるからだろう。


 だがしかし簡単に事態は解決はしない、剣の国の民は日々狙われ続けている、竜技りゅうぎを持つ者が存在している限り封刃主天ふうじんしゅてんから狙われるのは必然だと言える。


 これは"狩る側"と"狩られる側"と"守り手"との闘い。





 ***




「来たか、封刃一族ふうじんいちぞく!」


 視界の悪い中で剣の国の剣士6名が封刃主天ふうじんしゅてんリチェル、鋼拳龍こうけんりゅうレズァードと対峙していた。


「さーてこの中に竜技りゅうぎ持ちはどれぐらいいるかなぁ」


 リチェルは相対する剣士6人を目を凝らして楽しそうに見回している。


「リチェル、背中は預けたぞ」


 レズァードは両手の握り拳を上げ構えた。


「別に大丈夫だよん、これぐらい」


「何があるか分からん……油断はするな」


「はいはい」


 リチェルはレズァードの忠告を軽く流すと、指を構え相手に集中した。


 ……竜技りゅうぎ持ちは4人いるわね。レズァードと半々かな


 リチェルとレズァードを取り囲むように6人の剣士は構える。


時立視具トリミング


 リチェルが枠に捕らえたのは剣の刀身を右斜め下なら構える漢竜かんりゅうともう一人右腕を肩まで上げ地面と水平に剣を構えている男。容赦無い斬撃が今2人の身に迫っていた。









 突如としてリチェルがみる視界が薄暗くなる。


「……あっれぇ?」



 リチェルはキョトンとする。 


 無傷に立つ2人。


 薄暗くなったのは後ろにある街頭が真っ二つに切れていたからだ。


 何かの勘違い。


 リチェルには余裕があった、見ただけで弱いと思っていた剣を持っていようと近づかなければリチェルを斬ることは愚か闘いにすらならない。


 何かの勘違いのはず……だから2回目は確実に確認して1発で撮る気でいた。


 視界が標的へ。




「ゴーデス!」


「カジ!絶対に前に出るなよ!」


「分かってる!」


 敵2人は動き回り自分へと斬り掛かろうと迫ってきているが……間に合う事がなくピントが合う。







 ー今!


 パシャ。と乾いた音が雪が止んだ夜に響く。












 ーー竜技りゅうぎ 事返使ことがえし


 剣の国の漢竜かんりゅうゴーデスが使うつるぎ竜技りゅうぎに対して"跳ね返す"性質を持っている。


「……へ!?」



 リチェルは自分の身に初めて自分の竜技りゅうぎを喰らう事になった。


「リチェル。油断はするなと言っただろう」


 リチェルが吹き飛んだ先には残り4人と闘うレズァードがいたようだ。


「……写像再生フォトリフレイス


 幸い跳ね返った時立視具トリミングはリチェルの腹を斬り撮っただけでリチェルを死に至らせる事は無い、常人であれば余りの痛みに耐え切らず数秒で骸と化すはずだが写像再生フォトリフレイスによる再生力、リチェルの異常な気力が痛みをこらえさせ彼女に行動させているのは間違いない。


 狂人には限界が無いのだろうか?いや寧ろ極限を経験している状況が 封刃主天かのじょらを作り出したと言えるのだろうか。


「んー……ちょっと面倒くさいなー……レズァード交代しない?」


 レズァードはいいだろうとリチェルに声を掛けようとしたがその暇を相手が与えるはずが無い。


 背中合わせになり立っている2人の視界に飛び込んで来たのは眩いほどの白い光だった。


 ……くっ!厄介だ。


 レズァードと闘っていた4人の内の1人の女竜じょりゅうジェリエが使う"光る剣" 火焚流ほたるは交代を許さない。


曲狩まかり!」


事返使ことがえし


火焚流ほたる……」


繰鋭刀クリエイト!」


 リチェルとレズァードそれぞれの視界が開けた時に6方向から迫る刃。


 その内の1つは刀身が曲がり軌道を読ませない。


 1つは竜技りゅうぎを跳ね返す。


 1つは光り視界を遮る。


 1つは2本目の剣を生成し投げかかる。


 そして残り2つの剣閃が力と柔によって振りかかろうとしている。






 それだけで思考が狂う。対応に追われる。だけどここで終わる訳にはいかない。






 リチェルはゴツゴツしたレズァードの背中に構えた指を当てて言う。


「……いいよね?」



「構わん、やれ」


 その瞬間リチェルはレズァードに"傷"を付けた。




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