第102話 三者利
「成功ですわ」
魔頂竜グラマリアは地面に突き立てた3本の折れた木の杖を見て満足気に笑った。
対峙していた岩龍ログは咆哮を上げると岩のような右手を握り地面を叩きつける。
それに呼応してグラマリアの四方を巨大な岩の柱が囲む、見上げる程の高さを持ったそれはログがあげた左手をふりおろすとグラマリアへと畳む様に迫ろうとしていた。
「何て派手な技かしら」
グラマリアは咄嗟に地面に積もっていた雪を握り上へ花を散らすように投げる。
地上に迫る巨大な岩に対して投げられた雪は岩に触れるだけで岩を粉々に砕いた。
そして砕かれた岩の破片が雪に混ざって降り落ちていく。
白と茶系の霰はログとグラマリアの周囲を包む様に舞い消えた。
「グルゥ!」
ログは怯まず岩を生成しグラマリアへと攻撃を仕掛ける。
地面から一直線に生える岩を次々と連なる様にグラマリアに向けていく。
「パペット」
グラマリアは後ろに控えさせていた吸収龍パペットを盾のように前へと突き出す。
意思の無い人型の綿の塊は岩を直に受けた。
「何ですって?」
グラマリアが驚いた視線の先には岩の衝突に吹き飛ばされるぬいぐるみの様な龍が映る。
それだけでは無くそのぬいぐるみを押し飛ばしている岩から更に岩が棘の様にグラマリアへと数発発射された。
とっさの奇襲に驚いたグラマリアは地面を蹴り足へと当たりそうになった岩の棘をスレスレで避ける。
ログはグラマリアの着地地点に再び巨大な岩を四方に囲む様に発現させた。
「浮一致」
グラマリアは自身の身体に勢いをつけ本来着地するはずの地点から離れた。
ログは逃すまいと岩の刃を生成し地面から立ちあがろうとしているグラマリアに向けて勢いよく投げる。
当たりそうになる寸前でグラマリアは岩の刃がぶつかる前に積もる雪を散らした。
するとログが生成した岩の刃は雪と衝突しただけで粉々に消えた。
「残念だけど、ログ……あなたの竜技ではもう私に太刀打ち出来ないわ……もうあなたは有利から不利へと変わっている……そして最後は弱点」
「グルァァ!」
話しかけるグラマリアへ無視する様に浮かせた尖った岩を放つログ。
「返事が獣……話通じてますの?まぁいい、あなたはこの雪だけで倒せますの」
グラマリア浮一致を使い自身を宙に浮かせログへと距離を詰める。
対するログは岩の壁、柱を操りグラマリアの行手を阻む。
「……!?」
しばらくの攻防の後突如気配を感じたログの後ろに積もる雪に潜んでいたぬいぐるみが突然現れた。
グラマリアはすかさず唱える。
「触空」