第101話 機は訪れる
不定期投稿ですが、よろしくお願いします
目を開けるとそこは見知らぬ部屋だった。
左に目を向けると壁に穴があいていてそこから自分が飛ばされたのだとすぐに思い出した。
火龍ラヴァは立ち上がり壁の外を見る。
ここはどうやら建物の高層階のようでログが闘っている場所の辺りは雪が舞っていて様子が分からない。
……ちくしょう! 早く行かねぇと!
ラヴァは建物を駆けて降りる。
その途中最下階に到達しようとしている所で突然隣の廊下の木の壁が勢いよく弾け飛んだ。
「……なんだぁ!?」
ラヴァの足元に龍が何かに飛ばされた様に倒れたまま滑り込んで来た。
「おい! 大丈夫か? しっかりしろ!」
ラヴァは突然の事に少し怯みながらも倒れる龍を揺り動かす。
「……うぅ」
どうやら女竜の様だ。身体を少し震わせ朦朧とした意識を離さない様に見えた。
その時ラヴァは突然殺気の様なものを感じた。
顔をあげた時すでに何者かが飛び上がり拳を打ち込もうと襲い掛かった。
木の床を拳が撃ち抜いた。激しい力がこもっていたのかいとも簡単に下の階が露わになった。
幸い、相手の動きを一早く反応したラヴァは倒れている龍を抱え込んで後ろへと回避する事が出来ていた。
「なんだ? 貴様は誰だ? そいつの味方か?」
目の前に居る灰色の鱗に覆われた龍はラヴァよりも背が高く両腕が丸太の様に太いのが特徴で、全体的にがっしりとした体型をしている。そして顔の周りに整った茶色い髭が立髪のように生え武人の威厳を放っていた。
「てめぇが殺そうとしてんなら味方だな」
「ん? この気配は……貴様、封刃一族だな? 言っておくがそいつを助けるのはやめておけ、我らの敵だぞ? 貴様が殺されるぞ」
「……!?」
敵と言われてハッとしたラヴァは下を見た。
黄緑色の鱗、少し壊れかけているが花の首飾りが見て取れた。
「なぁ、お前の名前は……アテネか?」
「……なんで……アタイの名を……」
その声からは読み取れるのは驚きに満ち溢れる様子だった。
「探してたぜ!頼みがある!リィラを助けてくれ!」
「はぁ? いきなり……何を!」
「貴様、まさかそいつを助けるのか? 何故だ? 裏切られるやも知れぬぞ? そいつの竜技は傷を治す……いつ復活して我らを襲うのか分からぬぞ……」
「うるせぇ! アテネしかいねぇんだよ! リィラを治す方法はそれしかねぇんだ」
「アンタ……無茶苦茶だね……アタイは敵だってのに……」
「そうか、邪魔をするなら我は容赦はしない、たとえ同胞であろうとも」
灰色の竜は右手を握り骨の音を鳴らし構えた。
「行くぞ!」
灰色の竜はラヴァへと接近し右手の握り拳を繰り出した。
ラヴァは両腕を交差しそれを受ける。
全身が痺れるほどの衝撃がその拳から伝わる。
ラヴァは拳を受け止めると下段蹴りを繰り出した。
「なっ?」
しかし、蹴りを受けた灰色の竜はびくともしない。
「ふん」
灰色の竜はラヴァの足を掴み壁へと投げつけた。
ラヴァは後ろの壁に激突し床に倒れた。
灰色の竜はその次に廊下に横たわるアテネを狙う。
「……!?」
突如灰色の竜の視界に赤い炎閃が映り込みアテネに届くはずの拳はそれとぶつかり合い黄色い火花を辺りに散らす。
「ほう、時炎怒か、殴りがいがありそうだ」
「何!?」
灰色の竜は更にラヴァが振るう 時炎怒に向けて連打の拳を繰り出し、火花の吹雪を起こした。
殴られた時炎怒はまるで折られたかのように内側に曲がっていく。
そしてその一部が弾けて炎の刃が両断された。
瞬く間に灰色の竜はラヴァを蹴り上げ掌を前へ突き出す。
その攻撃を腹部に受けラヴァは勢いよく後ろに吹き飛ぶ。
「なんだ、もう終わりか?」
「まだだ」
ーー怒りが不充分だが、やるしかねぇ、絶対にリィラを助け出す、すまねぇログこいつを倒したら絶対に行くからよ
ラヴァはよろよろと立ち上がり、時炎怒と時炎渡を合わせる。
全身 紅に染まった鱗は溶岩の様に鱗の繋ぎ、繋ぎを明るく輝かせ顔に生えてる赤髭を獅子のタテガミの様に逆立て頭頂部から炎を線の様に灯し生えさせていた。そして、しっかりと形どった炎の刃を右手に構え壮大な熱気を放つ。
「時炎怒王」
ラヴァは飛び上がり横一線に炎の刃を振るう。灰色の竜は腕を交差し受ける。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
ラヴァは更に力を込める、炎は先程よりも激しさを増し次第に灰色の竜を押していく。
「ぐっ!」
わずかだがラヴァの方が押し勝った、灰色の竜の体勢を崩し膝をつかせた、そしてすかさず垂直に振りかざす。
灰色の竜は反応が遅れ受け止め切れず肩に直撃を受けた、その一撃はあまりの重さに床すらも砕き竜を一階へと叩きつけた。
建物の全体に揺れが生じ煙が広がり出した。