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俺はいったい何者だ? 記憶喪失からの成り上がり  作者: どんちゃん
第一章・現状把握とブラッドリー子爵領
13/75

第11話 メイド長……あれなぁに?

13話です。

 コンコンコンコンガチャ


「おはようジェリド様。昨日はよく眠れた?」

「おはようローラ……ノックしてくれたのは嬉しいんだけど、返事を待ってから開けてくれるとなお良いかな」

「ゴメンね? ジェリド様はまだ寝てると思ってたから聞く気がなかったの」


 机の上に着替えと飲み物を置き、カーテンを開けてくれた。


「ありがとう。タメ口はそのままだけど様付けで呼ぶようにしたんだ?」

「メイド長に様付けで呼ぶように言われたけど、敬語はジェリド様が許してくれてるから良いんだって」


 ……確かに許したし、気楽だから良いんだけどね……。


「ちょっと夢見が悪くて、あの後は眠れなかったかな」

「恐い夢でも見たの?」

「恐い夢というより気になる夢かな? 怖いものなら、ローラがまるで首吊り死体のような吊され方してたのが怖かったかな……」

「メイド長が宙吊りでも眠れるように色々固定してくれた結果なんだよ? おかげでぐっすり眠れたよ? やっぱりメイド長は天使なの」


 自分を宙吊りにする人のことを宙吊りの仕方で天使とか……この子masochist(マゾ)なのか? 


「気になる夢ってどんな夢だったの?」

「……血を吐いて苦しそうにしてる女の子を看取る夢かな?」

「なにそれ? 普通に怖い夢じゃない」


 でも何故か、女の子が意識を失い崩れ落ちるまでは、愛おしさと寂しさは感じても、悲しみは感じなかった……まるで愛おしい気持ちで大切な子を看取るかのような……。


「ジェリド様?」

「ゴメンね少しボーっとしてた」


 ……やめよう。

 こんな話をされてもローラが困っちゃうよね。


「ローラは朝食はもう食べたの?」

「食べたよ? 今日のシチューはとても美味しかったよ」

「そうなんだ?」

「ご主人様達の料理が変じゃないか、先に味見するのもかねてご飯やスープは一緒なんだよ?」

「夜もお肉とか以外は、だいたい同じ物が食べられるんだよ? しかも週に1回は同じ物を食べさせてもらえるし」


 すごく嬉しそうだ。たぶん普通は違うんだろうな。同じの食べてたら食費が嵩むし。


 ……ん? ローラのメイド服のスカートの後ろの部分が動いてる? ……あぁ尻尾か。嬉しいと尻尾を振るんだ? なんだか犬みたいで可愛いな。初めてローラが専属で良かったと思ったかもしれない。


 その後ローラに部屋を出てもらい、服を着替えてから、今度はちゃんと兄さんに教えてもらったドアのない方から食堂に向かった。


 食堂では既に兄さんと父さんが席に着いており、それぞれ父さんの後ろにはラムサスさんが、兄さんの後ろにはソシアさんが立って俺を待っていた。

 あれ? でも昨夜の夕食では2人とも居なかったよね? 


「おはようございます。父さん、兄さん」

「あぁおはようジェリド」

「おはようジェリド、今日はちゃんとそちら側から来たんだね」

「流石に教えていただいた翌日に、また同じ愚を犯すほど僕は愚か者ではないつもりですよ? ただもう少し早く来るべきでしたね、僕が一番最後でしたから」

「別に僕も君が愚か者だとは思っていないよ? 時間に関しても、まだ僕達も来たばかりだったから、気にしなくても良いよ」

「そうでしたか」

「じゃあ食べようか」

「「はい。父さん」」


 それからは屋敷には馴れたか? とか、ローラとはやっていけそうか? などの話題が続き、僕の体の話題に移った。


「ソシアに見てもらったのだろ? ソシアはなんと言っていたんだ?」


 昨日のソシアさんとの会話を掻い摘まんで説明した。


「感覚がないのはアルベド様のオリジナル魔法と同種の魔法を使われたため。強い魔力と弱い魔力と2つの魔力がジェリドの中にあり、強い方はアルベド様の魔力に比肩し得るほどの魔力がある。しかももう片方も、莫大な魔力を用いた魔法の残滓に過ぎず、使用された魔法からすると、そちらもアルベド様に比肩。或いは超えている可能性すらある……と」


 父さんがかなり驚いているが、兄さんは全く驚いていなかった。

 恐らくソシアさんから聞いていたんだろうな。


「はい。そして昨日の時点では、体内にリリーの魔力が並の魔法使いの半分くらいの魔力量が残っていたそうで、魔力を使おうとすればそちらの魔力も反応し、暴走するかもしれないので暫くは魔力を使うことは控えた方が良いとのことです」

「少しよろしいでしょうか?」


 兄さんの後ろに立っていたソシアさんが、手を上げながら発言の許可を求めた。


「あぁ話してくれて構わない。ジェリドを見た君の意見も聞いておきたかったからね」

「ありがとうございます旦那様。ジェリド様の傷ですが、表面上は治っておりますが、私には魔力を見ることは出来てもお腹の中を見ることは出来ませんので、念の為過度な運動も控えられた方がよろしいかもしれません」


 父さんの表情が落胆したように曇った。


「……そうか。なら仕方がないな。暫くは安静にしていなさい」

「この家で僕がしなければいけないこと、又は僕にさせたいことってなにかありませんか?」

「……しなければいけないことは当然療養だな。そして問題ない程度まで回復したら、武術の腕前を見せて欲しい」

「……僕には記憶が無いので、自分がどの武器を使えるのかすらわからないのですが……」


 槍が得意なのか、弓が得意なのか……。むしろ僕は華奢な体をしているので、魔力量が凄いと聞いた時から、なんとなく自分のことを魔法特化型なんだろうなと思っている。


「武術というものは体に覚えさせる物だ。だから体に染み込ませた技というのは、意識せずとも使えるものだよ。記憶を無くしても歩くことが出来るのと同じで、武術も一度体で覚えさせることが出来れば、二度と体は忘れないものだ。辺境泊たるアルバートが認めたその腕前を、私も見ておきたいんだ」

「わかりました。どの程度の腕前かは私……僕にもわかりませんので、お目汚しになるかもしれませんがお見せ致します」


 父さんが頷きで返してくれる。

 先程表情が曇ったのは、武術の腕前を見たかったからなのか……。

 辺境泊が認めるということは、親バカじゃなければ武術の腕前もかなりの物と言うことだ。

 俺ってこんなに可愛いのに強いんだ? 

 ……自分で可愛いのにとか思ってんじゃねぇよ俺っ!


 でもする事がないのはそれはそれで困る。1日どうやって時間を使おう。……そうだ。


「もし良ろしければ、本をお借りしたいのですが?」

「本をか? どういう本が欲しいんだ?」

「記憶喪失に関することが載っている本がもし有れば……なければこの国や周辺国家のこと、または魔物や魔法の知識などを学べる本があればお借りしたいです」

「記憶に関する本はないが、そういう一般常識のような物を学べる本は、書斎に幾らでもあるから食べたら来なさい」

「ありがとうございます」


 これで時間を有効活用できる。



 ▽



 父さんのところで借りてきた本は

 魔物について書かれた図鑑と魔族について書かれた図鑑の2冊だ。

 この世界にはどんな魔物が居て、どんな魔族が居るのか等、今後の身の安全にも関わるしね。


 今日は天気が良いし、外で読むことにした。

 昼食用のサンドイッチが入ったバスケットと図鑑を片手に外に出る。

 屋敷は森の一部を切り抜いて建てられており、東西南北の内、北側だけはそこから街道が伸びているが、残りは屋敷から20~30m離れると森になっていた。


 屋敷の南西側の屋敷寄りに馬小屋があり、東側には水路の近くの森寄りに、大きな木が1本残されているだけであとはなにもない。


 今日はその大きな木の下で本を読むことにした。

 読むことにしたのだが……ちょうど良いと感じる程度の気温に、気持ちの良い風が俺の肌を撫でる。

 昨日の寝不足もあり、本を開いて直ぐに意識が遠のいていくのを感じた。



 ▽



 ベロベロベロベロ


 せっかく気持ち良く寝ていたのに、顔に何か湿った物を押し付けられる感触を感じて目が覚める。

 目を開けると、猛烈な勢いで尻尾を振りながら俺の顔を舐める中型犬……ブラッドリー家のペットかな? 

 とりあえず顔を舐められるのは気持ち悪いので、顎の下を揉みながら顔を背ける。

 撫でられて気持ちいいのか、目を細めながら顎をあげてもっと撫でてとばかりにクーンと鳴く。

 ……可愛い。右手で顎を撫でながら左手で頭を撫でると、お座りの体勢になり、元々ブンブン振られていた尻尾が更に勢いを増した。

 更に続けると、今度は伏せの体勢に変わり目を細めたので、そのまま抱き寄せてみると、無抵抗で寄ってきたのでそのまま抱き締めて寝ることにした。

 暖かくてモフモフして、とっても気持ち良い。抱き心地は最高だ。


 ベロベロベロベロ


 また先程と同じ感触。顔を舐められる気持ち悪さで目を覚ますと、やはり先程の中型犬に顔を舐められていた。

 手を伸ばして顎を撫でようとするしたのに手が動かない。

 手の方に目をやると、先程の中型犬が……お腹をみると更にそっくりな中型犬の頭が2つ乗っている。

 依然顔を舐め続ける1頭と合わせて、計4頭の中型犬が俺の周りにいた。

 どうやら繁殖した犬の家族を、ブラッドリー家では飼っているらしい。

 お腹も減ってきたのて、残りの3頭も起こして、皆で昼食をとることにした。

 それにしても可愛いな……そしてよく躾られている。

 一頭一頭一口サイズに千切ったサンドイッチを、順番に口の中に入れていくと、全員がお座りしてサンドイッチが口に運ばれるのを待ってくれている。

 量が多くて助かった。

 全員お腹いっぱいになったようで、また眠気が襲ってくる。

 お腹に2頭左右から頭を乗せさせて両脇に2頭抱えて寝ることにした。

 犬の毛皮はとても温かく、すぐに意識が遠のいた。



 ▽



【ローラ視点】


 ジェリド様のお世話をすることになったは良いけど、ジェリド様が屋敷の中に居ない……紅茶を持って行くようにメイド長に言われたのにどこにいるかが分からない。

 私は犬人族だから、犬程ではないけど鼻が良い。

 隣の部屋に誰がいるかとか、厨房から流れてくる香りでご飯が……今日のシチューには熊のお肉が使われてる。あれ美味し──違う。今はジェリド様を探してるんだった。

 紅茶を届けないとまた逆さ吊りかもしれない。

 ふと窓の外を見ると、ジェリド様が大木の下にいた。

 居ただけなら良いのだが、寝ながら狼を撫でてる? 

 ……しかも狼を抱き寄せて一緒に寝ちゃった?

 狼ってガオーってきて、バクってしてくる怖い生き物のはずなのに、なんだか仲良さそう。

 ……とりあえずメイド長に相談しよう。

 なにかあったらメイド長に相談すれば、ほうれん草をくれるって言ってたし。


 メイド長はアウラ様の部屋にいた。

 メイド長に相談すると、メイド長とアウラ様が窓から覗き込み、アウラ様が答えた。


「暫く様子をみてあげてくれるかな? とても仲良さそうに寝ているけど、相手は狼だし突然襲いかかってくるかも知れないから。何かあったらソシアに言ってくれたら良いよ」

「でも、襲われた後じゃ……」

「あの感じなら多分大丈夫じゃないかな? 自分で抱き寄せて寝てるみたいだし、それに武術は体が覚える物だから、襲われても咄嗟に反応するかもしれないし、何かを思い出す事もあるかもしれない……もしもの時はソシアが治療してくれたら良いよ」


 アウラ様の目ちょっと冷たく見えた。

 いつも優しい人なのに──あっ! ほうれん草貰うの忘れてた。……まぁ良いか。そして私は椅子に座り、窓から様子を見ていた。

 だって外で座るとメイド長に逆さ吊りされるんだもん。

 それにしても今日は風が気持ちいいな──


 ──ドサンッ──


「痛っ!?」


 うぅ……頭打っちゃったよぉ。

 たんこぶ出来てないよね? ……あれ? 私なにしてたんだっけ? 

 ……………………そうだ、ジェリドちゃんを見てたんだ。

 あっ、ジェリド様だっけ? 

 まぁ良いや。ジェリド様は……狼増えてない?

 ……お腹の上に2頭と、両脇に1頭づつの計4頭と一緒に、とても気持ちよさそうに寝ている。

 ……メイド長に報告しよう!


 顔を引き吊らせながらも結果は同じで様子見だった。

 ほうれん草が欲しいと言ったら、アウラ様は笑いはじめてメイド長には怒られた。

 なんでなんだろう? 

 私はまた椅子に座って、窓からジェリド様の様子を見る。

 とても気持ちよさそうに寝ているジェリド様を見ていたら、私まで眠たくなってきちゃったよ……お休みなさい。


 ──ゴツン──


「……いっっったぁぉぁぁいっっっ!!」

「なにをしてるのローラッ!!」


 目を覚ますとメイド長に頭を叩かれていた。


「メイド長様痛いです」

「それどころじゃないでしょうローラ!? あれはいったいなんですか!?」


 あれってなに? 

 メイド長が指を指した方向に目を向けて驚いた。


「……メイド長……あれなぁに?」

 現在11/25に夢の中の少女に引き続き投稿しています。


 作者本日インフルエンザで倒れましたがストックはあと6話あるので引き続きいつものように更新していこうと思います。




 次回予告

 次回はローラとソシアさんが見たものの正体が明らかになります。

 この作品のアイドル……つまり作者が大好きなあれの登場です。



 次回【リアナ】をお楽しみください。


 次回投稿は11/29の07:00【リアナ】です。

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