197.複合術式 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
右下のほうがさらに気持ち悪かった。外側に黒ずんだ赤い紐が巻かれていて、その結び目に歯か骨釘か分からないものが半分埋まっている。もう丁寧に扱う気はない。刃を抜いて金属カバーを砕き、そのまま引き千切った。ケーブルが断ち切れた瞬間、扉板全体が内側へわずかに沈み、奥から低い摩擦音がより鮮明に届いた。
分厚い壁の向こうで、無数の歯が何かを噛んでいるような音だ。
胃が酸っぱくなった。
「中に何が入ってる?」
馬三娘は扉を見たまま、声を一段落とした。
「入ってるんじゃない。」彼女は言った。「組み上げてある。」
この二言が落ちた瞬間、頭の中でバラバラだった断片が一気に繋がった。
バストーニュは終着点じゃない。
この場所は、単純に亡霊兵を召喚するためでもない。
ここは試験場だ。
歴史上の戦場が、現実の座標と重ねられるかどうか。
死んだ部隊が、長時間にわたって実体を維持できるかどうか。
重装甲、砲兵、観測網、ハーフトラック、迫撃砲、工兵、歩兵——一式まとめて引き戻せるかどうか。
現代の都市と歴史の戦場を重ね合わせたとき、亡霊部隊が攻城効率を維持できるかどうか。
この扉の向こうにあるものは、神でも魔でもない。
試験機の心臓だ。
外でまた爆発音がした。
今度はもっと近い。
第一層のどこかの壁板が内側へ膨れ上がり、続いて機関銃の長い掃射が来た。弾が外殻の薄い部分を貫いて、上部の鉄骨に直撃し、火花が四方に散る。ドイツ軍工兵はゆっくり人を探しているんじゃない。標準手順に従って外殻を剥がしている。実にドイツ軍らしい。実に気持ち悪い。
消防斧を掴み、刃を扉の隙間に差し込んだ。
「どっちへ?」
「右へ跳ね上げる。引っ張るな。」馬三娘は言った。
言われた通りに、腰と背中を一緒に使う。斧の柄が掌に食い込み、扉の枠が歯が浮くような摩擦音を立て始めた。普通の金属が引っかかっているんじゃない。もっと深いところで、誰かが棺桶の隙間から爪をゆっくり外側へ引っかいているような音だ。
まず細い亀裂が入った。
熱気が一気に顔に吹きつけた。
高温蒸気のさっぱりした熱さじゃない。湿って、粘って、汚い。血、柴油、焦げた布、濡れた鉄、線香の灰、それから肉が半分腐りかけているのに、まだ死にきっていない何かの匂い——全部まとめて鼻腔に押し込まれた。喉が締まり、胃液が舌の根まで上がってきた。
「クソ……」
馬三娘が一歩前に出て、掌を扉の縁に当て、千里追魂を隙間に沿わせて寸法を測るように動かした。
目が一段、沈んだ。
「開けろ。」
もう一度押し込む。
扉がついに人一人通れるほど開いた。
開いたんじゃない——内側から一角を噛み砕かれたみたいに口が開いた。鋼の枠が歪み、夾層が裂け、押さえ込まれていた熱と臭いが一気に溢れ出す。ここはずっと喘いでいたのに、鍵をかけられていただけだ。
馬三娘が先に入った。
その扉の向こうが地獄だろうと、とっくに知っていた景色だろうと、一瞬の躊躇もない。
俺も続いて踏み込んだ。そして最初の一目で分かった。外の第一層はせいぜい「気持ち悪い」だ。本当に地獄へ落ちるべきなのは、この中だ。
第二層は第一層より広く、中央が核心坑として掘り下げられていた。四周に鉄骨が何段にも組み上げられ、工場の支柱架みたいでもあり、胸腔を開いたときに見える骨籠みたいでもある。だが、この場所を本当に支えているのは鉄骨じゃない。鉄骨の間に据えられているものだ。
骨だ。
小さな骨じゃない。人の大腿骨、上腕骨、脊椎が一本ずつ、穴を開けられ、クランプで固定され、支柱架に組み込まれている。高圧絶縁柱みたいな配置で、四方を囲んでいる。ケーブルは機械を中心に走っているんじゃない。骨柱を中心に走っている。太いケーブルは必ず骨の一節、護符の一片、黒ずんだ軍服の切れ端を経由してから、中央へ向かって収束している。四隅にそれぞれ安定器みたいな機材が一組ずつ。外側は工業の殻だが、中身は線輪じゃない。胸骨、獣骨、薄い鋼板、砲弾の破片で組んだ共振架で、何か肉眼では見えないリズムに合わせて細かく震えている。
足を踏み入れた瞬間、靴底から伝わってくるものがあった。
震動じゃない。
鼓動だ。
不安定な心臓の上に立っているみたいだ。
そして、坑の中央に、それが浮いていた。
球でも機械でも、祭壇に置かれるような発光石でもない。何かを寄せ集めて縫い合わせた塊だ。軽乗用車ほどの大きさ。外層は鉄板、砲盾の破片、履帯の節、鉄筋、装甲の残骸——溶接点と鎖と支柱架で無理やり吊り下げられている。工兵と狂人が共同で縫い上げた鉄の心臓みたいだ。だが、その鉄板の隙間に詰め込まれているのは充填材じゃない。骨、歯、髪、布の切れ端、脊椎の節、そして幾重にも重なった暗赤色の肉膜。その肉膜は完全な臓器じゃない。一緒に育つはずのない複数の組織を無理やり一か所に圧縮して、ゆっくりと、痙攣しながら、脈打っている。
最も気持ち悪いのは、本当に打っていることだ。
均一に打つんじゃない。テンポを外して痙攣する。
一度痙攣するたびに、坑の縁の骨格とケーブルと共振架が揺れる。さらにその外で第一層のランプが点滅する。もっと外では、ドイツ軍の警戒網全体が、見えない手に一度引っ張られて離されるみたいに揺らぐ。
俺はそれを見据えて、喉が干上がった。
「これが、人工の心臓か。」
馬三娘は坑の縁に立ち、葉 綺安の上着の裾が熱気で微かに揺れている。あの鉄の心臓を見つめる目に、古いものだけが持てる凄みの光がゆっくり浮かんでくる。
「そうさ。」彼女は言った。「死人と兵器と命令と鋼と火で、拼ぎ合わせたものだよ。」
俺は二歩前に出て、坑の縁の紋様を確認した。
単純な法陣でも、単純な設計図でもない。円、角、溶接点、血痕、釘穴、符印が全部混ざっている。設計図と招魂符を同じ紙の上に重ねて、最終的に本当に形にしてしまったみたいだ。四本の太い吊り鎖が上から垂れ下がり、鉄の心臓を吊るしているだけじゃなく、変圧器みたいな四つの枠組みを貫いている。各枠組みには、異なる年代、異なる部隊、異なる用途の戦場の残骸が押さえ込まれている——袖章、襟章、観測図の切れ端、軍服の布片、教会の旗みたいな古びた布切れまで。
頭皮がじわじわと縮んだ。
「兵を引き戻してるだけじゃない。」
馬三娘が短く応えた。
「『あの時の息吹』ごと引き戻してるんだよ。」
その一言で、全身を氷水で浴びせられたような感覚がした。
だから、ドイツ軍の実体化がパンサー、ハーフトラック、88ミリ砲、ネーベルヴェルファー41、迫撃砲、工兵、歩兵、観測網まで、あれほど完全な形で揃っていたのか。単純に死人を呼び戻したんじゃない。あの戦争の中で、最も攻城に適した、最も都市を圧し潰すのに適した「あの状態」を、丸ごと切り取って持ち込んでいるのだ。外のドイツ軍の怒鳴り声が、どんどん近づいてくる。工兵を呼ぶ声、西側を叫ぶ声、機関銃の仰角を上げろと命令する声。さらに遠くから、誰かが腹の中で太鼓を叩いているような迫撃砲の準備音も聞こえ始めた。パンサーはまだ完全には回り込んでいないが、ハーフトラックは確実に到着している。これが日独の戦力差でいちばん腹立たしいところだ——こっちが必死に一か所噛み破っても、向こうは鉄筋コンクリートの火力網全体を、その傷口めがけて押し込んでくる。
身を起こして、ようやく第一層の内部をまともに見た。
外殻は工業。内臓は呪術。しかも、人を騙すだけの安物の手品じゃない。鉄骨が肋骨みたいに何重にも内側へ収束していて、縄、線、護符の紙、鉄釘、人骨の節が、固定クランプと溶接点でがっちりと押さえ込まれている。左側にはディーゼル発電機と蓄電箱が一列。右側には作業台、計器類、溶接トーチ、ガラス瓶。瓶の中身は油でも薬でもない。灰だ。その灰には、ごく細かく白いものが混じっている。焼け残ったものを見慣れた目には分かる——あれは石灰なんかじゃない。
人間だ。
「このクソ野郎ども、鬼を拝んでるんじゃない。」俺は声を押し殺した。「組み立ててる。」
馬三娘は前に立ち、顔の半分が機械の灯りに照らされている。目尻が刃の背みたいに冷たい。
「今頃気づいたのかい。遅いねえ。」
その口調は、もう完全に葉 綺安のものじゃない。声が低くなったとか、態度が険しくなったという次元じゃない。人間そのものが、時代ごと入れ替わっている。あの語調、あの気配、死人を家具みたいに見るあの冷たさは、葉 綺安には真似できないし、生きている人間には演じられない。
外で突然、轟音がした。
第一層全体が左へ傾いた。
砲弾の直撃じゃない。工兵が外殻のどこかに爆薬を貼りつけた音だ。鋼板が一気に歪み上がり、機械の灯りが点滅し、作業台のガラス瓶が四本まとめて倒れて、灰が机一面にこぼれた。天井からばらばらと破片が降ってきて、首筋を叩く。粗塩を一掴み叩きつけられたみたいな感触だ。
「外殻を爆破してる。」俺は言った。
「させておけばいい。」馬三娘は背後を見向きもしない。「生きてる奴はドアをノックしたがる。死んでる奴は直接入ってくる。あの連中は今、その両方を覚えたわけだ。まあ、働き者じゃないか。」
「後輩の仕事ぶりを眺めてるみたいな口ぶりはやめてくれ。」
彼女は横目で俺を一瞥し、口の端がわずかに上がった。寒々しい笑みだ。
「じゃあ外のドイツ軍のために泣き女でもやろうか?」
言い終えると、さらに奥へ進む。
俺は後に続き、銃口を彼女の肩の後ろから左右の死角に向けた。第一層の中央よりやや奥に、内扉があった。鋼製の外枠。だが扉板の中央は一枚の金属板じゃない。何層も重なった異質なものだ。金属網、薄い鋼板、ゴム板、古い護符、それから乾いた皮膜みたいな半透明の夾層。その中で灰色の影がゆっくり流れている。扉の下から太いケーブルが二本延び、脇からさらに細いケーブルが何本か壁の中へ巻き込まれている。鍵というより、何かを中に押さえ込んでいる構造だ。
一目見て分かった。
これは「人を遮る」扉じゃない。
「心臓を押さえる」扉だ。
消防斧を脇に置き、制御盤を確かめる。ノブ、電圧計、レバー、ヒューズ、手書きのドイツ語の標識。脇に黒ずんだ護符が二枚貼ってある。クソ。工業化した呪術にも操作パネルがついてる。正気の世界に持ち込んだら、特許でも取れそうだ——街一つ滅ぼすついでに。
「どう解体する?」俺は聞いた。
馬三娘は答えず、掌を扉板の中央に当てた。
熱を出している人の額を確かめるみたいな、軽い仕草だ。
次の瞬間、扉の向こうから音がした。
コツン。
短い、くぐもった音。棺桶の板の向こうで、誰かが指の関節で一度だけ叩いたみたいな音だ。
背中が総毛立った。
「こっちを感知してる。」
「お前が肋骨に一太刀入れておいて、まだ感知してないなら、心臓じゃなくて粗大ゴミだよ。」馬三娘は手を引いて、目が少し明るくなった。「左上から先に切る。右下はその後。一度に全部外すな。中身が早く目を覚ます。」
「爆弾処理をしてるみたいだ。」
「今日はずっと爆弾処理をしてるんだよ。」彼女は冷たく言った。「ただし、これは恨みを持つほうの爆弾だ。」
俺はしゃがんで、ペンチを左上のケーブルに嚙ませた。
一撃目、外皮だけが裂ける。
二撃目、刃が内側に食い込んだ瞬間、手に戻ってくる感触が最悪だった。ケーブルを切っているんじゃない。温度のある神経を金属で切っているみたいな感触。そいつが微かに震えて、掌がしびれた。
悪態を一つ吐いて、三撃目は全体重で捻り込んだ。
ぱちん。
扉板の中央にある半透明の夾層に、灰色の紋様が一瞬広がった。中で何かが瞬きをしたみたいだ。
「次。」馬三娘は言った。
右下のほうがさらに気持ち悪かった。外側に黒ずんだ赤い紐が巻かれていて、その結び目に歯か骨釘か分からないものが半分埋まっている。もう丁寧に扱う気はない。刃を抜いて金属カバーを砕き、そのまま引き千切った。ケーブルが断ち切れた瞬間、扉板全体が内側へわずかに沈み、奥から低い摩擦音がより鮮明に届いた。
分厚い壁の向こうで、無数の歯が何かを噛んでいるような音だ。
胃が酸っぱくなった。
「中に何が入ってる?」
馬三娘は扉を見たまま、声を一段落とした。
「入ってるんじゃない。」彼女は言った。「組み上げてある。」
この二言が落ちた瞬間、頭の中でバラバラだった断片が一気に繋がった。
バストーニュは終着点じゃない。
この場所は、単純に亡霊兵を召喚するためでもない。
ここは試験場だ。
歴史上の戦場が、現実の座標と重ねられるかどうか。
死んだ部隊が、長時間にわたって実体を維持できるかどうか。
重装甲、砲兵、観測網、ハーフトラック、迫撃砲、工兵、歩兵——一式まとめて引き戻せるかどうか。
現代の都市と歴史の戦場を重ね合わせたとき、亡霊部隊が攻城効率を維持できるかどうか。
この扉の向こうにあるものは、神でも魔でもない。
試験機の心臓だ。
外でまた爆発音がした。
今度はもっと近い。
第一層のどこかの壁板が内側へ膨れ上がり、続いて機関銃の長い掃射が来た。弾が外殻の薄い部分を貫いて、上部の鉄骨に直撃し、火花が四方に散る。ドイツ軍工兵はゆっくり人を探しているんじゃない。標準手順に従って外殻を剥がしている。実にドイツ軍らしい。実に気持ち悪い。
消防斧を掴み、刃を扉の隙間に差し込んだ。
「どっちへ?」
「右へ跳ね上げる。引っ張るな。」馬三娘は言った。
言われた通りに、腰と背中を一緒に使う。斧の柄が掌に食い込み、扉の枠が歯が浮くような摩擦音を立て始めた。普通の金属が引っかかっているんじゃない。もっと深いところで、誰かが棺桶の隙間から爪をゆっくり外側へ引っかいているような音だ。
まず細い亀裂が入った。
熱気が一気に顔に吹きつけた。
高温蒸気のさっぱりした熱さじゃない。湿って、粘って、汚い。血、柴油、焦げた布、濡れた鉄、線香の灰、それから肉が半分腐りかけているのに、まだ死にきっていない何かの匂い——全部まとめて鼻腔に押し込まれた。喉が締まり、胃液が舌の根まで上がってきた。
「クソ……」
馬三娘が一歩前に出て、掌を扉の縁に当て、千里追魂を隙間に沿わせて寸法を測るように動かした。
目が一段、沈んだ。
「開けろ。」
もう一度押し込む。
扉がついに人一人通れるほど開いた。
開いたんじゃない——内側から一角を噛み砕かれたみたいに口が開いた。鋼の枠が歪み、夾層が裂け、押さえ込まれていた熱と臭いが一気に溢れ出す。ここはずっと喘いでいたのに、鍵をかけられていただけだ。
馬三娘が先に入った。
その扉の向こうが地獄だろうと、とっくに知っていた景色だろうと、一瞬の躊躇もない。
俺も続いて踏み込んだ。そして最初の一目で分かった。外の第一層はせいぜい「気持ち悪い」だ。本当に地獄へ落ちるべきなのは、この中だ。
第二層は第一層より広く、中央が核心坑として掘り下げられていた。四周に鉄骨が何段にも組み上げられ、工場の支柱架みたいでもあり、胸腔を開いたときに見える骨籠みたいでもある。だが、この場所を本当に支えているのは鉄骨じゃない。鉄骨の間に据えられているものだ。
骨だ。
小さな骨じゃない。人の大腿骨、上腕骨、脊椎が一本ずつ、穴を開けられ、クランプで固定され、支柱架に組み込まれている。高圧絶縁柱みたいな配置で、四方を囲んでいる。ケーブルは機械を中心に走っているんじゃない。骨柱を中心に走っている。太いケーブルは必ず骨の一節、護符の一片、黒ずんだ軍服の切れ端を経由してから、中央へ向かって収束している。四隅にそれぞれ安定器みたいな機材が一組ずつ。外側は工業の殻だが、中身は線輪じゃない。胸骨、獣骨、薄い鋼板、砲弾の破片で組んだ共振架で、何か肉眼では見えないリズムに合わせて細かく震えている。
足を踏み入れた瞬間、靴底から伝わってくるものがあった。
震動じゃない。
鼓動だ。
不安定な心臓の上に立っているみたいだ。
そして、坑の中央に、それが浮いていた。
球でも機械でも、祭壇に置かれるような発光石でもない。何かを寄せ集めて縫い合わせた塊だ。軽乗用車ほどの大きさ。外層は鉄板、砲盾の破片、履帯の節、鉄筋、装甲の残骸——溶接点と鎖と支柱架で無理やり吊り下げられている。工兵と狂人が共同で縫い上げた鉄の心臓みたいだ。だが、その鉄板の隙間に詰め込まれているのは充填材じゃない。骨、歯、髪、布の切れ端、脊椎の節、そして幾重にも重なった暗赤色の肉膜。その肉膜は完全な臓器じゃない。一緒に育つはずのない複数の組織を無理やり一か所に圧縮して、ゆっくりと、痙攣しながら、脈打っている。
最も気持ち悪いのは、本当に打っていることだ。
均一に打つんじゃない。テンポを外して痙攣する。
一度痙攣するたびに、坑の縁の骨格とケーブルと共振架が揺れる。さらにその外で第一層のランプが点滅する。もっと外では、ドイツ軍の警戒網全体が、見えない手に一度引っ張られて離されるみたいに揺らぐ。
俺はそれを見据えて、喉が干上がった。
「これが、人工の心臓か。」
馬三娘は坑の縁に立ち、葉 綺安の上着の裾が熱気で微かに揺れている。あの鉄の心臓を見つめる目に、古いものだけが持てる凄みの光がゆっくり浮かんでくる。
「そうさ。」彼女は言った。「死人と兵器と命令と鋼と火で、拼ぎ合わせたものだよ。」
俺は二歩前に出て、坑の縁の紋様を確認した。
単純な法陣でも、単純な設計図でもない。円、角、溶接点、血痕、釘穴、符印が全部混ざっている。設計図と招魂符を同じ紙の上に重ねて、最終的に本当に形にしてしまったみたいだ。四本の太い吊り鎖が上から垂れ下がり、鉄の心臓を吊るしているだけじゃなく、変圧器みたいな四つの枠組みを貫いている。各枠組みには、異なる年代、異なる部隊、異なる用途の戦場の残骸が押さえ込まれている——袖章、襟章、観測図の切れ端、軍服の布片、教会の旗みたいな古びた布切れまで。
頭皮がじわじわと縮んだ。
「兵を引き戻してるだけじゃない。」
馬三娘が短く応えた。
「『あの時の息吹』ごと引き戻してるんだよ。」
その一言で、全身を氷水で浴びせられたような感覚がした。
だから、ドイツ軍の実体化がパンサー、ハーフトラック、88ミリ砲、ネーベルヴェルファー41、迫撃砲、工兵、歩兵、観測網まで、あれほど完全な形で揃っていたのか。単純に死人を呼び戻したんじゃない。あの戦争の中で、最も攻城に適した、最も都市を圧し潰すのに適した「あの状態」を、丸ごと切り取って持ち込んでいるのだ。
そしてバストーニュは今、その試験台だ。
外でまた、金属がねじ切れる連続音が響いた。
第一層はもうドイツ軍工兵に一角を爆破されているはずだ。続いてドイツ歩兵の近距離での怒鳴り声、ハーフトラックの機関銃が内層へ乱射する音。弾が第二層外周の鉄骨に叩き込まれ、火花が四散し、細いケーブルが数本切断されて灰色の煙が立ち上る。遠くには市街の砲声も混じっている。神崎忠明のところ、ジャックのところ、林 雨瞳のところ——今ごろ全員が、俺たちの代わりに代価を払っているはずだ。
ラック・ド・ラ・オート=シュール(Lac de la Haute-Sûre)方向から重砲が時折、夜の底に沈み込むように響く。山口多聞はまだ外周で窓口を切り続けているが、あいつは神じゃないし、飛龍は核爆弾でもない。この詰みは、俺たちで解くしかない。
「第二の一手はどこだ?」俺は聞いた。
馬三娘はすぐには答えなかった。
まず目を閉じた。あの鉄の心臓の拍子を聞き取るみたいに。見ているんじゃない。脈を取っている。昔の産婆が女の腹の中の子が生きているか死んでいるかを確かめるときみたいな——冷たく、正確で、一ミリも仁慈を含まない手つきで。
数秒後、目を開いて、核心坑の真下を指さした。
「下だよ。」
俺は身を乗り出して覗き込んだ。
坑の底は平地じゃない。さらに一段、下へ沈んでいる。蒸気と灰霧と熱気が視界を遮っているが、それでも中央に暗赤色の柱の影が見えた。あの鉄の心臓の真下から一本、地面へ向かって突き刺さっている。表面は鉄輪、咒線、黒ずんだ布の切れ端、そして固まった血錆の層で覆われている。四方から四本の斜め支柱が押さえ込んでいて、まるでこの心臓を現実の地層へ直接打ち込んでいる主杭のようだ。
一目見た瞬間に分かった。これこそが、本当に殺すべきものだ。
上の鉄の心臓は肉であり、殻であり、戦場を支え続けるためのポンプだ。
だがこの主杭こそが、バストーニュ全体を、ドイツ軍の指揮系統全体を、亡霊攻城能力一式を、現実に釘付けにしている本体だ。
「下りるか?」俺は聞いた。
「下りる。」馬三娘は言った。
「どうやって?」
彼女は顎で左側を示した。
半円形の鋼製階段があった。もともとは整備用通路だったらしく、今は骨格とケーブルに半分絡まっているが、まだ通れる。問題は、その経路がほぼ核心の周囲を回り込みながら下へ向かっていることだ。つまり、この鬼の心臓のすぐ脇を通って、喉の奥まで下りることになる。外のドイツ軍が第一層から流れ込んできたら、退路は坑に飛び込むだけになる。
その鋼製階段を見て、外周の入口を見た。
「もうすぐ来る。」
「だから今すぐ人を止める準備をしろ。」馬三娘は千里追魂を掌でひと回しした。葉 綺安のものじゃない凄みが、声の奥から滲み出てくる。「第二の一手はアタシがやる。生きてるもの、半分生きてるもの、借り物で生きてるもの——何一つアタシに触れさせるな。」
「大きな口だな。」
彼女は顔をこちらへ向けた。
もうあの目は完全に葉 綺安じゃない。借りているんじゃない。坐している。もっと古く、もっと凶で、もっと理屈を聞かない何かが、この身体に完全に根を下ろしている。口の端の上がり方まで、ある種の美しさを帯びながら、同時に喉笛を切り開きそうな邪気を含んでいる。
「アタシの口はいつだって大きいよ。」彼女は言った。「じゃなければ、千里追魂でりんご飴でも作るのかい?」
笑いかけた瞬間、外から機関銃の一斉掃射が来て、それを叩き潰した。鉄骨に火花が散り、破片が雪崩みたいに落ちてくる。第二層の入口あたりに、もう影が揺れ始めていた。
ドイツ軍が入ってきた。
俺はすぐに短銃に弾を送り込み、壁際から抜いた鉄の棒を蹴り飛ばして射界を確保した。消防斧も利き手側に移す。弾が尽きたら、次はこれで割るしかない。
「最後に一つだけ聞く。」俺は言った。
馬三娘はすでに半円形の鋼製階段の一段目に足をかけていた。振り返って、明らかに面倒くさそうに俺を見る。
「早く言いな。」
「第二の一手が入った後、どうなる?」
彼女は半秒、黙った。
外のドイツ軍の足音、命令の声、ボルトを引く音——その半秒の間に全部が、こちらへ向かって押し寄せてくる。
それから彼女は、ひどく静かに言った。
「この心臓が、まず止まる。」
「それから?」
「それから、外でこれに支えられていたものが全部、散り始める。」
俺は彼女を見た。
彼女も俺を見た。その目には、慰めも豪気もない。ただ、ひどく古い流儀の凄みだけがある。
「俺たちが勝つ」じゃない。
「正しい場所を刺せば、それは死ぬ」だ。
俺はゆっくりうなずき、一歩後ろへ下がり、銃口を第二層の入口へ向けた。視線を鋼製階段、脈打つ人工の邪心、坑の底で刺し貫かれるのを待っている主杭の順に流す。
外のバストーニュはまだ燃えている。
だから、この第二の一手は、外せない。
馬三娘はゆっくりと千里追魂を持ち上げ、尖端を坑底の主杭に向けた。声は低く、誰かの判決を読み上げるみたいだった。
「坊主。」
「ああ。」
「門を守りな。」
俺は口の端を一度歪めた。口の中は鉄と灰の味だ。
「下ろせ。」
彼女はもう俺を見ない。背を向けて、下へ向かう。
俺は銃を上げて、入口に向かってじわじわと近づいてくるドイツ軍の影に照準を合わせた。
馬三娘がその一手を下ろす間、このナチスの祭壇の喉を、力ずくで押さえ続けるために。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




