147.邪教の巣窟 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
「理由は」
「中央すぎる。目印になりすぎてる。それに、乾き方が綺麗すぎる」俺は言った。「本当に黙想庭園として使うなら、メインの景観が干上がったままで放置されるはずがない。直さないということは、景観じゃないからだ。スピーカーだ」
彼女が一秒俺を見て、左側の班に調査の合図を出した。
特殊工作員の一人が極めて静かに噴水池に近づき、手が池の縁に触れた瞬間——
庭園全体に音が響いた。
鐘じゃない。
石の下に仕込まれた板バネか撃針のようなものが、作動して短く鋭い金属音を発した。
俺は心の中で思いきり悪態をついた。
同じ瞬間、礼拝堂の裏口が勢いよく開き、中から火線が一直線に飛び出した。
「接触!」誰かが低く叫ぶ。
最初の銃弾は、ほとんど潅木の頂をかすめるように飛んできた。葉と土が一緒に弾け、俺は本能的に右に転がり、肩が石畳エリアの端の低い石壁に思い切りぶつかった。ルシアは俺より早かった。まるでこの一秒をずっと待っていたみたいに身を沈め、手の中の武器がすでに前に向いていて、礼拝堂の入口に向けて二発の短い点射を返した。
扉の端から頭を出していた影が、その場で後ろに倒れ、消えた。
続いて左側の宿舎の窓が爆発した。
ガラスが一面に砕け散り、中から庭園の中央に向けて直接銃撃が始まった。乱射じゃない。交差する射角がある。奴らは最初からこのサンクンガーデンを殺戮区域として設定していたんだ。誰かが踏み込んでくるのを待ち構えていた。
イヤホンが一瞬で騒がしくなった。
「北側、交戦!北側、交戦!」
「正面牽制班が露出、礼拝堂内に武装あり!」
「工業地帯班、一階制圧済み、二階に抵抗あり!」
ハビエルの声が割り込んだ。「北側班、報告!」
ルシアは石壁の後ろに張り付き、声が驚くほど安定していた。
「黙想会館、武装拠点と確認。C.A.L.F.と交戦中、少なくとも四から六名。メイン棟は未確認、礼拝堂と左宿舍が第一火点。サンクンガーデンに地下進入口あり、警報装置の存在が疑われる。現在制圧中」
俺は彼女の隣で、頭の中で火点を数えながら着弾点を聞いていた。礼拝堂に二つ、左宿舎に少なくとも二つ、それからもう一つ、より高い角度からの射線がある。メイン棟の二階か、鐘楼風の小さな立面の後ろかもしれない。この畜生どもは礼拝堂を舞台装置にしていた。本当の用途は物を隠すことじゃなく、命を刈り取ることだ。
俺は右側を確認した。二名の特殊工作員が石壁と噴水池の台座を交互に使いながら、左宿舎を制圧している。正面牽制班も上から射撃を始め、礼拝堂側の火力を後方に押し込もうとしていた。
ルシアが俺に向かって一言吐いた。「見物じゃないのよ」
「角度を見てる」俺は言う。
「何が分かった?」
俺は半開きのままの礼拝堂裏口を見つめた。中は暗いが、さっきの射撃の角度がおかしい。水平すぎる、精度が高すぎる。固定された高さからだ。
「中に架台か簡易掩体がある可能性がある。人間が立ってるだけじゃない」
ルシアはすぐ右側の班に言った。「礼拝堂扉の内側に固定火点の疑いあり。フラッシュバン後にカッティングパイでクリアリング。直進禁止」
俺が言い終わった直後、噴水池のほうで二度目の金属音が響いた。
起動音じゃない。応答音だ。
連動した簡易報位器が、一方が動いたら他方も鳴る仕組みになっている。
俺の胸が重くなった。
「地下にも、もう伝わった」
ルシアは即断した。「待たない。二号班、礼拝堂扉を爆破。三号班、宿舎を制圧。周士達、私と暗扉へ。雨瞳は地上で記録を続けろ。ヴィクトリア、降りる前に入口に第二層の機械式トラップがないか確認」
俺は思わず彼女を見た。
「そんなに俺を信用してるのか?」
「お前を信じてるわけじゃない。奴らが本当に大事なものは必ず下に隠すってことを信じてるだけよ」と彼女は言った。「それに、どこが嘘っぽいかを見抜けるのはあなただから」
ギリギリ褒め言葉として受け取っておく。
地上の火力が一気に激しくなった。
前方の礼拝堂扉がブリーチング弾で吹き飛ばされ、木扉と内側の簡易架台が一緒に爆ぜた。中には案の定人がいた。灰白の作業着を着た二人がほぼ同時に爆風で吹き飛ばされる。手にしているのは制式軍用火器じゃない。ハンドガンと切り詰めたショットガンだ。C.A.L.F.らしい趣味の悪さで、武器まで屠場と田舎の倉庫からかき集めてきたような代物だ。
だが、寄せ集めでも人は殺せる。
右側の低い石壁に連続して弾丸が叩きつけられ、砕けた石片が降ってくる。俺が身を引っ込めた瞬間、左宿舎の二階窓から革のハーフマスクを付けた人物が身を乗り出した。手には古いセミオート長銃。狙っているのは特殊工作員じゃない。庭園中央の、さっきこじ開けた暗扉の位置だ。
こいつは地表を守ってるんじゃない。地下を守ってるんだ。
俺は考える間もなく、手を上げて指差した。「二階左窓、あそこを撃て!」
ルシアの脇にいた特殊工作員がほぼ同時に短連射を叩き込む。ガラス、木枠、革マスクの人物が一緒に後ろへ吹き飛び、影が消えた。
「行くぞ!」ルシアが低く吼えた。
火線が逸れた隙を突き、俺たちは石畳エリアに沿って暗扉へ滑り込む。別の一組がすでにハッチを完全に開け、一人ずつしか降りられない鉄梯子を露出させていた。ヴィクトリアがその脇に膝をつき、どこから出したのか細いプローブをハッチの縁に差し込んでいる。
「プレッシャーピンなし、二次バネなし」頭も上げずに言う。「でも下に引き綱がある。左壁沿いを行って。中央は触らないで」
俺は彼女を見下ろした。
「さっきまで後ろの車にいなかったか?」
「私が降りたほうが早いでしょ」
いかにもヴィクトリアらしい答えだ。追及する気にもならない。
ルシアが先に降り、俺が二番目、後ろに特殊工作員一名が続く。鉄梯子は狭く、湿った泥と錆と干し草が混じった匂いが一気に濃くなる。そこにもう一層、古い匂いが重なった——長年閉め切られた地下室に、それでも人が定期的に出入りして清掃や搬入をしている、そんな場所の匂いだ。カビ臭さが永遠に消えきらない。
梯子の底は狭い通路になっていた。壁は古い石積みで、後からコンクリートと金属部品で補強されている。左側に一定間隔で低ワットの作業灯があり、病んだ蜂蜜に人を浸けたような黄ばんだ光を放っている。足元は比較的乾いているが、隅には引きずった痕や車輪跡がくっきり残っている。ここが最近頻繁に使われている証拠だ。
前方で二度の金属音の後、通路の奥から急ぎ足の音が迫ってきた。
ルシアが即座に壁に張り付き、手で制止の合図を出す。俺も反対側に身を貼り付ける。頭に浮かんだのは一つだけだ。この地下空間は臨時じゃない。システム化されている。人が走れて、物資が動かせて、上の異変を素早く察知できる。もはや黙想会館がこっそり邪な儀式をやっているレベルじゃない。本当に機能する巣の、半分だ。
足音がどんどん近づく。
次の瞬間、角から一人飛び出してきた。
灰白の作業着に革エプロン、顔には牛皮風のハーフマスク。手にしているのは、骨切りノコを改造した短銃身ショットガンだ。それを見た瞬間、俺は心の中で盛大に悪態をついた。C.A.L.F.は火器まで屠場スタイルで統一してくる。趣味の悪さに一貫性がありすぎる。
残念ながら、見世物をしている暇はなかった。
ルシアが先に撃った。
二発。
短く、安定していた。一発目で肩を捉え、二発目でそいつを壁に叩きつけた。後ろからもう一人が出てこようとしたが、続いた特殊工作員の射撃で角の向こうに押し戻される。くぐもった呻きと金属が床に落ちる音が聞こえた。俺は待たずに前へ出た。
角を曲がると、より広い横方向の通路があった。右側に扉が三枚、左側は金属ラックと古い板で仕切られた作業区画だ。壁にはフック、ロープ、俺が大嫌いな屠殺道具が二列、それから異常に綺麗に洗われた大型バケツがいくつか。屠場じゃないのに、わざわざ屠場を演出している。C.A.L.F.の「家畜」コンセプトへの執着は病的だ。
倒れた男はまだ完全には死んでいない。指先が床でピクリと動いた。
俺はそいつが落としたショットガンを踏みつけ、遠くに蹴り飛ばす。
ルシアは銃口を前方に向けたまま、温度のない声で言った。
「生きてる」
後ろの特殊工作員がすぐに駆け寄って押さえ込み、ひっくり返して手錠をかける。マスクを剥がすと、三十代の男だった。無精髭、瞳孔は開きっぱなし、口の端には白い泡。単なる狂信じゃない。何か精神を不安定にする薬物をキメている顔だ。
俺はしゃがんで胸元を見る。
襟の内側に、太い糸で不格好な牛角のシンボルが縫い付けてあり、角の中央には小さな銀片まで縫い込まれている。本気で自分たちをブランド化しているらしい。
男は俺を見て笑った。
ひどく醜い笑い方だった。口が痛みを感じることを忘れたような笑い方。
「牧人が……」喉の奥からかすれた声が転がり出る。「牧人が……お前を見ているぞ……」
俺も笑ってやる。
「それはちょうどいい。俺も、お前らの牧人に会いたかったところだ」
ルシアが俺の肩を乱暴に後ろへ引いた。
「火線の中でお喋りしない」
ほぼ同時に、右側三枚目の扉の奥から乾いた銃声が響き、木屑が壁一面に飛び散った。俺とルシアは同時に身を伏せ、特殊工作員が短いバーストを返す。扉板が激しく震え、中から重いものを引きずる音が聞こえた。
「一人じゃないな」俺は言う。
ルシアは頷き、イヤホンに向かって言う。「地下で接触。C.A.L.F.武装勢力を確認。工業地帯、山区、状況を」
ハビエルの声が、向こう側の銃声を背景に返ってくる。
「工業地帯で二名生け捕り、一名重傷。冷蔵室で拘束痕跡と搬送マークを確認。山区封鎖班は冷蔵車一台と交戦、敵は車両を放棄して散開。北側は——お前たちで何とかしろ」
「励ましの言葉として受け取っておく」俺は小声で言う。
ハビエルには聞こえていたらしい。
「まだ余計なことを言う元気があるなら、生きてる証拠だ」
「心配してくれてると理解した」
ルシアは俺たちの漫才を打ち切り、突入の合図を出した。右側一枚目の扉が蹴り開けられ、中は小さなストレージルーム。消毒薬の箱と束ねられた麻縄だけ。二枚目の扉の奥は簡易更衣室で、灰色の作業着と革エプロンが数着、泥のついたブーツが二足、隅には鉄製の盆があり、中で紙が燃やしかけになっている。林雨瞳がいたら、さぞ喜んでかき集めただろう。残念ながら彼女はまだ上で、庭園全体を戦場から読める記録に変換する作業の真っ最中だ。
三枚目の扉が一番厄介だった。
さっきの弾は明らかにここから飛んできた。しかも引きずる音がどんどんはっきりしてきている。誰かが扉の裏に何かを押し付けているのだろう。ルシアが手で短く指示を出す。一人が低く身を構えてスタンバイ、もう一人がブリーチング用爆薬を構える。
俺は壁に背を付けたまま、ふとドア枠の脇に古い刻み痕があるのに気づいた。リフォーム跡じゃない。人がナイフか何か尖ったもので何度も引っかいた線だ。不規則に重なっていて、何かのカウントのようにも見える。
俺の中で何かが引っかかった。
「待て」
ルシアが俺を見る。
俺はその刻み痕を指差した。
「ここは武器庫じゃないかもしれない。拘束室か処理室だ。扉の裏で押し付けてるのは、バリケードとは限らない。人間かもしれない」
ルシアの表情が一変し、爆薬をすぐに下ろさせる。
「ロックだけ破れ。爆破なし」
これが、俺がここに来ると言い張った理由だ。純粋に戦術だけで考えれば、さっきの一発で扉ごと吹き飛ばしていただろう。中にいる生きた人間も証拠も、全部まとめて飛んでいたかもしれない。
特殊工作員の一人が前に出て、油圧カッターとクサビで手早く錠前を処理する。三秒後、扉が強引にこじ開けられて隙間ができた。
その瞬間、中からまた一発!
だがドアは半開きで、弾丸はそのまま向かいの壁にめり込む。ルシアはその一瞬を逃さず、体を切ってドアの縁に沿って滑り込み、二発の至近距離射撃で中を制圧した。中から鈍い声と、誰かが何かにぶつかって倒れる音がする。俺も続く。
部屋は広くない。光量もさらに低く、消毒薬の嫌な匂いの下に血の匂いが重なっている。中央には排水溝付きの金属製テーブルが一台。脇にはベルト式の拘束具。側面には移動式の金属ラックが倒れていた。さっき扉を押さえていたのはこれだ。壁際には灰色のローブを着たC.A.L.F.構成員が一人、肩と胸を撃たれて倒れており、まだかすかに息がある。さらに奥の影の中に、二人の人間が床にうつ伏せに縛られていて、口にはテープ、目は恐怖で完全に固まっていた。
生きている。
しかも、服装を見る限りC.A.L.F.側じゃない。
俺は一人の口のテープを剥がした。男は最初の一息を奪い合うように吸い込み、二度咳き込んだ後、最初に出てきた言葉はこうだった。「地下に……まだ人がいる……あいつらに……させるな……」
最後まで言えずに、咳がぶり返す。
ルシアはすでに周囲を見ていた。部屋には作業台が一つ。上には薬瓶や包帯、金属製の鉗子、それから俺が一目見て嫌悪感を覚えた小さな木札が転がっている。木札には雑な牛の頭が刻まれ、その下にラテン語が一行。字も崩れていて、誰かが上っ面だけ真似して彫ったのが丸分かりだ。
二秒ほど眺めて、俺は漏らした。「偽物」
ちょうどそのタイミングでバローロ神父が後ろから入ってきた。俺の一言を聞いて木札を覗き込み、すぐに顔をしかめる。
「文法がめちゃくちゃだ。それに、いろんな宗教文書の断片をごちゃ混ぜにしている」彼は言う。「目的は畏れさせることであって、礼拝ではないな」
「なら半分は成功だな」俺は言う。「怖がらせる部分だけは」
ルシアが、縛られていた二人に向き直る。「あなたたちは?」
一人はまだ震えが止まらないが、もう一人はかろうじて声が出た。
「ドライバー……俺たちはただの運転手だ……荷物を運べって言われて……そのあと……見ちゃいけないものを見たって……」
ペーパーカンパニー側の人間か。
少なくとも、ペーパーカンパニーが雇った外部の輸送ドライバーだろう。
いい。工業地帯で一層剥がし、ここでさらに一層。C.A.L.F.は確かに口封じを始めている。運転手ですら、一緒に処理するつもりだった。
そのとき、イヤホンに林雨瞳の声が入ってきた。
「上の庭園、制圧完了。小礼拝堂でC.A.L.F.構成員二名死亡確認、左宿舎で一名死亡、一名負傷。メイン棟内部で臨時通信ノードを発見したけど、人間はすでに撤収済み。ヴィクトリアが噴水池下の第二機械室で音響誘導装置を発見。山中の鐘と同系統と思われる」
俺は思わず笑った。
「本当に鈴を鳴らすのが好きな連中だな」
「よくそんなコメントが出てくるわね?」林雨瞳が言う。
「出てくるってことは、まだ寝かされてない証拠だ」
ルシアが会話に割り込む。「庭園を封鎖してから鑑識を降ろして。地下で拘束室と二人の生存者を確認。さらに奥に続きがある。捜索継続」
俺は部屋の中央の排水テーブルを見て、胸の内側がどんどん冷えていった。
ここは、脅かすためだけの空間じゃない。実際に機能している場所だ。宗教的な象徴としての機能じゃない。もっと具体的で、肉体的な機能だ。拘束、尋問、切開、洗浄、移送。工業地帯は証拠消去担当、山道は誘導担当、黙想会館は「静修と救済」という皮を被せる担当。C.A.L.F.のネットワークは、もはや一つの巣じゃない。三つ、四つの機能拠点が互いに噛み合っているシステムだ。
正直に言えば、ただの邪教よりタチが悪い。
邪教が物流を理解し始めた瞬間、企業に近づく。
そして企業が血を崇拝し始めた瞬間、邪教より効率が良くなる。
俺たちは拘束室に長居はしなかった。二人のドライバーを後続班に引き渡すと、ルシアはそのまま通路のさらに奥へと進んだ。前方の空間は徐々に広くなり、単なるサービス用の廊下ではなく、もっと中核に繋がる半地下の通路へと変わっていく。壁には、ところどころ古い修道院由来の印が削り取られた跡があり、ここが元々は本当に退修施設の一部だったのだと示している。それをC.A.L.F.が、自分たちの内臓に作り替えたわけだ。
俺は一つの曲がり角で足を止めた。
壁に古い木札が三枚打ち付けてある。そこには、ひどく稚拙な絵がそれぞれ描かれていた。牛の角、扉、そして何か槍先のようなもの。
俺は槍先の絵が描かれた札を、指先で軽くコンと叩いてみる。
中身が詰まっていない音。
ルシアが俺を見る。
「何?」
「飾りじゃない」俺は言う。「プロセスの印みたいだ」
「どういうプロセス?」
俺は牛角を指さし、次に扉を指し、最後に槍先を指した。
「囲いに入れて、門をくぐらせて、さらに奥のコアに送る。内部ノードのマークかもしれないし、今俺たちが追いかけてるあれとの対応表かもしれない」
バローロ神父の顔色が、さらに悪くなる。
「槍の穂先、か……?」
「単に、奴らが自分たちは何を探しているかを理解した上で、全部の行動にシンボルを貼り付けているだけかもしれない」俺は言う。「現実の仕事を神話の物語に包み込んだほうが、下っ端を騙しやすいからな」
ルシアは否定も肯定もせず、三枚の木札をまとめて写真に収めると、手を振って先に進ませた。
通路の突き当たりに、両開きの金属扉が現れる。
扉はきっちり閉まってはいない。中からの光が漏れていて、さっきまでの作業灯よりずっと明るい。近づく前から、内部の音が聞こえてきた。
人の声じゃない。
ポンプか冷却コンプレッサーの低い唸り、それに、とても軽い金属同士の接触音が混ざっている。
胸の中の嫌悪感が、一気に最高値まで跳ね上がる。
ここは、ただの地下倉庫じゃない。
コアの作業場だ。
ルシアが拳を握り、全員がそこで停止。彼女は指を三本立てて、手のひらを見せ、そのままカウントダウンする。
三。
二。
一。
扉が勢いよく開かれた。
中から溢れてきた光は、目が縮むほど眩しかった。
そこは俺の予想よりずっと広い地下ワークスペースだった。
右側一面に並ぶ冷蔵ユニット。左側には金属製の作業台と洗浄・消毒エリア。中央には二本のスライドレールが天井から吊られており、その下には移動式の吊りフックまで付いている。壁一面には、できるだけ目を逸らしたくなる器具がぎっしり並び、その横には巨大なホワイトボード。そこに書かれているのは経文ではなく、ルート、時間、ナンバープレート、略号、いくつかの日付。最奥にはさらに厚い扉が半開きになっており、その扉の表には、見慣れすぎて吐き気がする牛の頭のシンボルが、でかでかと描かれていた。
そして、部屋にいる人間の数も、俺の予想を超えていた。
少なくとも七人。
灰白の作業着が四人、動きやすそうな濃い色のジャケットが三人。二人は箱を運び、二人は壁際で書類を整理し、残りの数人は監視モニターを見ていた。上で何かが起きたとき、警報はすでに下に届いていたらしい。だが、俺たちがこんなに早く来るとは思っていなかった。
視線がぶつかった瞬間、世界に残った答えは一つだけだった。
交戦。
最初に反応したのは、監視モニターの前に立っていた短い顎鬚の男だ。宗教的な叫び声も上げず、馬鹿な真似もしない。そいつは即座に横の金属台の裏に飛び込み、ハンドガンを引っつかんで撃ってきた。弾が扉枠に叩きつけられ、火花と破片が一緒に弾け飛ぶ。俺は本能的に身をかわし、ルシアはもっと素早かった。体ごと内側に切り込み、連続点射で中央エリアを一気に制圧する。
脇の特殊工作員二名も同時に開火した。
照明、銃声、金属に弾が跳ね返る音が地下室の中で一気に膨れ上がる。まるで誰かが部屋ごと鉄製のドラム缶として叩いているみたいだ。灰色のローブを着た二人がその場で倒れ、一人は工具台を巻き込んで転倒し、もう一人は腹の横を抱えながら冷蔵ユニットの脇に転がった。だがC.A.L.F.は今回、工具や寄せ集めの銃器だけじゃなかった。中央の作業区画の後ろに簡易掩体を用意していたのだ。厚い木板の中に金属を挟んだ構造で、ハンドガンの弾を何発か受け止められる。
「右の冷蔵ユニットの後ろに人間がいる!」俺は怒鳴る。
ルシアは迷わずスタングレネードをその方向に投げ込んだ。
ドン!
白光と爆音が同時に炸裂し、地下室全体が内側からひっくり返されたみたいに揺れた。俺の耳は一瞬で鈍い轟音だけになったが、体は頭より先に動いていた。前へ出る。右側で頭を出そうとしていた灰色ローブの男が爆風でよろけて膝をつき、ルシアがそいつを一発で仕留めた。
左側はそう簡単じゃなかった。
顎鬚の男は明らかに訓練を受けている。乱射じゃない。リズムを刻みながら撃ってくる。二発で扉口を封じ、二発で右側の斜めの侵入ルートを潰し、俺たちの前進角度を削り続ける。その隣で、濃い色のジャケットを着た男が奥の厚い扉に向かって後退を始めた。さらに深部に逃げようとしている。
俺の中で何かに火がついた。
これだけ撃ち合いになって、まだ目の前で下に逃げようとするのか。
俺は脇に転がっていた金属トレーを掴み、左側の作業台に向かって叩きつけた。武器にはならないが、十分うるさく、十分に混乱を作れる。顎鬚の男は案の定、その音に半秒だけ注意を引かれた。たった半秒。それで十分だった。ルシアの脇の特殊工作員が斜めに飛び出し、連続点射で男を掩体の後ろに押し戻す。その間に俺は右側の冷蔵ユニット沿いに内側へ滑り込んだ。
厚い扉に向かって退こうとしていた男が物音を聞き、勢いよく振り返った。
顔には牛皮を切り抜いたハーフマスクが付いていて、目と口だけが露出している。その目が俺を捉えたとき、そこにあったのは単純な驚きじゃなかった。ほとんど苛立ちに近い確認の色だ——俺が誰かを知っているか、少なくとも今夜この一連のラインを崩したのが誰かを知っている、そういう目だった。
銃を上げようとする。
俺は手に持っていた金属鉗子を、そいつの顔面に向けて叩きつけた。致命傷にはならないが、反射的に顔をそらさせるには十分だ。銃声が俺の肩の上をかすめ、次の瞬間俺は体ごとそいつに突っ込み、厚い扉に叩きつけた。
優雅とは程遠い。だが有効だ。
そいつの力は相当なもので、肘が俺の脇腹に鋭く入ってくる。昨夜食ったものを全部吐き出しそうになった。だが俺のほうが場数を踏んでいる。膝をそいつの内腿に叩き込み、重心を崩す。手の中の銃が飛んだ。山の中だったら、そのままこいつの喉を折っていたかもしれない。だが今は違う。ハビエルは生け捕りを要求している。ルシアも同じだ。そして俺自身も、この厚い扉の向こうに何があるかを知りたい。
だから、楽をしたいという衝動をぐっと抑えて、顎に一発入れた。
そいつの全身から力が抜けた。
後ろの特殊工作員がすぐに乗り込んで押さえ込み、手錠をかける。
ほぼ同時に、顎鬚の男のほうも限界を迎えた。ルシアが角度を変えて切り込み、銃口を掩体の縁に沿って極めて安定した動きで差し込み、一発で持ち銃の手首を撃ち抜き、もう一発でそいつの肩を後ろのホワイトボードに縫い付けた。男が悲鳴を上げ、ようやく崩れ落ちた。
地下作業間から、機械の低い唸りと、撃たれて死にきれていない数人の呻き声だけが残った。
最初の正面交戦は、ここまでは俺たちの勝ちだ。
だが、少しも楽になった気がしない。
なぜなら俺は今、あの厚い扉の前に立って、扉の上の牛の頭のシンボルを見ながら、ここがまだ底じゃないと分かっているからだ。
そして何より俺を不快にさせているのは、さっきの連中が銃を持っていたことじゃない。
交戦直前の、最後のあの表情だ。
慌てていなかった。
怖がってもいなかった。
時間を稼いでいた。
奥にある何かのために、あと半分でも多く時間を引き出せればそれでいい、という顔だった。
俺は振り返ってルシアを見た。
彼女も、あの扉を見ていた。
どちらも先に口を開かなかった。
本当に厄介なことというのは、たいてい、ようやく核心に踏み込んだと思った瞬間に、初めて顔を出すものだからだ。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




