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84.口を滑らせる 84-2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

会場は昨晩のあの豪華すぎる宴会場ではなく、同じ建物の側翼にあった。浅いグレーのカーペットが敷かれた長い廊下が、大広間の喧騒とこちらの静けさを完全に切り離している。入口の警備は多くなく、行政担当者らしき二人が立っているだけで、笑顔は規格通り、まるで訓練で作られたみたいだった。


葉綺安が先に入り、動線を確認してから俺たちに合図した。


俺がその会議室に踏み込んだ時、最初に感じたのは豪華さじゃなく、精密さだった。


長テーブル、クリームグレーのテーブルクロス、半明半暗の照明、カーテンは全開にはされておらず、グラスとシルバーウェアはちょうどいい間隔で並んでいる。多くも少なくもない。こういう場所は人をくつろがせるためじゃない。すべてがまだ「話し合える」範囲にあると、無意識に信じさせるためにある。


テーブルの席は七割方埋まっていた。


接待委員会の老人が中央よりやや左に座り、今日は昨晩より保守的な装いだった。グレーとブラックの三つ揃い、微笑みは相変わらずで、誰かが事前に口角の角度を測ったみたいだ。プライベートバンクの代表は背筋を伸ばして座り、スーツの色は誰の記憶にも残らないような淡さだった。文化安全顧問はショートヘアの女性で、細いフレームの眼鏡をかけ、座り方がひどく安定していた。手元にはノートを開いていて、どんな感情的なものでも制度の言語に翻訳できるよう、いつでも準備しているみたいだった。


そして、あの新しい名前。


技術保存連絡担当。


彼は末席に近いが、端ではない位置に座っていた。五十前後、指は乾いていて、関節が太く、長年紙と機器の両方を触り続けた人間の肌の痕跡があった。学者の雰囲気はなく、むしろこういうテーブルにつくことを仕方なく覚えた技術主任みたいな空気があった。


この人間は、ここに属していない。


少なくとも、このクリームグレーのテーブルクロスには。


だからこそ、値打ちがある。


エリザヴェータは誰にも余計な挨拶をしなかった。自分の席の前に立ち、書類ファイルを置き、座り、そして最初の一言で今日のテーブルの体裁を一枚削り取った。


「始める前に、責任名簿を補完させてください」


接待委員会の老人は、彼女がまずそこから来ることをとっくに読んでいたらしく、笑顔を崩さなかった。


「殿下の慎重さには、頭が下がります。本日の出席者は全員、名簿に記されております」


エリザヴェータが手を上げ、林雨瞳に正式記録のページをテーブルの中央に押し出させた。


「名前だけでは足りぬ。責任を列挙せよ」


手袋に包まれた指が、静かに紙の上に置かれた。


「今日、発言する者は皆、名前だけでなく、今この場で自分個人を代表しているのか、機関を代表しているのか、あるいはまだ名前のついていない何らかの調整意志を代表しているのかを、明確にしてもらう」


老人の顔の笑みが、ようやく一枚薄くなった。


この一刀がどれほど正確か、俺にはわかった。こういうテーブルの力は、半分が名目から来て、半分が曖昧さから来ている。「私たちはただ側面からお手伝いしているだけです」「個人的な理解として申し上げますと」「ある方々のご懸念として」「接待地の全体的な善意として」──そういう責任を持たない言い回しで話し続けさせれば、テーブル全体がずっと滑り続ける。でも先に自分をどこかの枠の中に入れさせれば、その後の一言一言が重さを持ち始める。


老人は結局、従った。


名前、機関、機能、一人ずつ。


文化安全顧問のところでは、なかなかうまく言った──「地域の歴史的敏感資料における公共リスクについて助言を行う」。銀行代表はさらに滑らかだった──「関係しうる外部安定要因について観察を提供する」。技術保存連絡担当の番になると、老人の言葉は明らかに短くなった。


「保存手順において、技術的な観点から意見を提供する」


俺はその言葉を頭に刻んだ。


館蔵でも、文化でも、歴史でもなく、保存手順だ。


この四文字が出た瞬間、この男が紙の話をしに来たわけじゃないと、ほぼ確信した。


エリザヴェータは全員の報告が終わるのを待ち、視線をその男に直接向けた。


「よろしい」


一拍置いて、声は冷たく、ガラスの表面を薄い霜が滑るみたいだった。


「では、そなたから始めよう」


男が、明らかに身を固めた。


エリザヴェータは昨晩の「歴史的敏感資料臨時保護協調提案」を「技術的背景」のページに開いて、テーブルの中央に押し出した。


「昨晩送ってきた提案書にはこうある。不適切な搬送と非標準化開封による不可逆的損害を避けるため、関連する技術的背景を持つ民間保管顧問の導入を提案する、と」彼女は男を見据えた。「一度だけ問う。いかなる歴史資料が、『非標準化開封』によって不可逆的損害を受けるのか?」


この一言が出た瞬間、テーブル全体が半拍、静まった。


問いが難しいからじゃない。問いが直接すぎるからだ。昨晩、向こうが丁寧に敷き詰めたレースを、一気に剥ぎ取るような直接さだった。


男は文化安全顧問にちらりと目をやった。もっと話し慣れた人間に先に一層かぶせてもらおうとする、本能的な反応だった。


案の定、女性が先に口を開いた。


「殿下、歴史的資料の形式と記録媒体は非常に多様です。接触環境、操作の順序、さらには周辺条件に対して、特定の要件を持つものが確かにございます。ウィーン側の意図は、情報が不十分な状態で不可逆的な損害が生じることを避けるためだけです」


俺はその提案書に一度目を落とし、顔を上げて、平坦な声で言った。


「つまり、これは普通の館蔵品じゃないと認めるわけですね」


彼女の眉がわずかに動いたが、それでも非常に文明的な語調を維持した。


「私が認めるのは、一部の資料は普通の館蔵品として扱うべきではないということです」


シキが隣でだるそうに割り込んだ。


「ほんなら余計おかしいやん。普通の館蔵品ちゃうのに、昨晩ずっと文化安全やの歴史的敏感やの公共リスクやのって言葉で誤魔化してたんか?」


銀行代表が軽く咳払いをした。シキの引っ張り方が雑すぎる方向に流れるのを、明らかに好んでいなかった。


でもエリザヴェータはシキを止めず、むしろそのまま続けた。


「然り。では聞き方を変えよう」彼女は言った。「この者は館の人間でも、歴史顧問でも、法務代表でもなく、技術保存連絡担当じゃ。ならば、そなたが連絡しているのは、保存の技術なのか、それとも何らかの固定受入れプロセスなのか?」


「固定受入れプロセス」という言葉を、彼女は意図的にゆっくりと噛んで言った。


テーブルの端に座る数人が、ほぼ同時に反応した。


老人の笑顔はかろうじて維持されたが、目がわずかに沈んだ。文化安全顧問のペン先が止まった。男の指がグラスの脚をぎゅっと握った。銀行代表は背中を椅子の背もたれに押しつけるように深く寄りかかった。その言葉から自分を切り離そうとするみたいに。


俺はその細かい反応を見て、逆に腹が据わった。


そうだ。


昨晩、部屋の中で嗅ぎ取った方向に、今日は人間の筋肉が証言し始めている。


老人がようやく口を開いた。あの古いヨーロッパ式の柔らかな語調だが、もう緩くはない。


「殿下、我々の本日の本意は術語の拡張ではなく、リスクの収束にあります」


俺は鼻で笑った。


「だったら、まず自分たちの文書を収束させてくださいよ。昨晩送ってきた言葉は、俺たちが書いたもんじゃない」


俺はその提案書を手前に押し出した。


「非標準化開封、不適切な搬送、不可逆的損害、技術的背景。歴史的敏感資料を保護したいだけって触れ込みの文書に、必要もないのにこんな言葉は並ばない。今は、話を最後までキッチリ聞かせてくれって言ってるだけだ」


文化安全顧問は明らかに主導権を握り直そうとして、すぐに割り込んできた。


「完全に説明することと、乱暴に踏み込むことは別です。特定のプロセスが存在するからといって、皆様が直ちにそれを政治化する必要はないはずです」


エリザヴェータは「政治化」という言葉を聞いても、目の色一つ変えなかった。ただ薄い氷の刃の峰が、ゆっくりと相手に押し当てられるような気配が漂った。


「政治化、じゃと?」


彼女はその女を見据えた。


「昨晩、正式な窓口を通じて永遠領に威嚇的宣告を行ったのはリヴァイアサンの方じゃ。妾らが先に事を政治化したわけではない。そなたは今日ここに座り、技術保存連絡担当を引き入れながら、妾に政治化するなと説く。ならば問わねばならぬ──そなたは今、接待地の代弁をしているのか、それとも接待地に緩衝を用意させねばならぬ何者かの代弁をしているのか?」


この一言が落ちた瞬間、銀行代表でさえ思わずその女に目を向けた。


彼女は答えなかった。


優雅さを保ちたいからじゃない。この手の問いは、一度受ければ必ずどちらかに陣取らざるを得なくなるからだ。


シキがここでようやく毒の刃を差し込んできた。


「もう一つ気になっとることがあるんやけど」彼女は言った。「ほんまに資料が不適切に扱われるんを心配しとるんやったら、真っ先に『何を持ち出したんや』って聞くのが筋やろ?せやのにアンタら、昨晩から今まで一番しつこく聞いとるのは中身やのうて、ウチらがウィーンに残るかどうかや。随分と方向性のある心配の仕方やな」


老人がようやく顔を上げてシキを見た。微笑みはもはや笑顔の形を成していない。


「ウィーンは接待地であり、最も安定した調整空間だからです」


エリザヴェータが間髪入れずに切り込んだ。


「最も安定しておるが、最終処理空間ではない。そうじゃな?」


その言葉は細い針のように、相手のあらゆる修辞の中で最も触れられたくない部分に直接刺さった。


老人はすぐには答えなかった。


そしてその沈黙は、どんな否定よりも雄弁だった。


林雨瞳(リン・ユートン)は正式記録に数文字を書き留め、静かに顔を上げて問うた。


「正式記録への記載事項。接待地は安定した調整空間の一つと自認。唯一の処理空間ではない。確認を」


銀行代表がついに眉をひそめた。


このまま進めば会談全体が俺たちによって再定義されることは、彼にも見えていた。口を開いた時、典型的な切り離しの匂いがした。


「申し上げねばなりませんが、本日私が列席しておりますのは、地域の安定に対する懸念からのみです。いかなるプロセス、技術、あるいは事後処理の責任も負いません」


俺は吹き出しそうになった。


やっぱりな。


真っ先に手を引っ込めようとしたのは、文化の側じゃなく、金の側だ。


エリザヴェータは奴に視線すら向けず、ただ淡々と問うた。


「よろしい。では今この場で確認せよ。そなたが代表する機関は、永遠領を接待地の既存プロセス内に留めることを求めるいかなる提案に対しても、資金的支援、保管的手配、信託的隠蔽、あるいはいかなる遅延的便宜も提供せぬと」


銀行代表の顔色が、その一秒で変わった。


言い方が乱暴だからじゃない。あまりにも正確に急所を突かれたからだ。こういう連中が一番好むのは、主文にサインすることじゃなく、便宜を図ることだ。「私はただプロセスを支援しているだけ」という立場を維持し続ければ、ずっと綺麗でいられる。だが便宜の具体名を書き出された途端、もう綺麗ではいられない。


「殿下、そのような物言いは公平ではありません」


「公平、じゃと?」エリザヴェータがようやく奴を見た。その瞳に一絲の熱もない。「そなた、このテーブルで安定を語りながら、自分が何の安定に金を払っているかを先に明かそうとせぬ。それこそが不公平というものじゃ」


その一撃で、奴はしばらく言葉を失った。


文化安全顧問がここで話の主導権を奪い返した。テーブル全体が責任逃れの方向に滑るのを、明らかに嫌がっていた。


「殿下、皆様。問題を本日の真の核心に戻させていただけませんか。永遠領の判断を制限しようなどとは誰も考えておりませんし、皆様に主体性を放棄するよう求めているわけでもありません。我々はただ、ヨーロッパの過去の歴史的傷跡を踏まえ、まだ技術的整理が完了していない段階のものを、現在の情勢下で性急に移動させたり、性急に対外定義したりすれば、局勢の均衡が急速に崩れるだけだと考えているのです」


見事な言い回しだった。


磨き上げたばかりの鏡みたいに。


だが俺の頭に残ったのは、その中の一箇所だけだった。


まだ技術的整理が完了していない段階。


俺はほとんど一拍も置かず、直接切り込んだ。


「どの段階ですか?」


彼女が一瞬固まった。


俺は逃がさなかった。


「今あなたは自分で『まだ技術的整理が完了していない段階』と言った。定義してください。分類段階ですか?保存段階ですか?移管段階ですか?それとも、ある受入れ段階そのものがまだ完了していないということですか?」


俺は意図的に「受入れ段階」を最後に置いた。


こういう時の問いは乱射してはいけない。楔のように、ゆっくりと木を割っていく必要がある。最初の三つはどれも退路に見える。最後の一つは、彼女が最も踏み込んではいけない場所だ。前三つを本能的に避けるか、四つ目に過剰反応するか──どちらかが出れば十分だった。


案の定、彼女は前の三つを受けなかった。


ただ非常に慎重にこう言った。「私が指しているのは、特定の流通チェーンにおいて、歴史的・技術的に不完全な部分が依然として存在するということです」


テーブルの空気が、「流通チェーン」という四文字が出た瞬間に一変した。


シキが直接低い笑い声を漏らした。


「おおきに。だいぶ手間が省けたわ」


林雨瞳のペン先が素早く走り、その言葉を記録しながら顔一つ上げなかった。


老人が明らかに不機嫌になり始めたが、それでもあの顔を維持しなければならなかった。


「皆様、断片的な切り取りは相互理解の助けになりません」


俺は奴を見据え、奴より平坦な声で言った。


「理解?今日はもう十分理解させてもらいましたよ。普通の歴史資料なら、『技術保存』『固定プロセス』『非標準化開封』『流通チェーン』なんて言葉は使わない。使ったということは、これが単純な保存の問題じゃないと、あなたたち自身がわかっている証拠です。では次の問いは自然に決まる──ウィーンはこの件において、終着点なのか、それとも中継点なのか」


この一言が出た瞬間、老人はついに司会者のふりを続けられなくなった。


俺を見るその目に、初めて本当に「どこまで言うべきか」を計算する色が宿った。

ちょうどその時、ドアが開いた。


「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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