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73.第二号公告 73-3

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

一団が大広間に入ってきた瞬間、俺は初めて、「圧力」というものが喧騒ではなく静けさから生まれることを、はっきりと感じた。


オーストリアの二名が先頭に入る。男一人、女一人。グレーのロングコートに、きちんと抱えた書類フォルダー。歩みは速くないが、揺れもない。その後ろからはポーランドの三名。より直截的で、入ってすぐ、中央卓と右側の政府席との距離を測っているのがわかる。チェコの二名は完全にメディア筋。歩調は速く、目がよく動く。ハンガリーの二人は一番面白い。入室した途端に、部屋の寸法を測り出したような顔つきだ。


誰もしゃべらない。


今は、言葉を出すには早すぎる。


まず自分の立ち位置を測る。それから口を開く。


政府の一列は右側に座り、自分たちの降格式に強制参加させられた高位官僚のような顔をしている。中でも財務次官の出来映えが素晴らしい。姿勢は真っ直ぐだが、その「真っ直ぐさ」は落ち着きから来るものではない。少しでも崩せば、さらに惨めになると分かっているからこその強張りだ。


俺がちょうど愉快な気分になっていたとき、階段のほうから足音が響いた。


一斉に、顔が上を向く。


こういうとき、「お出ましだ」とわざわざ叫ぶ必要はない。


空気のほうが先に、進路を空ける。


エリザヴェータが、二階から姿を現す。


黒のロングドレス。手袋は着けたまま。歩みは急がず、一歩ごとに、下にいる連中が何を見に来たのか、そして自分が誰のために場を和ませる必要もないことを、完全に理解している足取りだ。


俺は階段の脇からその背中を追いながら、さっきまで下で門の高さを測っていたはずの各国代表が、今は自分たちの声の高さを測り直しているのを感じていた。


最後の段に立った彼女は、まず外国代表も、メディアも見ない。


右側の政府席を見る。


ただ、一瞥。


それだけだ。


そこには挑発も、露骨な感情も、余計な身振りもない。


ただただ、「お前たちが脇にいるのは、正しい位置なのだ」という事実確認だけがある。


そして、中央の主位へと進み、そこで足を止める。


ヴァヴラが彼女の右後ろ、林雨瞳(リン・ユートン)が左後ろ、俺は少し外れた位置に半歩。葉綺安(イェ・キアン)は少し離れた柱にもたれ、「とびきり愉快な戴冠式のアフター」とでも言いたげな顔だ。


外国代表は全員、立ったまま。


誰も、先には腰を下ろさない。


いい姿勢だ。


誰が先に座るかで、自分をどこまで「客」として位置づけるかが決まる。


エリザヴェータは彼らを見渡し、最初の一言で部屋全体を押さえ込んだ。


「皆の者――よくぞ、扉をくぐった」


短い。


だがその一言が、「ご来臨ありがとうございます」などという陳腐な言葉より、何倍も重い。


「扉をくぐる」というフレーズそのものが、ここがどこであり、その扉を誰が開けたのかを、改めて全員に刻み込む。


オーストリア代表がまず、深く一礼する。


ポーランド側はもっとはっきりと、書類を胸元に持ち上げて応える。チェコの二人は一瞬視線を交わしてから、同じように頭を下げる。ハンガリーの代表は、立ち姿勢を微妙に調整し、この場のルールが予想以上に明確だと理解したようだった。


政府側は、動かない。


動くべき立場ではない。


エリザヴェータが腰を下ろしてから、ようやく彼らに向かって手を動かす。


「掛けよ」


それで、ようやく全員が席に着いた。


その瞬間、俺は一つの事実を、骨の髄まで理解した。


永遠領の外交的な姿勢というものは、誰かに承認されて初めて生まれるものではない。


誰が先に立ち、誰が先に腰を下ろし、誰が脇机に押しやられ、誰が「扉をくぐること」を歓迎するのか――その配置だけで、すでに形になっていくのだ。


オーストリアの代表が口火を切る。言葉は驚くほど整理されている。


「オーストリア側は、永遠領が第一陣の正式接触を受け入れたことに謝意を表します。我々の第一の関心は、法務窓口、接触のプロセス、および国境における隣接秩序です」


いい。


余計な飾りも、おべっかもない。純粋に、手続きの話に入っていく。


エリザヴェータはうなずく。


「問うがよい」


ポーランド代表が続ける。


「我々もまた、歴史的権利の範囲確認の進度、租回管理の安定性、そして将来的な対外接触の常設窓口の有無を重視しております」


チェコのメディア代表もすぐに続く。


「報道の立場からは、永遠領として今後、公開情報、取材、映像利用および内部へのアクセスルールを、独自のガイドラインとして示すお考えがあるのかを伺いたい」


ハンガリー側は、やはり最も率直だ。


「第二陣の接触枠が開いた際、我々としては、あらかじめ席を押さえておきたい」


吹き出すところだった。


これぞハンガリー、という感じだ。


エリザヴェータは一通り聞き終えても、すぐには返さない。


質問の一つ一つを、空気の中に少しだけ置いておく。その間、右側の政府席にも、きっちりとその内容を聞かせる。今、この部屋の中央で何が問われ、脇机で何が問われていないかを理解させるように。


そして、口を開いた。


「法務の窓口は、ここじゃ」


彼女はヴァヴラを示す。


「報道に関する規律は、第三号公告で定める」


チェコの席に視線を向ける。


「常設の接触窓口と第二陣の接待は、第一陣を終えてからじゃ」


最後に、ハンガリー側を見やり、唇をほんのわずかに動かす。


「汝らが急いでおるのは、分かっておる」


代表の一人が、思わず笑みを漏らした。


部屋の温度が、わずかにだけ上がる。それでも、緊張の核は崩れない。


右側の政府の列は、最初から最後まで、一人も口を挟めなかった。


挟みたくなかったわけじゃない。


挟んだ瞬間、自分たちがなぜ「そこ」にいるかを、全員の記憶に刻み直すだけだからだ。


その光景を眺めながら、俺は、さすがに悦に入りすぎている自覚はあった。


数日前まで、この連中は彼女を「歴史文化管理の一案件」に押し戻す方法ばかり考えていた。


今では、脇机に座り、他国代表が中央で、彼女に窓口と、手続きと、ルールと、次の公告の話を問いかけるのを聞く立場だ。


ここで起きているのは、単なる一歩後退なんかじゃない。


舞台全体が、横滑りしたのだ。


---


オーストリア代表が、さらに一つ問いを重ねる。


「今後の接触に関する文書は、スロバキア政府を経由せず、永遠領の名義で直接送付することを望まれますか?」


いい。さらに踏み込んできた。


この一問が意味するところは、ここにいる全員に明らかだ。


スロバキア政府の目の前で、「今後、彼らを迂回して直接ノックしてもいいか」と確認しているのだから。


俺はエリザヴェータを見た。


彼女は、欠片ほどの逡巡も見せなかった。


「いかにも」


潔い。


直截。


ワンクッションも置かない。


右側の顔ぶれが、一斉に、さらに一段階陰る。


俺は、この瞬間に立ち会えたことに、拍手を送りたい気分だった。


ヴァヴラが、間髪を入れず言葉を継ぐ。


「今後、永遠領への正式な書簡は、すべて本領窓口へ直接送達して構わない。副本として政府に送るか否かは、送付者の裁量に委ねる」


この一文が落ちた瞬間、政府側から、一枚皮が剝がれ落ちる音が聞こえた気がした。


象徴論なんかじゃない。


郵路だ。


郵路が変われば、現実感は一気に増す。


チェコのメディア代表は、すでに俯いて筆を走らせている。


ポーランド代表も、すぐに応じた。


「了解しました。我々も正式な書簡の準備に入ります」


ハンガリー側は、さらにあけすけだ。


「我々は今夜中に送る」


右側の政府席を見て、とうとう堪えきれずに、俺はヴァヴラに小声で投げた。


「今、あいつら全員、今日一日をカット編集したくてたまらないだろうな」


ヴァヴラは視線を手元の書類から上げずに答える。


「残念だが、今日の映像は一分残らず、誰かが保存している」


俺は笑った。


そうだ。


一度起きてしまったこういう場面は、すべて記録だ。


アーカイブだ。


後からどれだけ言い換えを試みても、完全には拭い切れない。


エリザヴェータは最後に場内を見回し、平らな声で告げる。


「本日は、ここまでじゃ」


誰も異を唱えない。


彼女の「ここまで」が、そのまま今日の範囲を線引きする。


彼女は一言、付け加える。


「汝らは、扉も、座す場所も、見たはずじゃ」


そして、中央の暫定徽記に視線を向ける。


「この先は、定めた(のり)に従え」


その一言が落ちた瞬間――この場にいる誰も、永遠領というものを「ニュースの熱で膨らんだだけの一時的な騒ぎ」だとは、もはや思わなくなった。


扉があり、名があり、公告があり、窓口があり、脇机に政府があり、中央卓の向こう側に、正式に「今後の文書の送り先」を問いかける外国代表がいる。


そのすべてが、ここに揃っている。


俺は彼女の斜め後ろからその光景を眺めながら、一つの言葉だけを思い浮かべていた。


結構。


ここまで来れば――外交の姿勢まで、きちんと形になった。

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