40・五人の魔法 2
前話の続きですわ。
『シャロン、聞こえる?』
「!」
突然のヨハンからの念話に、シャロンは驚いたが返答した。
『ヨハン? どうしたの急に?』
『実は今、君達五人の後を、僕らドラゴン五体が付いて行っているんだ…見た感じ、他の4人は気づいた様子はないから、振り向かず続けて…』
『…分かった。でも何で俺達の後を追いかけてきているんだ?』
『シャロン達が向かっている方向には、魔法の練習場があるんでしょ? それで僕が心配になって見に行こうとしたら、皆が付いてくるって事になって…シャロン、君の自分の魔力がどれだけ高いか知っているだろう?』
『まあ分かっているけど…今回は大丈夫だろう。昨日みたいに威力の高い魔法は使うつもりは無いし』
『…それなら大丈夫だと思うけど…一応心配だから』
『分かった分かった。じゃあゆっくり見物していてよ。俺が魔法を使う所を』
そう言うとシャロンは、念話を切った。
念話を切って気づくと、シャロンは学校の校庭の様な場所に居た、其処の真ん中には的の様な物が地面に突き刺さっていた。
「シャロン。此処が魔法の訓練場だよ」
ポールが言った。どうやらヨハンと念話で会話している内に、辿り着いた様だった。
「的があるけど、アレに魔法を当てるのか?」
シャロンが訪ねた。
「うんそうだよ。あの的は余程強力な魔法を当てない限り、壊れないんだ…今回使うのは初期魔法で良いんだよね?」
ポールが言った。
「俺はそのつもりだけど、他の皆もそれで良いか?」
シャロンが皆に尋ねると、他の三人も頷いた。
それからシャロン達は、使われていない的がある場所に移動し、的から10m程離れた所で立ち止まった。
「じゃあまずは、僕から行くね!」
ポールはそう言い、一歩前に出た。そして的に向かって手を翳した。
『放たれし水球』
ポールが魔法を呟くと、ポールの手から水球が現れ、的へと向かっていった。
バシャ!
水球は的に当たると破裂した。
「ポールは水魔法を使うのか」
シャロンが言った。
「うん。僕のパートナーのミリアは、水の魔法を使うドラゴンだからね」
「良し! 次は俺だな」
そう言って前に出たのは、ジャンであった。
「俺の魔法を見て、驚くなよシャロン」
そう言いながら、的に手を翳す。
『爆裂しる丸』
ジャンが魔法を唱えると、ジャンの掌からオレンジ色の球体が現れ、的に向かっていった。
ドガァン!
爆発音と共に、球体は的に当たった。当たった衝撃で砂煙が舞い、それがシャロン達に掛かった。
「見たか! 俺の爆魔法は!」
「ゲホッゲホッ! ジャン、魔力溜め過ぎだよ!」
砂煙に咽ながら、ポールが文句を言う。因みに的はあれだけの爆発を受けながら、無傷で存在していた。
「じゃあ次は俺の番だな」
そう言ってトーマスが前に出た。そして手を前に翳す。
『猛撃せし大樹』
トーマスが魔法を唱えると、地面から木の根の様な物が現れて、的を攻撃した。
「俺のは木魔法…植物を操る魔法だ」
「次は私だね」
リリアであった。
『放たれる火炎』
リリアが魔法を唱えた途端、掌から炎が出て、的を包み込んだ。
「私は炎魔法。まだこれくらいしか出来ないけど、これから覚えていくんだ」
リリアがそう言った時、シャロンはある事に気づいた。
「そういえば、皆は契約した時、どのくらい魔法を会得した?」
シャロンがそう言うと、四人は不思議そうな顔をした。そしてポールが言う。
「何言ってるのシャロン。一つに決まってるじゃないか。現に僕らはまだ二つか三つしか会得してないよ」
ポールの言葉に、シャロンは戸惑った。
「『マジか。俺は五つも会得したぞ…とりあえず誤魔化そう』…ああ悪い、変な事聞いて…俺も一つだったから、念の為に聞いたんだ。
「そうなんだ…じゃあシャロン。最後は君がやってみて」
ポールに言われて、シャロンは一歩前に出て手を的に翳した。
『落ち着け…一番弱い魔法だ…』
意を決して魔法を唱える。
『旋風の疾走』
シャロンが魔法を唱えると、風の衝撃波が現れて、的に向かっていった。そして…
ドガァァァァァァンンンンン!!!!!
凄まじい轟音と共に、衝撃波は的に命中し、辺りはジャンの時以上に砂煙に塗れた。
暫くすると砂煙が消えて、的の場所が視界に開けたが…的は何処にも無く、抉れた地面だけがあった。
予想した方も居たと思いますが、シャロンは見事にやらかしました(笑)。
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