「不可抗力だよね?」
学校に行く途中に、クラスメイトの水谷さんが前を歩いているのに気がついたので、挨拶しようとしたところ、急に強い風が吹いた。水谷さんは咄嗟にスカートを抑えたものの、鞄で片手がふさがっていたためか、それともそこまで気が回らなかったためかはわからないが、押さえられたのはスカートの前だけで、後ろは盛大にめくりあがってしまった。
年頃の健全なオトコノコとしては、そういう情景はしっかりと心の印画紙に焼きつけるのが義務というもので、例に漏れず俺もしっかりとその光景を心に刻んだ。ちなみに意外にも黒のレースというずいぶん大人っぽい下着で、ちょっとドキドキしてしまった。
ふと気がつくと、「……見たでしょう?」と水谷さんがじと目でこちらを睨んでいた。
「おはよう。後ろにいて、見てないなんて言い逃れする気はないけれど、不可抗力だよね?」
「おはよう……つまり見たのよね? で、他に何か言うことは?」
どうやら水谷さんは、風ではなく、たまたま後ろにいただけの自分に対して腹を立てているようで、なにやらコキコキと指を鳴らしながらこちらへ迫ってきた。
「……べ、べつに見ようと思って見たわけじゃないんだからねっ!」
ツンデレっぽく言ってみたものの、水谷さんの殺意の波動は治まるところを知らなかった。
「……別に見たこと怒ってるんじゃないんだからねっ! 女の子の恥ずかしい姿見ておいて、その俺は悪くねーぞって態度はどーなのよ? 見たんなら、ごめんって謝るなり、似合ってるよって感想言うなり、それなりの態度ってものがあるでしょうがバカぁ!」
水谷さんの瞬獄殺をくらって、言ったら言ったでやっぱり殴るくせに……と思いながら俺の意識は闇に沈んだ。
【ツンデレ】【風】【不可抗力】のお題で書かれました。
……うん、やっぱりわたしはツンデレってよくわかってない。




