「天へと続く階段(ver2)」
学校へ向かう途中、気がついたらわたしの目の前に変なものが出現していた。
これはいったい何だろう……?
わたしは鞄を肩にかけたまま、ただぼんやりとそれを下から見上げた。
それは天へと続くガラスの階段に見えた。好奇心に駆られて、一歩足をかけてみると、意外にしっかりとしている。なぜ人は階段を上るのか。それはそこに階段があるからに違いない。
わたしは鼻歌を歌いながら、ととと、と階段を数段上ってみた。すると足元を中心に波紋が広がって、しゃらん、と鈴のような音が鳴った。なんか楽しくなって、しゃらん、しゃららんと音を立てて階段を駆け上がったら、ずいぶん高いところまで来てしまった。透明なので、ちょっと怖くなって、思わず下を見たら、見知らぬ中学生くらいの少年と目が合ってしまった。
少年は、わたしと目が合ったことに気づくと、さっと目を伏せた。
変な子だな? とちょっと首を傾げて、まさかわたしの美貌に恥ずかしくなったのかな、なんてちょっと自意識過剰なことを思って、そこではじめてわたしは、透明な階段で真下から覗かれたら何を見られるかに思い当たって、思わずスカートを押さえた。
「こ、こら! 見たでしょ?!」あわてて階段を駆け下りようとしたところで足が滑った。
「あっ!」階段が光になって消えて、浮遊感があって、何もわからなくなった。
目を覚ましたら、知らない場所だった。そばに泣き崩れた格好の母がいて、話によるとわたしは通学途中、交通事故に遭ったということだった。
あの階段を上り続けていたらわたしはどうなっていたんだろう?
でもとりあえず、今度あの少年を見かけたら一発ぶん殴ろうと思った。