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翔~舞台メンバーの紹介談(表舞台には居ないヒーロー達 改訂版 )  作者: 龍冶


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第6話 身内って良いな!

 

「ひぇー、冗談言うな」

 翔は叫んだが、冗談にしては陽炎が熊蔵を知っているわけが無いことに直ぐ気が付き、ぞくっと鳥肌を立てながら椅子に戻った。

「それって本当」

 陽炎の様子を窺うと、

「本当も本当。マジの大マジ。俺は広永熊蔵五十二歳の時に、今じゃあ観光地になっているが、当時は南海の孤島だったハチ島で二十三歳の母親ニナに産ませた子だ。俺が一五の時親父は出て行ったが、それまで俺も例の家伝の技を習っていたんだ。それだけじゃあない、母親の方の実家はあの一帯では魔術師と言われている結構有名な一族でね、そっちの方の技も得意なんだ」

 そこで、翔はひとつ疑問を感じた。

「そういうご立派な方が、どうしてこの国で泥棒やってつかまって此処にいるんだよ」

「いいねえ、そういう皮肉、お前と話していると、つくづく身内っていいなあと思うよ」

 翔はあきれたが、どうも考えてみると陽炎は翔に対して好意的だった用に思える。もしかしたら、今まで自分が捕まえたと思っていたのは、わざとだったかも知れない。以前にもそんな感じがした事があったが、まさか、その理由は?と考えるとありえないように思えていた。だが、彼が自分のえーと何に当たるのかな、翔はようく考えて、

「ということは、あんたは親父の従兄弟」

「その通り、さっしがいいねえ」

 褒められると、翔は今度は素早く頭を回転する事が出来た。

「だったら、保釈金は俺より親父に出させるべきだ」

「まあそれでもいいけど、俺とお前の仲じゃあないか。お前が出してくれてもいいかなと思ったんだけど。だってほら、お前に結構花を持たせてやったろ。まだ昇進していないのか。ボーナスだって今度のやつは額がいいんじゃあないの。俺を捕まえてお手柄だったろう」

 やっぱりそうだったか。

「大きなお世話だったのに、俺は実力だけで勤務したかったよ」

「実力でいくとたぶんお前は今頃職を探しているはずだ。それにこっちにも都合があってねえ」

 陽炎はカチンと来るような言い草で、自分の手首やこめかみを見せた。見ると怪我の手当をしてある。

「なんか、怪我するようなへまでもしたの」

 翔は、負けずにカチンとくるように言ってやると、翔の機嫌の悪さも気にせず、陽炎は言った。

「へまは、四年前にしたんだ。親父が例のうそ臭い事の書いてある巻物を探している事を知っているだろう、俺もずっと気になって探していたんだけれど、四年前ある古美術商が持っているらしいことが解って、俺と弟とで盗んで来ようと言う事になったんだ。弟は三つ違いの烈っていうんだ。そうそう、俺の名は広永強と言うちゃんとした名があるんだぞ。そのころは俺はまだ盗みなんかした事は無かった。それが初めてだった。そんな事せずに買い求めればよかったのにと言いたそうだが、売るために持っているとは思えんだろ。まず第一、何故それが欲しいか、第二にどうしてそこに有ると知っているのか、そんなこと説明するわけには行かないだろう、仮にも俺たちは人目を憚る忍びのはずだろ。お前はあまり憚っていないようだが。それにその古美術商は橘と言って俺たちの先祖の宿敵、大河俊重のゆかりの者らしかった。それで俺たちの家伝の巻物を手に入れたのだと思った」

「その大河俊重って誰」

 陽炎はあきれて、

「そんなことも知らないのか、お前歴史習った事無いのか。まあいい、後でゆっくり説明するよ。巻物を盗む事は、親父には止められたけれど、俺と弟はなんかこう親父を感心させたいような、いいとこ見せてほめられたいような気分で、今考えてみると世間知らずもいいとこだった。盗みに入ったけれど、直ぐに見つかってしまった。その古美術商の家はハイテクの防犯設備がしてあった。弟は自動発射の銃に撃たれて動けなくなった。俺は弟を見捨てて逃げる事は出来なかったし、それで二人して捕まってしまった。只のこそドロと思われようとしたが、彼等は俺たちの素性を知っていた。たぶん情報もわざと漏らしたんだろうよ。弟を人質にされて俺は、高価な美術品を盗む事を命令されたんだ。一人で逃げるわけには行かないし、それに此処と此処に隠しマイクとマイクロカメラを埋め込まれたんだ。だから奴らに操られているしかなかったんだ。昨日お前の所のチーフが取調べの時に見つけてくれて取ってもらったよ」

 そう言ってもう一度陽炎は傷を指差した。

「だったらどうしてつかまった時に直ぐいつも逃げたんだよ」

 翔は陽炎の苦境を聞いてなんだか悲しくなってきた。

「そう易々と捕まるはずが無い事をやつ等は解っているんだ。わざと捕まったと解ると弟が殺される。何度か逃げて警備が厳重になっていって、程ほどのところで捕まろうと思ったんだ。怪しまれないようにね。保釈になったら、弟を助けに行かなければならない。出来るだけ急ぎたいんだ。わざとじゃない様にしたつもりだけれど、早い方がいい。助けに行くのには俺一人じゃ無理だからお前もついてきてくれないか」

「解った。直ぐ金を用意する」

 翔は父英輔に直ぐお金を振り込むように電話しようとして、書類をそろえなければならない事を思い出し、慌ててチーフの所へ走った。特別室のドアを閉め忘れていたが、それどころでは無かった。

「チーフ、保釈申請の紙ください。えーと銀行の振込みは三時までかな。急がなきゃ、あっ事務の片桐さんに振込先番号聞いとかないと。チーフ、確かこの間保釈があった時は、振込みを確認した時点ですぐ出してましたよね。当日OKでしょ」

「桂木、陽炎になにか嗅がされたな」

「チーフ、私は正気です。どうせ事情は弁護士から聞いているんでしょ。それから今から陽炎の弟を救出に行きます。いえ加勢の人手は必要ないです.気付かれないようにしたいですから。救出が完了したら連絡しますので、その後地元警察に連絡したければしてください。私一人では犯人の逮捕は無理ですから。私は救出だけです。救出時間は未定ですがそんなに長くは無いと思います。もしかしたらこれでお別れかもしれませんので、お世話になりました。いえ、正気です。保釈の申請書、これでいいですか。ではさようなら」

 翔は振込先を聞き、父英輔に事情を電話すると、

「振込みなんかめんどくさい、金を持って迎えに行く」

 と言った。それが最短かなと思い、翔は陽炎を連れて署の玄関前で父を待った。

 署の皆は遠巻きに見ながら、何かひそひそ話している。翔は、きっと皆は自分が陽炎に何か嗅がされたと思っているのだろうと思った。だが実の所、翔が大声で英輔に電話していたので、事情は皆知っていた。陽炎の方は署の人間の中に橘一族に通じている者がいたら、と心配になっていた。

「翔、今日のうちに橘一族のアジトに行けるかなあ。背鰭島なんだけれど」

「そうだ、ヘリコプターを借りよう。最近音のしないやつを本部で買っているはずだ」

 翔は慌てて奥の手配の係の方へ戻ろうとした。

「運転できるのか」

 陽炎は念のために聞いてみた。

「前の型のは知っているよ。警察学校で習った。今度買ったのもそんなに変わらないだろう。あっそうだ、公務使用で武器もいろいろ借りられるんだったっけ。」

 しばらくして、翔は武器も結構沢山持ってきた。

「有り難いけど、そんな事して大丈夫か」

 陽炎は少し翔の今後が心配になってきて訊ねた。

「後の事は後で考えるさ、だけどヘリコプターは俺には無理。運転手を頼んだよ。二時間後に迎えに来てもらう事にした」

「それも有り難いけど、弟を助けるのに関係ない人を巻き込めないぞ。俺らのことで死傷者を出す訳にはいかないからな」

 翔は陽炎は結構律儀な人だったんだなと思った。

「じゃあ、降ろしてもらったら、帰って良いって言う?」

「そうだな、今からだと明るいうちに着いてしまうから、近くの港までにして向うでボートを借りて行こう」

 そうこう言っていると、父英輔がやって来た。そして何と父は、陽炎こと広永強と涙の再会を果たした。いや彼等は初対面のはずでは無いか、初対面でよく感動できるなあと翔は思った。年を取ると涙もろくなると言う話だからな。と感心していたが、陽炎は気が急いていたので振り切って、

「すみませんが、ちょっと急いでいるんです。弟を助けに行かなければ。早くお金を払ってください」

 と言った。薄情なやつと英輔は思ったかどうか、

「少しぐらい時間はあるだろう。せっかくだから家族にも会わせたい」

 翔は思い出して言った。

「ヘリコプターは1時間後だよ」

 それなら、家にヘリコプターを呼べば良いということになり、皆で家に向かう事になった。翔は住宅地にヘリコプターはどうかなと思ったが、

「ヘリコプターが下りるのに前の公園が丁度良い大きさだ」

 と言う、金を払った父に逆らう事は出来なかった。

 家に帰ると、母美奈は大歓迎、広永強様だった。何と近所の寿司屋からかなり良いランクの出前を取って宴会の用意は整っていた。翔は陽炎の方を見ると彼もこれには涙目になっていた。英輔は本人に代わって美奈に説明した。

「母さん、まだ弟の烈君が橘一族に捕まっているそうだ。これから直ぐ助けに行かなければならないんだ。宴会はその後だ」

「すみませんこんなにまでして貰っておいて」

 と陽炎は言ったが、柄にも無く殊勝な事を言っていると翔には思えた。つまり陽炎は年配の女性に対しては、あるいは女性全般に対しては態度がごろりと変わるタイプらしいと解釈できる。

「まあまあいいのよ、そんなこと。それより二人とも気を付けるんですよ。翔で大丈夫かしらねえ」

 美奈はおろおろと心配げに言った。

「何言ってるんだよ、何年警察に居ると思っているんだ」

 翔は少し憤慨した。その時ふと視線を感じて振り返ると、リラが後ろの壁際から翔と陽炎をちらちらと見比べている。この顔は値踏みをして比べている感じだなと翔は思った。自分から陽炎に乗り換えるべきかどうか考え中と見えた。陽炎も気が付き、

「リラさん、私には故郷の島に婚約者が居ますんで」

 と、お断りした。

「ああら、何のこと」

 リラは笑って誤魔化していた。翔はため息をついて、少し位食べておこうと寿司をつまんだ。




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