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翔~舞台メンバーの紹介談(表舞台には居ないヒーロー達 改訂版 )  作者: 龍冶


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第4話 リラの身の上話

 

 それから、リラの身の上話が始まった。


「あたしんちに熊蔵おじい様がやって来たのは、丁度お母様が亡くなって一年過ぎた時よ。あたしはお父様が仕事に言っている間、ずっと一人で過ごしてた。まだ六歳だったけれど、お母様はあたしが物心ついたころから入退院を繰り返していたから、一人には慣れているつもりだった。でもお母様が生きて病院に入院しているのと、死んで二度と会えないのとは大違いだった。寂しかったんだと思う。でも、寂しいっていうのがどういうものか自覚していなかった。そんな時熊蔵おじい様が来たの。お父様が会社に言っている間中、あたしはおじい様と過ごしたわ、六年間ね。忍びの技も習った。以前にお父様からも少し習っていたけど、熊蔵おじい様の教え方は全然違っていた。半分遊びだったわ。そう思わなかった?ああ、翔はお爺様が最初だったから分らないのね。とにかく楽しかったわ。メリッサ母様が来るまではね。お父様とメリッサ母様が結婚して、ロンが連れ子としてやって来たの。で、ロンも一緒に習うことになったんだけど、才能が無いって言うより、体がそういう風には出来ていないのね。いつも叱られて泣いていたから、お母様は熊蔵お爺様を嫌っていたわけ。でもあたしは大好きだった。ある日お爺様はあたしに何にも言わずいなくなってしまったの。お父様もお母様も何もどうしてだか言わないのよ。でも大きくなって解ったの。あたしが女だからよ。女じゃあ奥義の習得は無理なのよ。筋肉がちゃんとはつかないのよね。生物学的に無理なんだってね。でもそれまではあたし、お母様たちがお爺様を追い出したんじゃないかと思ってた。そういうわけで、お母様とはあたしギクシャクしていたの。今は何とか普通にしているけど。それにしても、もう一度熊蔵おじい様に会いたいわ」

「おれも、じっちゃんがいたころは楽しかったよ。それじゃさ、じっちゃんはこっちに来る前はあんたのお守りをしていたんだな」

「お守りですって、くすん、そうかもしれないわね。あたしが一人ぼっちだったから来てくれていたんだわ、きっとそうよね。でも、光一伯父さん一家が全滅したんであたしのお守りもしていられなくなったんだわ」

 リラの身の上話を聞いて、翔は今更ながら、秘めた強さを持つ熊蔵の人柄を思い出し懐かしく思った。

「まったく、じっちゃんはいい人だったよ」

「あら、何だか縁起の悪い表現ね。まだ生きているんでしょう」

「あは、死んだって言う話は聞かないから、どこかで生きていると思うよ。なんでこんな言い方したのかな」

「やだやだ、もう一度会える時まで、元気でいてくれなきゃ。さよならも言わないで出て行ってしまうんだから。くすん。お爺様が居なくなってからは、あたしも良い事なんて無かったな。ま、ケインやアンリが生まれたのは良かったけど、ロンとはいつも気まずかった」

「うん、義理の仲ってのは難しいんだろうな」

「あたしの考えすぎかもしれないけど、何だかロンがあたしに興味を持っているみたいで嫌だった」

「へえ」

「あたしが警察学校に行こうとしたら、今までドンロンの大学に行くと言っていたのが急に私と同じ所に行くと言い出してさ」

「ふうん」

「そいでさ、家族なのに勤め先も一緒になったんだよ」

「家の近所をどっちも希望したからじゃないの」

 翔はリラの言い分を聞いても、少し考えすぎじゃないかと思えた。

「そうなんだけど、でもこのことはどうよ。ロンは同じ車で一緒に通勤しようって言い出すんだよ」

「そりゃ、不便でしょう、同じ勤務になるとは限らない」

 これはちょっと、変だと思える。翔はリラの話も、酔っ払いの戯言だけではないかもしれないと感じる事が出来た。

「でしょう、私はいやだと言ったら。親たちはそれは安心だと賛成するの。全然安心じゃないってのに」

「でも、もし付き合う事になっても近親相姦は当てはまらないでしょう」

「そりゃあ、ロンは籍に入ってなかったよ、苗字は私たちとは違ってた。でも家族だよ、あたしにとってはね、どう考えても。それにケインやアンリの立場はどうなるのさ。あたしは絶対嫌だ、ぞっとするね」

「ごもっともです」

「でも、配属された所に、もう一人新人が着てさ。ジェーンていうやつなんだけど、そいつがロンに一目惚れして、物凄いアタックをしたんだ」

「なんかその言い方、好意的とは言い難いね」

「嫌なやつなんだってばこれが。あたしの最も嫌いなタイプなんだけど、ロンがあたしから興味を移してもらえばと思って、あたしも浅はかだったよ。彼女に協力して取り持ってやったんだよ。彼女が結婚できたのはあたしの協力の賜物なのに、あの女は恩を仇で返したんだ。というか、とんでもないやつだった」

「何があったの」

「彼女はロンがあたしを好きだって感づいたんだ、女の感よね。そしてあたしと出来てるって思ったんだろうと思う、ここからは妄想だよね。で、あたしは、はめられたんだ。あの女に」

「はめられたって」

 翔はいよいよ核心に触れてきたなと思った。何故、翔とは違って実力で警察に入っておいて辞めてしまったのか、翔には気が知れなかったのだ。

「あたしこう見えてもお酒強いのよねえ」

「それは解る」

「だから結構飲み友達が出来ちゃって。あちこちの部署の先輩たちとよく飲んでたんだ。でも事件っていつ起こるか分らないでしょ。だから、あの署では休みと言っても待機の日と本当に休暇の日とがあって、待機の日はお酒とか飲んじゃいけないし、すぐ出動できる態勢で事務所と連絡がすぐ取れるところに居なきゃならない」

「そういうの、俺らの所にもあるよ」

「あたしはあの日曜日、勤務表には本当の休暇ってなっていた。だから事務所の人達と花見に行ったんだよ。丁度桜が見ごろだったんだ。そしたら、緊急事態訓練って言うのが始まって、あたしが来ないって所長から呼び出しがあってさ。行ったらなんで持ち場に居ないのかって怒られて。でも休みだからって言い訳したら。勤務表を見せられて、そこには待機になっていたのさ。あの日待機は事務所に居なきゃいけなかったんだ。勤務表を作るのは、あの女の仕事だったんだ。あたしに偽の勤務表を渡したんだ。訓練の日に待機を休みに変えたやつをね」

「その偽の勤務表を署に見せなかったのか」

「あたしの机は誰かに扱われて、ぐしゃぐしゃになっていて見つからなかった。整理整頓も出来てないって皮肉も言われたりした。全部あの女の仕業だ」

「ふうん、彼女が勤務表を作っていたんならそうだろうね、それで辞めたのか」

「本当はクビになったんだ」

「ああ、そうかもしれないな、きっと酒気帯び勤務ってやつだろう。一寸厳しすぎるような気がするけど」

「うん、実は前に待機の規則を知らずに飲んでた日があって、二度目だったの。二度目はクビって事になっていたのよ」

 返す言葉も無い翔だったが、ふと思いついた。

「でもそういうのを作ったって事は、パソコンの中に記録が残っていないかな」

「もちろん調べたよ。誰も信用してくれないから自分でね。あの女のには何も残っていなくて、他の事務所の奴らのパソコンも全部調べたけど、何も無かった。考えたらその位の事予想はつくよね」

「うん、でも消しても履歴とか調べられないかなあ」

「そうじゃなくて、自宅ので作ってたんだ。クビになった後で思いついて、あいつらの家に乗り込んで調べたらロンのパソコンにまだファイルがあったよ。でも、ロンじゃなくてあの女だって言うのに、親父に波風立ててくれるなっていわれたんだ」

「ううむ、義理の息子の嫁だから、気い使ってるのかなあ、でも気い使いすぎと違うかなあ」

 翔は一寸広永和夫の気持ちが図りかねた。いくらなんでも正義をないがしろにして、しかも実の娘の名誉よりも義理の息子夫婦の肩を持つとは、義理を立てすぎというものだろう。

「お父様はお母様に是非にと頼み込んで後妻になってもらったんだって言うんだけど。その時ロンの事も引き受けるって約束したって言うのよ。でもそれとこれとは違うと思うでしょ。ロンが何かやったっていうんじゃないんだから」

 リラは話をしているうちに酔いもさめたらしく、悔しげに翔に同意を求めてきた。

 そうリラに言われてみると翔は、それとこれは広永和夫にとっては同じなんだろうなと思えた。

「やっぱり、親父さんにしてみれば、実の娘を犠牲にしてでも、義理の息子を立てなければならないんだろうと思うよ。親父さんはちゃんとあんたは悪くないって解っているんだから。あんたも、だからこっちに来て暮らそうと思ったんだろ」

「そういうことなんだけど、思い出したらまた腹が立ってきたのよ」

「忘れるしかないな」

 翔は話を聞くうちに、どうやらリラのご機嫌を取りながら、暮らしてやらなけりゃならないかなあと、思えてくるのだった。




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