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マンホールの怪物  作者: 小石沢英一
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第 一章 五 欠席

留樹緒が登校すると、黄金のカエルの話題で持ちきりだった。


 みんな興味を失ったのかと思ったが、違ったようだ。話を聞いていると、昨日は公園から少し離れた場所でさがしていたようだ。


 だから誰もいなかったのだ。それに黄金のカエルをまだ発見していないから、これだけ盛り上がっているいるのだろう。


 良かった。色々な意味を含めてである。


 留樹緒は人太の席を見た。まだ登校していなかった。一日だけしか絶縁していないが、もっと長い時間が経過した気がした。


 欠席か? と、心配しても、いれば話が出来る状態でもなく、仲直りの見通しが立たない。


いつの間にか佐村先生がいる事にギョッとした。いつもならすぐに声を出すのに、神妙な顔をして生徒を見回していた。それに気がついた生徒たちは黙った。いつものように出席簿を読み上げた。


 人太は欠席だった。


 佐村先生はため息を吐いた。「今日はちょっと心配なお話があります。石川くんが昨日から家に帰ってないそうです。と、お母さんから連絡がありました。誰か知っている人はいませんか?」


 左村先生と五年二組の生徒たちが一斉に留樹緒をじっと見つめた。


 留樹緒は動揺した。


「知らないよ。昨日は一緒じゃなかったし」


「そうなの。残念ね。家出かもしれないので、騒がないでね」


 教室は静まり返った。


 昨日の下校後に人太に誰も会っていないのだ。


 嫌な予感しかしない。


 留樹緒は人太と仲違いしたが、いなくなると心配でしかなかった。


 佐村先生は家出を強調したが、誘拐もあり得るのだ。


 まだ、事件として扱われていないので、家出が妥当判断だろう。


 放課後の公園は今日も小学生が多かった。状況は昨日と同じである。黄金のカエルさがしの小学生ばかりいるのだ。


 留樹緒もさがす気で来たが、人の多さに全くやる気がなくて、ベンチに座っていた。


「見つかったか?」


 留樹緒は聞かれたので顔を上げると、長身の男がいた。驚いてのけぞった。


「まだ、見つかってないよ」


「残念だな」


「黄金のカエルを渡したら、願いを叶えてくれるの?」


「何でも大丈夫だよ」


「それじゃ、行方不明の人太をさがすのも?」


「大丈夫だと思うが……」


 長身の男は歯切れが悪く、人太の事を知っているもしくは関係しているのではないかと、勘繰りたくなった。


「もしかして、人太を……」


「落としちゃった」


 長身の男は留樹緒の話を遮るよに石ころを落とした。 


 留樹緒は石を拾った。


「あれ?」


 留樹緒が顔を上げると、長身の男は消えていた。


 怪しい。人太は家出ではなく、誘拐されたのが濃厚だ。しかし、警察に言っても信じてもらえる確率は低い。神出鬼没の長身の男など捕まえる事が出来るのか疑問だ。


 留樹緒は日暮れも近かったので、帰宅しようとしていた。それは歩き出してすぐの事だった。


 公園内が騒がしくなった。


 小学生たちが一人の子を囲んでいた。その中心にいる子は何かを持っていた。


 留樹緒はかけ寄った。ウシガエルを捕まえたのだ。


「交換だ」


 と、小学生は興奮気味だ。特定の人に言っているのではない。叫んでいるのだ。

「それ違うよ」


 と、留樹緒はウシガエルを持っている小学生に言った。


「どういうこと?」


「そのカエルじゃないよ。黄金のカエルだよ」


「大きなカエルと交換って聞いたよ」


「それを誰が交換してくれるの?」


「えーと、誰だろう……」


 小学生は急に元気がなくなり、持ち上げていたウシガエルを下げた。


「わからないんじゃないか」


「けっ、つまらねえ」


 と、言って少年はウシガエルをその場に投げるように放した。


 夕焼けチャイムが鳴ったので、公園に小学生たちがいなくなった。もちろん留樹緒だけしかいなかった。


 歩道には人がまばらにいた。ウシガエルはゆっくりと移動している。


 留樹緒は今度こそ帰ろうとした。


 光った。


 公園の角に違和感があった。


 留樹緒は直感した。身体は勝手に動いていた。


 光の正体が判明した。


 小学生が捨てたウシガエルである。


 留樹緒は黄金のカエルを見つけたのだ。連続で光っているわけではない。光ったときに黄金に見えるのだ。だから見つけられなかったのだ。これで願いが一つ叶えてもらえる。


 嬉しかった。


 行方不明になった人太をさがしてもらおう。


 留樹緒は長身の男がいないか辺りを見回したが、もちろんいなかった。


 黄金のカエルをどうする?


 留樹緒が改めて、金色のカエルを見ると、ただのウシガエルに戻っていた。変化する仕組みは不明だが、カエルを拾い上げ、シャツをまくり上げ、お腹に隠した。いつ光って黄金のカエルに変身するかわからないのからだ。見つかれば騒がれねない。


 周囲の人は気がついていない。公園に注目している人などいないからだ。


 留樹緒はウシガエルを落とさないようにしっかりと抱えた。足早に公園を立ち去った。

 

 この格好が滑稽に見えるだろう。誰にも会いたく時に限って知っている顔が見えた。


「お腹抱えて、どうしたの?」


 同じクラスの女子生徒だ。どう見ても腹痛であるかのようだが、顔色は正常だ。だから声をかけたのだ。


「何でもないよ」


 早く、帰りたいので、早口になる。


「大事な物?」


 女子生徒は気になるようだ。ジロジロと目を離さない。


「……」


 留樹緒は黙っていたが、ウシガエルが動いたので、後ろ足が見えてしまった。


 女子生徒は見逃さなかった。悲鳴を上げて逃げた。


 幸い光っているところは見られていなかった。


 留樹緒は慎重にウシガエルをお腹に抱え直した。誰かに見られずに、無事に家に着いた。



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