第一章 四 人太の変化
留樹緒と人太は昨日の影響が続いていた。いつもなら、教室内では話すのに、今日は目も合わさない。関係が修復していなかった。
留樹緒は学校に着いて、何もする事がないので、ボッと生徒の会話を聞いていた。聞こえる情報に耳を疑った。
黄金のカエルと引き換えにゲーム機がもらえると学校中の話題になっていた。
それに人太の様子がおかしい。ずっと座って真っ直ぐしか見ていない。生徒が話しかけられてもうなずくだけだった。
留樹緒は人太が気になったが、気まずい雰囲気だったので、話しかけられなかった。
もちろん人太からもである。
昼休みになり、驚いたことが起こった。
「カエルを見つけた!」
と、五年一組の生徒がウシガエルを教室に持って来た。
「キモいよ。キャー!」
女子生徒たちは悲鳴を上げて、教室を出て行った。
教室は男子生徒だけになり、カエルを持っている生徒を中心に輪になった。留樹緒と人太は輪に加わらず外で傍観していた。
「どこにいたんだよ」
「目の前の公園」
「昼休みに校門を出たのかよ」
「そうだよ」
「いけないな」
「先生に言うなよ。ゲーム機が手に入ったらやらしてやるから」
「約束だぞ」
「わかったよ」
「早く、ゲーム機と交換しろよ」
「でも、誰と交換してくれるんだい?」
「あそこにいるやつだよ」
「留樹緒くん、ゲーム機と交換ね」
生徒は留樹緒を輪の外にいたのを見つけ、カエルを持って目の前に突き出した。
「ちょっと、違うよ」
留樹緒は焦った。話が変わってしまったからである。
「早く」
生徒は強引に留樹緒にカエルを持たせた。
「このカエルじゃないよ。黄金のカエルだよ」
「ええっ? このカエルじゃないの!」
生徒は不満な顔をあらわにした。
「当たり前じゃないか」
留樹緒は生徒にカエルを返却しようとするが受け取らなかった。
「黄金のカエルって、そんなのいるか?」
生徒は留樹緒にカエルを預けたまま踵を返した。
「ちょっとこれ」
留樹緒は無視された。手にはカエルが残っている。
「真北くん!」
左村先生だった。嫌な物でも見るような目で怒りを抑えている状態だった。
「何でしょう?」
「そのカエル外に逃がしなさい」
「はい……」
女子生徒が左村先生にチクったのだ。それにカエルの責任まで留樹緒が負う事になっていた。
チャイムが鳴った。五時間目の始まりなので、外で遊んでいる生徒は教室に向かっていた。
留樹緒だけはカエルを処分するために外に向かっていたので、他の生徒とすれ違っていた。
ウシガエルが大きいので、女子生徒たちすれ違う度に驚いて悲鳴を上げるが、男子生徒は寄って来てジロジロと見るのであった。
「ゲーム機と交換に行くの?」
一人の生徒が言ったので、みんな集まってしまった。
「違うよ」
と、留樹緒は否定するが、生徒たちは羨望のまなざしで見つめ、ウシガエルに触れようとしてきた。
留樹緒は必死に逃げた。
五時間目が始まるので、追っていく生徒はいなかった。
留樹緒は校門の前に立ち止まっていた。ウシガエルは手から離れて、飛び上がった。そのまま公園に行ってしまった。
留樹緒はそのまま凝視していた。
次の瞬間、異様な光景を見た。ウシガエルが光ったのだ。黄金に変化した、ように見えた。見間違えか?
留樹緒は校門を出て。公園まで行くが、見失ってしまった。
見間違いだろうと結論づけた。
帰りのあいさつを終え、佐村先生に叱られる事はなかった。誰もカエルとゲーム機を交換の話はしていないようだ。
帰宅後に公園に行くと、カエルをさがしている男子生徒がいる。普段なら遊具を使用したり、ベンチに座り、携帯ゲーム機をいじっているが、今日は誰もやっていない。
留樹緒も金色のカエルをさがす目的で来たのだが、周囲を見ても低学年ばかりで、同学年の生徒はいない。今日の一件で興味をなくしたのだろうか。もちろん人太もいなかった。
血眼になってさがしたわけではない。三十分くらいで、諦めた。いや、飽きたのだ。留樹緒も興味を失い始めた。




