第五章 十七 カエル奪還作戦
下駄箱の前で留樹緒は同じ場所を行ったり来たりしている。
「どうすんだよ!」
流都は慌ている留樹緒に言った。
「どうしよう……」
「そんなの取り返すしかないだろう」
「そうだよね。人太がカエルを持っていたら、取り返してよ」
「まあ……そうだな。それしか方法はないな」
「中学生だから簡単だよね」
「うん……」
と、流都は言ったものの、不安はあった。気迫に負けそうだからだ。
流都と留樹緒は下駄箱で人太が来るのを持っていた。もちろんカエルが見つからなければ問題はないが、教室に置いてあるので、見つかるのは時間の問題だ。
見つからない期待はしていた。
人太の姿が見えた。
しっかりと虫かごをお腹に抱えていた。
バレたか。
「頼むよ」
と、留樹緒は小声で言った。
「よし!」
と、流都は言ったが、自信がない。目前の小学生で身体も小さいが、虫かごを奪える隙がない。威圧感だけで負けそうだ。
どうする?
先に留樹緒が人太に駆け寄った。
「それどうするの?」
「決まっているだろう……」
人太は不機嫌そうな顔で言った。
「マンホールだね?」
人太は留樹緒を無視するように歩を進み足止めしなかった。
頼みの綱は流都だ。この雰囲気では無理と即答したい。じっと見ているだけだった。
「わぁ!」
と、人太が声を上げると、流都の視線から消えた。
「えっ?」
何が起こったのか。
人太が前に倒れたのだ。
どうして?
「ほら、早く」
留樹緒の声が響いている。
流都は状況がつかめないでいた。
「そうか!」
人太は留樹緒に足を引っかけられて、前に倒れたのだ。そして虫かごの蓋は開き、カエルが飛び出していた。
チャンス。
人太が立ち上がりカエルを掴むよりも、流都が少し前に出て屈んで手を伸ばす方が近い距離だった。
「流都、早く!」
留樹緒は叫ぶ。
流都は右手で掴まえ、素早く百八十度回転していた。あとは走るだけだ。目の前に校門がある。学校からは脱出し、人太に捕まる事はない。足が勝手に動き出していた。
もう少し……だった。
流都の足が止まった。
「渡して!」
校門の前に急に、りりかが現れたのだ。
「……」
流都は沈黙していた。
「そのカエル渡してよ!」
流都は掴んでいたカエルを前に突き出すのではなく、後に隠した。
りりかも無言である。すると、顔を真っ赤にし、形相も鬼のようだ。
ここにいるのはりりかに似ているがやはり別人だ。
流都はその変貌にたじろいだ。
「何をする……」
りりかは強引に流都の手首を掴んだ。その反動でカエルは手から落ちた。
まずい。と、思った瞬間にりりかは素早くカエルを掴み、微笑んでいた。
万事休す。
流都は取り返す気力はない。傍観者として、事の次第を見届けるだけだ。
「カエル、カエル、カエル……」
流都の近くで叫んでいた。その声の主は留樹緒ではなかった。見覚えのある女性だ。
「えっ?」
流都はその女性を見た。
エマだ。間違いない。声もそっくりだし、サングラスをしていても本人としか言いようがない。




