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第五章 十四 目の前のアイドル
「大丈夫ですか?」
と、エマが心配そうな顔で見ている。
輝は目の前のエマを凝視した。まだ、声が出ない状態だったので、首を縦に何度も振った。
間違いない。アイドルの目時エマだ。サングラスから薄ら目が見える。
彼女を近くで見ると、整った顔立ちや肌の質感など画像では表現しきれない美しさで、男なら一目惚れレベルだ。
エマは黙って見ていたので、輝はもう少し、この時間が続けばいいと思った。
「み、水を買ってきてくれませんか?」
ようやく、声が出た。財布から五百円硬貨を出した。
エマは微動だにせず、断る言葉でも模索しているのか。
輝は返答に困っているエマを見るのをやめて、視線をそらした。
「はい……」
と、エマは言った。
輝はてっきりやんわりと断られると思っていたので、五百円硬貨は握りしめていた。「お願いします」慌てて、五百円硬貨を突き出した。
エマはゆっくりと右手のひらを出した。「行ってきます」と、言い残した。
輝はエマの後姿をじっと見つめていた。天下のアイドルが目の前にいたのだ。もう、戻ってこない気をするが、何とも言えぬ心地よさはテンションの高ぶりだろうか。




