第一章 三 黄金のカエル
五年二組の教室はマンホールの怪物の話題は出なかった。
昨日、左村先生が完全否定したので、生徒は興味をなくしたのだろう。
給食が終わり、教室に留樹緒と人太がいた。教室内はインドア派の生徒が数名いるだけで、静かにしていた。二人の会話を聞かれても、言い触らす生徒はいない。
「どうやってさがそう?」
留樹緒は人太に聞いた。
「そうだな。昨日あれだけさがして見つからなかったから無理じゃない?」
人太はもう諦めモードだ。
「そんなこと言うなよ。今日もさがそうよ」
「いるかな……」
人太は完全に興味を失っていた。
「いるよ。絶対!」
「大きくて黄金だぜ。そんなに目立つのに見つからないっておかしくないか?」
「きっと、どこかに隠れていたんだよ。そうだ、水の中だよ」
「そうかな……」
人太は首を横に曲げ、顔も曇っている。やる気なさがにじみ出ていた。
「何だ、その黄金って?」
お昼休みの終了のチャイムが鳴ったのを気がつかず、教室には生徒たちが戻っていた。
「黄金のカエルを捕まえて、おじさんに渡すと何でも願いを叶えてくれるんだって」
と、人太は言った。
「そりゃ、スゲーな、俺たちもさがそう!」
生徒たちは人太の言う事を鵜呑みした。マンホールの事があるだけに生徒たちは先生には言わなかった。
女子はカエルが気持ち悪いので、盛り上がらず、男子たちは放課後にカエルさがしを始めた。
すでに公園には五年二組の男子生徒がたくさんいた。
もちろん留樹緒と人太もいた。
「まずいんじゃない」
留樹緒は不満だ。ペラペラ喋って、男子生徒が総出である。一匹しかいない黄金のカエルを先に捕られてしまう可能性が高いからだ。
「どうして?」
人太は見つかるはずがないと思っているのだ。いや、黄金のカエルなどいないと思っているのだろう。
「あのおじさん、何か気持ち悪いからさ」
人太のやる気なさは変わりない。
「そうは思わないよ。黄金のカエルを見つけてゲーム機をもらうんだ」
「ゲームね……」
「お金があっても、ゲーム機はどこのお店でも売り切れで、手に入らないっていうからぜひ頼みたいよ。人太は欲しくないの?」
「そりゃ、欲しいけど……あのおじさんが変な感じするから……」
昨日の人太はどうした。人が違うようだ。
「えっ、ゲーム機がもらえるの? それなら頑張ろう!」
二人の会話を聞いて、男子生徒が黄金のカエルとゲーム機が引き換えになると話が広まった。
「どうすんだよ。みんな必死になってるよ」
留樹緒は心配した。
「カエルを先に見つければいいんじゃいの?」
「もう……」
留樹緒は言葉を失った。本当はもっと言ってやりたい事はあるのに、言葉が出てこないのだ。
「あのおじさん危険だと思う」
人太はポツリと言った。
「そんなことないよ」
留樹緒と人太は気まずくなり、離れた。ちょうど雨が降ったので、別々に家に帰った。