五話 秋祭 ‐‐ 夏の風物詩 ‐‐
「え…… 天音さん!?」
ガラの悪い男に囲まれてたのは転校生の天音だった それに茅野と陽も気付いた
ーー どうする
天音は強引にその場から離れようとしていた
しかし 周りの男達もそれをさせない
「いいから…… 放っておいて!!」
天音の大声は徐々に周りの耳に入り その場が注目される
「おい啓二ヤバいぜ もういいだろ!? 他行こうぜ」
仲間に注意されたても 啓二は引かなかった
「俺達が悪者扱いか…… おいてめぇ どうしてくれんだ?」
急激に態度を変え 天音に当たり始める
天音は当然みたいな表情で見ていた
「あんたが他人に絡むからでしょ……」
天音は一人の男を押しのけ 逃げようとしたその時だった
「舐めんなよガキが!!」
啓二は天音の腕を握り 強引に引っ張り戻す
「ちょ…… 離して!!」
「なら謝れよ!! 俺達は寂しいお前を誘ってやっただけだ!!」
「やめろよ啓二!! もういいだろ!!?」
ーー どうする
天音を放っておかない啓二を 陽はただ黙って見ていた
ふと茅野の方を見る
茅野は天音をじっと見つめ 今すぐにでも助けに行きたい表情をしていた
でもそんな力は自分には無いって陽にも伝わる
ーー俺だってそうさ…… あんなガラ悪い輩相手に……
陽は下を向くがあることを思い出す
何年か前 小学生だった月衣が高学年にいじめられていたとき
〝 お前他所から来たんだってな! 〟
〝 うちの父ちゃんが言ってたぞ 中国の奴は自分勝手で何するかわかんないってな!! 〟
〝 自己中だ 自己中!! そんな悪者はおしおきしないとな! 〟
放課後の校門で 高学年の奴等は月衣のランドセルの中の物を辺りに捨て
その後にランドセルを月衣にぶつけていた
〝 ……やめてよ 〟
〝 お前の母ちゃんも気持ち悪い仕事してるんだって? 〟
〝 やめろ…… 〟
〝 クズは早くどっか行けよ! 〟
〝 やめろ!! 〟
月衣は相手の顔を思いっきり殴る 殴られた子は歯が折れてその場で泣き喚き
他の逃げようとした子達も蹴られ掴まれと 月衣の喧嘩には誰も敵わなかった
〝 うぇ~~~ん 助けて~~!! 〟
月衣は我に返り自分の手を見る
〝 ……喧嘩しちゃいけなかったのに 〟
手からそっと周りの生徒を見上げた
さっきまで傍観して子達が 逃げたり 泣いたり このタイミングで助けを呼んだり
自分達と違うから 俺の存在は無条件で嫌われてる
月衣はそんな感情を覚えた ランドセルから捨てられた物を拾い入れる
〝 泣いたら駄目 喧嘩したら駄目 他人と仲良くしないと駄目 〟
これを破ったら母親が泣くことを知ってるから
ーーだから我慢してきたのに…… 母ちゃんがまた泣く
月衣は流れる涙を必死に拭い 物を拾い集めていた
〝 これ 月衣君のだよね? あっちにも落ちてたよ 〟
「……」
「陽君!」
「……」
「陽君!!」
ふと我に返り 陽は茅野を見てニコッと笑う
「あぁ…… 茅野 ちょっとここで待ってて」
陽は茅野から目線を男達に向け 歩き出す
「陽くん……」
陽は人を掻きわけ 天音の所へ向かう
「天音さん 何してるのこんなところで?」
「……!! 日下部…… 陽……」
陽は啓二の腕を掴み 天音の腕を掴むその手を振りほどいた
「なんだてめぇは……」
「この子とはクラスメートなんでね ほっとけなかっただけだ」
陽はそう言うと天音の腕を掴みその場から離れようとした だが奴は逃がさない
「待てよ……」
「なんだ? え……!?」
振り向いた陽の顔に拳がめり込み 陽は近くの屋台に吹き飛ばされる
「うぅ……」
「日下部!!」
「天音さん…… 逃げて…」
必死に起き上がろうとする陽の身体を 啓二が近づき持ち上げる
「ザコは引っ込んでろ!!」
陽は再度道路に殴り飛ばされ 啓二は天音の方へと歩く
「俺が悪者か?」
「…………っ」
「違ぇよなぁ!!? だったら謝れよ!!」
「…………誰も悪くねぇんだから もういいだろ!」
啓二の肩を掴む陽 その掴んだ手を見て啓二は陽の胸ぐらを掴む
「キメェ手で触んじゃねぇ!!」
啓二は何度も何度も陽を殴り 道路に何度も倒れさせる
「ゲホォ…… ウェホッ……!!」
息が吸えない吐けない
陽を他の男達が囲み フルボッコ状態となる
数分間蹴られ啓二が神を掴んで吊し上げる
「どけ…… 俺がやる」
「やめて…… もうやめてよ!!」
啓二達の前に 茅野が天音の隣に立つ
「か…… やの……」
「なんだお前…… こいつの彼女か?」
「っ………」
「結構可愛いな…… じゃあ彼氏の代わりに彼女さんが責任とってくれよ」
啓二は茅野に近づく 陽は必死に立ち上がろうとするが
周りの男達がそうはさせなかった
「茅野!!」
「さぁて…… まずは土下座でもしてもらおうかな……」
「……」
茅野は数秒間黙り込み そしてそっとコンクリートに膝をつけた
「茅野…… なんで…」
少し離れる天音も茅野の行動に助けに入りたかったが 足が震えて動けない
茅野は腰を曲げて手も地面につけた
「ヤメろ…… 茅野……」
「早くしろよ! インスタにでも貼ってやるからよ!!」
啓二はスマホを既に構え 動画の準備を整えてる
「茅野!! やめろ!!」
陽は抑えられてる足を必死にもがき動こうとする
ーー情けない…… 情けない 情けない!!!!
「ぅぅぅぅぅ……やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
陽の叫びは無駄に思えた
「言っただろ? 応援してるぜって」
啓二の顔面は歪み その拳は強かった
飛ばされる身体はシャッターに押し付けられる
「月衣……」
「よっ 陽!」
「お前…… 帰ったんじゃ」
「バレないように祭楽しんでたぜ これぞスリル!!」
高笑いしながら月衣は陽の手を取り 陽はよろけながらも立ち上がる
「てめぇ……」
鈍いシャッターを叩く音が響き 啓二も起き上がる
「陽下がってろ」
「お前…… 停学になるぞ…」
「ハハ……!! さすけねぇ!!」
陽と月衣の後ろから啓二のつれ達が襲ってくるのに対し 月衣は怯むことを知らない
相手の動きを瞬時に対処し その喧嘩センスは複数相手に引けを取らなかった
「相変わらず…… すげぇ……!」
「陽君……」
茅野に駆け寄った陽は手を差し伸べる
「ごめん…… ホントごめん茅野……」
何度も謝る陽に 茅野は泣きながら抱きついてきた
「怖かった…… 怖かった…… 怖かった」
小刻みに震える茅野の言葉から相当の恐怖が伝わり
陽も茅野を抱きしめる しかしゆっくりはしていられない
「日下部!!」
天音の声と共に陽は周りを見渡す
「おい…… 増えてねーか?」
啓二達とは別に 十数人の元ヤン風の男達がいた
「おい啓二…… この男二人か?」
「あぁ……!! ぶっ殺してくれ」
男達は笑いながら陽に近づいてくる
さすがの月衣も数人が限界の中 陽の下へは行けなかった
「茅野さん 俺から離れないで」
「陽君……」
既に怯えきっている茅野は陽のシャツをギュッと握り 離れることは出来ない
「茅野は絶対守るから……」
ーー絶対に…… 守ってやるから!!
自分がボロボロでもなお 茅野への好意は揺るがない
そうとは知らない男達は一斉に襲いかかった
「陽!!」
襲いかかる男達の背後から突如 元ヤンの身体が次々と投げ飛ばされてくる
「なんだ!?」
ガラの悪い男達が一斉にそっちに注目する そこにいたのは
「ヤ…… ヤナ!?」
「たった一人にその人数か!? 田舎生まれじゃあねぇな?」
「また増えやがった…… ん!?」
啓二は木島の後ろに目を持ってかれた そして怯え出す
神社に繋がる門から出てくるのは
「てめぇら…… 俺の息子に何してんだオラァ!!!?」
「ハハ…… 親父」
そこには陽の父義典率いる複数の中年の男達が現れる
「義典さんの息子さんが危険な目にあってると聞いちゃ黙っておけねーなぇまんず!!」
「どこのガキか知らんが鮎飼の祭で勝手なことしちゃぁ 俺らが黙っちゃいねぇぞ!!」
「覚えておけ…… 白鷲の地区消防団体と祭の実行委員会は血の気が多い連中の溜まり場だってな!」
「そこまでじゃねぇげんど 覚えとけよ!!」
十数人の元ヤン青年共に立ち向かうは
陽 月衣 木島 そして屋台をすっぽかして後で怒られるであろう鮎飼の活気あるおっさん達だ




