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六話 秋祭 ‐‐ 招かれた春風 ‐‐


ガラの悪い男達は 次々と抑えられていく

陽は茅野と天音を遠くへと避難させていた


「茅野…… 大丈夫か?」


「うん…… 大丈夫……」


「天音さんは?」


「…………大丈夫」


陽は二人の心配を確認し そして現場の方を見る


「大分捕まったな……」


遠くで手を振る月衣に陽も振り返す

助けてくれる友達に恩を感じざるを得ない


警察に男達は連行され

自販機の隣でジュースを飲んでる月衣と木島のもとへと向かおうとした そんな時だ


「……!? 月衣!!」


「ん??」


月衣の隣から姿を現す啓二


「お前…… 隠れてたのか!?」


「てめぇらのせいで……… てめぇらのせいでな!!」


啓二は近くにあった手で握れるくらいの廃材を振り上げた


「月衣!!」


陽の大声で近くの中年達も気付く


「死ねぇぇぇ!!!」


しかし月衣は紙一重に避ける

その背後から木島が啓二の胸ぐらを掴み 一気に背負い投げを決めた


「かっ……! なっ……!」


啓二はコンクリートに叩きつけられ 意識が朦朧とする


「これで三人仲良く停学じゃな!!」


「おう! 河川敷でバスケ三昧だ!!」


「ハハ……」


陽は二人の陽気さに笑うしかなかったが 改まって頭を下げる


「今日はありがとう……」


「別に…… お前らがいない学校は退屈じゃから」


「確かに…… このメンツは欠けちゃ~~ならね~~~」


ふざけ合う三人を余所に 下で倒れている啓二の手はゆっくりと廃材に近づく


「な…… なめんなよ」


その瞬間啓二は立ち上がり その場から走り出す


「「「 !!? 」」」


油断していた三人は出遅れる

啓二の向かう方向には 天音がいた


「お前が悪いんだ…… お前がぁぁぁぁぁ!!!」


啓二は廃材を振り上げ 今度こそ仕留めようとばかりに力が入る


「天音!! 逃げろ!!」


「!!?」


ギリギリになって天音は気付いた が手遅れだった

廃材が振り下ろされると同時に鈍い音が鳴る


「……………え?」


天音はそっと目を開ける そこにいたのは


「くぅぅぅぅそぉぉぉぉぉ…… 誰だてめぇ!!」


「俺の生徒に何してんだよ」


駆けつけようとした三人は口を揃えて声を上げた


「「「 草津!? 」」」


「呼び捨てかよてめぇら……」


草津は廃材を持つ啓二の手を持ち

そのまま容赦ない一本背負いを決めた


「…………」


地面に叩きつけられたと同時に啓二は意識を失う


「おみごと……」


木島は思わず拍手を送り それに釣られ周り全員の拍手喝采が生じる


「草津…… なんでここに……」


「おじさん……」


「おじさん!?」


草津に向けて発した茅野の言葉が三人を驚かせた


「電車に乗ってねーから心配になってな…… 来て正解だったわ」


「ちょー待て!! 草津と茅野の関係って?」


月衣の質問に草津はダルそうな態度を見せた

そして茅野が代わりに答えてくれる


「私 両親いないから親戚であるおじさんの所に住んでるの」


「……茅野 両親いなかったのか」


「うん…… 母は病気 父は事故で……」



「茅野! 先に車で待ってろ」



話を強引に裂く草津 茅野は荷物を持って車のある所へ向かおうとしていた

しかし足を止めて 陽の名前を呼ぶ


「陽君!!」


「え?」


「今日はいろいろあったけど楽しかった 助けてくれてホントにありがと!!」


「……当然だろ」


照れながらもかっこよく決めようとする陽の背後から

月衣と木島が茶化し出す


「いつからそんなこと言えるくらい成長したんだ陽く~ん??」


「な…… 親父!?」


義典も参加する そんな光景を見て茅野は明るく笑った


「あとあの返事まだだったね!」


「へ? 返事?」


「こちらこそよろしくお願いします!」


「!?」


茅野の言ってる事に 周りの皆はともかく陽にも分からなかった


「茅野…… 一体何を……」


「エヘヘ!!」


茅野は照れながらも その言葉はその場にいる誰もが聞き取れる声量だ





「 今日から私達 恋人同士だね!! 」





「………………へ?」





そう言い残して 茅野は車へと歩いて行ってしまった

その場には十数人の人間が居たにも関わらず 風の音が聞こえるくらい静かだった


「今…… 恋人同士って」


「おー……」


「おー……」


「「 おーーー!! 」」



「「「「「「 おー!おー!!おー!!!お~~~!!!! 」」」」」」



月衣や木島はもちろん 義典や周りで片づけしていた中年達も徐々に歓喜が連鎖する


「やったな陽!!」


「すごいぞ陽!!」


月衣と木島が陽の髪を掻き回す そこに義典も混ざる


「我が息子がこの年でやっと……… 育ってくれたぁぁぁぁ!!!!」


「待て親父! さすがにうざい!うざい!うざい!!」


涙を流す義典を 何故か周りの中年のおっさんらが胴上げをする

そのノリで陽も持ち上げられ 祭だからなのか 九時を回った皆のテンションは最高潮に達していた




数分後ようやく陽達は解放され


「じゃあお前ら…… もう遅いし道草しねぇで帰れよ」


「わかってるよ……」


大人の悪ノリに疲れ切った陽のセリフは弱っていた

そんな陽を気にせずに草津は追い打ちをかける


「あぁあと 喧嘩の件だが」


「「「 うっ……… 」」」


「愛美のこともあるし不問にしたい…… と言いたいところだが

周りに見られた分それは不可避なんで覚悟しとけ」


「「「 ……… 」」」


草津との真面目な会話にも関わらず 三人はヘラヘラと余裕で



「「「 さすけねぇ!! 」」」



笑い合いながら出た三人の言葉に 草津も思わず鼻で笑う



「これで思う存分 河川敷でバスケ出来るな」


「もはや停学と決まったもんじゃな」


「俺は良いことあったからもう何でもいい……」



「てめぇら…… 停学を満喫気分か!」



呆れて怒る草津は気力を失い 別れを告げて車へと戻ろうとした

その道中にいたのは天音 草津は通りすがりに天音の方を見る


「女子が一人で夜道にいたら危険だ さっさと帰れよ」


「プライベートでも他人のフリですか?」


「…………」


草津は何も言わずそのまま行ってしまった




他の場所でも 陽と月衣は長囲市出身の木島と別れようとしていた


「じゃあ二人共! 今日は楽しかったぜ」


「あぁヤナ…… 今日は本当にありがとう」


「そこまで言うなら今度おごってくれや!」


自転車に乗り 手を振りながら木島は帰っていった

陽と月衣も同じ方向へと自転車を引き 青砥地区へと帰る


「今日はいろいろあったな……」


「あぁ…… あり過ぎてヘトヘト……」


「なんで私まで……」


青砥橋を渡る陽と月衣 そして天音がいた


「女の子一人は駄目だろう……」


「まぁまぁ………」


そっぽを向く天音に二人はため息をつく

重い空気の中 最上の川に架かる橋を渡って青砥地区の街中に入り


「天音さん 家どこな?」


「住居侵入罪……」


「お邪魔しないわ!」


「私もうここでいいから! 放っといて!!」


「「 ……… 」」


そう言って天音が帰ろうとしたそのときだ


「陽ちゃんおかえりなさい!」


「千鶴…… まだ起きてたのか?」


パジャマ姿の千鶴が萌花の爺さんと一緒に散歩していた


「おじいさん…… 屋台は片づけたのかよ」


「当たり前じゃ!! 若いもんがダラダラやっとる内にパパッとな!」


千鶴は陽の腹に突進し 陽は千鶴の頭を優しく撫でる


「女の子泣かしちゃ駄目だよ!!」


「泣かせてないよ……」


そう言って千鶴は陽から離れ 天音の方へと進路を変える


「お姉ちゃん 陽ちゃんの彼女さん?」


「えぇ!?」



「違うぞ千鶴!!」



千鶴の口を慌てて抑える陽

すると天音は千鶴に顔を近づけた


「あの…… すいません天音さん」


「…………」


天音は千鶴と目が合うなり 軽くほほ笑んだ



「陽ちゃんの彼女さんはもっと可愛い娘だよ」



天音の表情はすぐに元に戻り


「じゃっ……!!」


天音は一人 自分の家の方へと帰っていってしまった


「…………」


「陽………」


「何だ?」


「天音さん狙っていい?」


「……良いと思う」



「青春じゃの~~!!」


「セイシュンじゃの~~!!」



千鶴とお爺さんを家まで送り

月衣を実家まで送った


「今日はすこだま楽しかったなぁ陽」


「あぁ…… じゃあまた学校で」


一人帰る道中 陽は振り返った こんな濃い一日はそう来ないだろう


そして


「茅野と付き合うのか~~ めぐみ…… めぐみ…… 下の名前……」


陽は急に照れ出し大声で叫ぶ



「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



自転車に跨がり 家まで暴走する陽の顔はキチガイに等しかった




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