番外編.2
更新するつもりはあったんですよ(震え声)
ただ、その、色々とぶち壊すようなヤンデレ的成分が含まれているので躊躇っていたと言いますか…。それでも読むぜ!っていう人はどうぞ。
「いつも助かっていますプリエラ」
「いえ、わたくしもギンには感謝をしていますの」
公開告白と言うかプロポーズと言うかの事件があった1か月後。
俺は、奴隷上がりでディアスタの身分のこともあって今後はパーティーに度々出席しなければならず、そのマナーを学んでいた。
マナーの先生役を買って出たのは思い人がいたのに実家の計略により結婚をしなければならないような状況に陥りかけた12人の令嬢の一人、プリエラ・ウォン・ハオラン。身分的には侯爵令嬢で、ほかにも何名か立候補してくれたのだが、身分の勝利で彼女が鞭をとり、指導をしてくれている。
そんな彼女も婚約者と無事復縁となり、近々式を挙げるという。
「今日のレッスンはここまでですが何か質問はございますか?」
「いえ、問題ありません」
「そうですの。…コホン、えっと、そのギンはアレを済ませたのかしら」
リディア皇国の侯爵家の次女である彼女は俺に対して質問を投げかけてきた。
…結婚の少し前の令嬢が興味津々なことと言えば、まぁ、アレである。
男ばかりが気になるアレのことと思いきや思いのほか女性も興味津々なのだ。
アレ…つまり初夜。
夜の大運動会とかベットの上の格闘技とか遠回しの言い方はあるが、ようは性行為。
不意打ちと言わんばかりに投げられたその質問のことを理解すると、急激に顔に血液が集まったような感覚に陥り、目をそらすにそらせず、沈黙してしまう。
「まぁ!つまり済ませたということですのね!」
「あぅ…」
一応、彼女プリエラの年齢は皇国の成人年齢の15から3つ上がり、女性の結婚適齢期内とされる18歳。この世界、と言うかこの国は国土整備がされ外科や魔法による治療もあり、平均寿命が70歳と長く、ちょうどプリエラの歳が適齢期なのだ。
社交会やこういったお茶会等での令嬢たちのそういった話題の事柄はなんというか無駄に生々しく”コウノトリが運んできた”というマイルドな表現的要素は一切なくアレにナニが入り、どんな感覚だったのかとある意味1年ほど前まで思春期の男が抱いていたイメージを打ち壊すようなことを散々プリエラは聞いて耳年間に近いようなものになっているのだろう。
「成人の儀から1年後にそういった経験をなさるということは昨今の令嬢たちの中では早い方ですわね」
「…言わないで!」
「でも、幼い子より決められていた相手同士だと成人儀の翌日には式を挙げて済ませると言いますし、愛してくれる方ですから良いじゃありませんの」
…俺、遠山吟もとい、ギン・シスダススは現年齢を厳密にいうと16歳と2月。
件の出来事は16歳を迎えたその1か月のことであり、この異世界に召喚されたのは高校したゴールデンウィーク前のことであり、西暦的に早生まれとされる3月3日が誕生日でありある。
この世界でも元の世界とほぼ暦は変わらず、気候も日本に近いものの様で、桜に似た蕾が咲く頃にプロポーズをされたのである。
異世界人がこの世界に召喚されることはあまり珍しいことではなく、25年に一度のペースで行われるような出来事であまり珍しいことではない。
また、この世界で実年齢よりも年齢が若く見える人はかなりの確率でアジア系の血を引いており、『異世系の血筋の年齢と老化の関係性の不思議』として論文を書く人間がいるレベルである。
つまり、だいぶ幼い容姿に分類される俺は食べられてしまった訳である。
「本当にギンは綺麗な体つきをしているわよね…本当に異世界系の血を引く方はずるいですわ」
「異世界でもまれな良い容姿の人がこちらに来る確率が高いと言いますから」
この世界に来る異世界人の確率的に言えば美男美女の割合が高い。
国の過去の文献を調べても、最初は醜い容姿でも最終的には美しい容姿へと変わっていく者が多い。
そんなことを言ったら、パッとしない風貌の男から顔立ちの良い女になっているのだ。”異世界人”と言う称号は本当に補正がすごい。
称号もランダムの確率で親から子に入るものだというので、俺の異世界人と言う称号は血筋上のものと周囲に伝えている。
近年では25年周期でポンポンと前回は7回目と言うこともあり、珍しくはないものの、遭遇する頻度が低いので自分が純異世界人だとばれるのは非常に厄介なことなのだ。
特に召喚を行っているのがこのリディア皇国の隣国であるアルバ王国が行っており、近年そのアルバ王国の行方が怪しいということもあって、非常にややこしい称号でもあるのだ。
「あと、ギンに聞いてみたかったことがございますの。その、吸血鬼の方に血を吸われるというのはどういった感覚なのでしょう?」
「…吸血するときに流し込まれる特殊な液体に身体の外傷を塞ぐ活動を促進する効果があって……副次効果のようなもので、その変な気分になる」
「まぁまぁまぁ!それは興味深いことを聞きましたわ!つまり、アレの時と似たものに襲われるんですの?」
「…まぁ」
「シスダスス卿も罪づくり方なのね。あ、でも吸血の際にそういった感覚に陥るということは女性から―――ああ、だから少しでもやましい感情がある場合は廃人になるという逸話があるということですのね」
関心と言うか、納得したように自己完結をするプリエラ。
ただ、その後半に含みのある言い方をして見てくるので、自分の中に何かが突っかかり、変なことを口走ってしまう。
「ご主j――あの方は、私の血が一番美味しいっていうから、他の人から吸わないって言いました!」
「そんなに嫉妬をしなくてもシスダスス卿は浮気なんてしませんわよ」
「プ、プリエラ!」
「本当にかわいらしいですわね。シスダスス卿がゾッコンなのもわかる気がしますわ」
「っ~~!!?」
その後も滅茶苦茶いじられた。
――――――――――――――――――――――――
「……おかえりなさいませ」
「ただいま。…見事に荒れてるな。またハラオンか」
帰宅後。
いつものように帰ってくる時間に玄関で正座待機をし、声をかけてくると第一声がそれである。
そのまま、荷物を預かり部屋へ持っていき、その後夕食となる。
婚約後は度々血以外の食事も取る様になり、吸血の割合も減った。
曰く、吸血でのエネルギー摂取は一日7時間ほどの活動が行えるらしいく、その分の食事を必要としないらしい。
ただ、初夜を迎えた翌日の朝は超回復があると言っても精神的に疲労するもので、アレの最中に血を吸われながらやられたので、超回復も置いてけぼりでその日の朝の吸血を勘弁してもらい、普通の食事をとって貰うと、見事に胃をつかんでしまったらしいようで、それから度々普通の食事を取る様になった。
「……」
「今日もだんまりか」
こんなにも荒れている理由を言えるわけがない。
うつむき気味に食事をとり、食器を洗い終えテーブルに戻ると、ワインセラーから取り出したであろう、一本のそこそこ値の張るものとグラスを二つ取り出してた。
今日はフォルマが食後に来るとうのことを聞いていなかったので、何かおつまみを作らなくては、と台所に戻ろうとすると、腕をつかんで引っ張られた。
仮にも元の世界の成人男性以上の力を素で持つこの世界の男に腕を引っ張られれば当然バランスを崩す。
その勢いのまま、抱きしめられしばらくすると彼が口を開いた。
「飲むぞ」
「え?」
彼が酒を飲むと言うことは”非常に珍しい行為”である。
彼と酒を飲むのは2回目。
吸血鬼は基本的に酔うことはなく、趣向品として香りを楽しむものだが、ディアスタの場合は違う。
「本音で話そう。ギンの本音を聞き出すのにお酒の力を借りるけど許してくれよ」
ゆっくりと俺を離すと、グラスに注ぐことすらせずに素手で栓を抜きワインボトルを傾け口に流し込んだ。
彼が酒を飲むと一時的に素の状態になる。
鉄仮面と自動的に変換される呪いに似たバットステータスを俺が飲まされた聖女化のものと似たように強くなる代わりに与えられらしい。
それを解除する方法が酒である。
初めて一緒に飲んだ時が初夜の際であり、鉄仮面ではなく素の自分で、言いたかったのだという。
その時にプロポーズの時の際のことを突っつくと、彼の本性がヘタレだということが分かった。
つまり、彼が酒を飲むということは本音を隠さず話をしようと言うことなのだろう。
――相変わらず、変なところで男らしい人だ。
「何か嫌なことをされたのか?」
首を横に振る。
「…揶揄われた」
「そうか。でも悪意があってやっているはないのだろう?」
「うん」
彼は素の状態だとヘタレで、目じりが下がって優しそうに見えて、実際に優しい。それは彼自身が自分自身の評価がしっかりと出来ていないが故に卑屈になっているのが原因であり、仮面で守られてばかりで自分の本当の自信を無くしてしまっただけだ。
「じゃあ―――」
「怖いんだ」
「…え?」
「――俺はお前に捨てられるのが怖いんだ」
それが、ここ最近恐れていることである。
自分程度のそこそこ整っている容姿なんて五万といる。
プリエラはああ言うもこの世界の容姿は非常にレベルが高い。
ディアスタも常に吸血をしていなければいけない訳ではない。
最近は普通の食事の割合の方が高い。
ディアスタはとても強いから自分よりも条件の良い人間だって見つけることはできるはずだ。
私の利点など、人よりも多く血を与えることのできる血液タンクに過ぎないのだ。
気が付けば、そのことは口から自然と零れて、みっともなく涙も零していた。
ディアスタ・シスダススと言う一人の人間を好ましく思うのにさほど時間はかからなかった。
元の世界に居た頃、仲良し5人組とは言われていたものの雑用と言うか便利にいいように扱われるポジション。あいつらみたいにモテはしなかった。自覚したくなかっただけで、いつも同じ景色を見ていられると思って目をそらしていたけれども、俺はいつも見下されていた。
見下されていたことを強制的に認めなくなければいけなくなったのは、あのステータスチェックの時。
――あの4人は俺のステータスを見て安堵をしたのだ。
それを必死に否定しようと努力しても、実験の痛みで気を紛らわせてもそれは晴れることはなかった。
自覚するのはもはやあいつらには自分は必要とすらされなくなっていたこと。
そのことが一番ショックを受け、再び目を開けたそこには研究者がいて、自分は役に立っているのだと思えて、うれしかった。
周りの人間が狂っていく中で自分だけが確実に成果をの残していくことに優越すら感じていた。
そんな中で、そこはつぶれて、自分を必要としてくれていた人間が死んでいった。目の前が真っ暗になった。
だが、襲撃の張本人ディアスタ・シスダススが現れて役割をくれたのだ。
『お前食事係』
と。
血が美味だったから選ばれた。
超回復なんて物のおかげで自分は役に立てるのだ。
俺は、誰かに必要とされなければ正気を保てない狂った人間だ。
役に立っていると言う肯定をしてくれる人間がいないと自分が自分だとわからなくなる。
――こんなにも壊れているけれども、役に立つから、何でもするから。
――だから捨てないで。
「大丈夫、ギンを手放す離すことなんてしない」
狂った私をそっと抱きしめて、優しくそう言ってくれた。
「私、狂ってるよ」
「かまわない」
「どうしようもないダメな女だよ」
「かまわない」
「甘やかせば甘やかすほど重い女になるよ」
「かまわない!お前の全部肯定してやるから俺のそばに居ろよギン!」
「はいっ!」
必要とされるなら、どんなのにだってなる。
あなたを離したくないから。
だから、ずっと手を離さないでください。
今世の方は報告で一時凍結した部分を9話に変えました。
更新は暫しまたれよ。
そして、この作品は完結となります。
…ちょっとギンに内緒で異世界人4人組に無双するアスやんの需要があれば書くかもしれない。