第三章-4
アッシュがカテジナの訓練の成果を見る約束をしていたので、夕食とその後片付けを終えた後、皆で部屋を出てエレベーターに乗り込む。一階のエントランスに降りてどこか適当な空き地にでも向かうのかと思ったのだが、アッシュの予想に反してエレベーターは一階分上昇しマンションの屋上に着いた。
屋上は草木が植えられて綺麗に手入れされた典雅な雰囲気のちょっとした庭園になっているのだが、なにかイベント事でもなければこのマンションの住人でも夜には滅多に上ってこないらしい。そういうことなので、普段から第七小隊の演習場に使われているのだそうだ。
一同が屋上のドアを開けてエレベーターホールから屋外に出ると、途端にむわっとした熱気が襲ってきた。
「今夜も蒸し暑いわねー」
クラリッサが男性陣の視線を気にもせずに、ミニ浴衣の襟元をはだける。マンションの中は通路からエントランスホールに至るまで快適な気温湿度が保たれていたが、それは十分に空調を効かせていたおかげらしい。この星のこの辺りの地方がアッシュの国より一足早く夏に入っているのか、それとも年間通してこのような気候なのかは知らないが、初夏の服装でやって来たアッシュには少々蒸し暑かった。シャツの袖をまくるが気休めにもならない。仕方がないので、どうにもならないことは頭から追い出すことにする。
「じゃあ、早速見せてもらおうかな。練習の成果を」
「は、はい。――す、すみません、皆さん。いつもみたいに、お願いします」
アッシュの言葉に頷いて、カテジナが遠慮がちに他の隊員たちに指示を出した。マークが代表してそれに応じる。
「では、不可視結界を張りましょう。――『インヴィジブル・スフィア』」
屋上庭園を不可視結界が覆った。高層マンションの屋上なので周囲から目撃される危険性はほとんどないと思われるが念の為だろう。それに、これで外部に魔力反応も漏れない。この星には彼らのような魔法使いはいないはずだが、それでも魔法研究を行っている機関などで偶然にでも魔力反応を感知されてしまっては、辺境警備隊としての危機管理能力が疑われることになる。
アッシュは準備をする彼らの様子を眺めていた。その足元ではチッピィが後肢で首筋を掻いている。待つほどもなく、カテジナの少し前方にその他の四人が並んだ。
「じゃ、じゃあ、いきます! ……『バインド』、四つ!」
二秒間ほど目を閉じて集中すると、カテジナは座標指定型拘束魔法を複数対象指定で起動する。四人の周囲にそれぞれクリーム色の拘束輪が三つずつ現れると、一拍後に締まって全員を拘束した。カテジナは一つ大きく息を吐くと、すぐに魔装機の操作端末を開いて彼らの拘束を解除する。
「せ、先生。ど、どうでしょうか?」
「四人も同時に出来るようになったのか。頑張ったな」
アッシュはポンッとカテジナの頭に手を置いてやった。カテジナがくすぐったそうな顔をする。ほんの一月足らず前は二人でも失敗していたのだ。多少手際が悪かろうが、なかなかの進歩と言えるだろう。
「けど、あんな感じで相手が一箇所に集まってたら、範囲指定型を使ったほうが効果的だな。まぁ、カテジナは持ってないから仕方ないけど。――そうだな。座標指定型の複数対象指定が一番真価を発揮するのは、こういうシチュエーションか。――ちょっと皆位置を変えてくれ。マークとクラリッサはカテジナの左右に、クォンは後ろに――」
アッシュの誘導で、四人はカテジナを前後左右から取り囲むように陣形を変える。
「これだと自分も巻き込んじまうから範囲指定型は使えない。必然的に座標指定型の複数対象指定を使わざるを得なくなる。――じゃ、これでやってみろ」
「え、は、はい。あ、えっと――」
アッシュの指示に、カテジナはうろたえたような声を漏らして不安げに落ち着きなく周りを見回した。悪乗りしたクォンが両手を挙げて襲い掛かるようなポーズを取る。
「ひっ、バ、『バインド』、四つ!」
カテジナがコマンドを唱えるが、今度はなにも起こらなかった。
「せ、先生……」
カテジナが泣きそうな顔で振り返る。アッシュは微苦笑して、またポンッとその頭に右手を置いた。軽くそのセピア色の髪を撫でてやる。
「それぞれの座標指定方法はなにも変わらないんだから、落ち着けば出来るはずだぞ? 大事なのは、周りを囲まれたっていうプレッシャーに負けずに冷静さを保つことだ。じゃあ、これは次回までの課題だな」
「は、はい。頑張って、練習します」
涙目ながらも、頭を撫でられて嬉しそうな顔になるカテジナ。他の四人も集まってきた。
「ダーリン、いつまでその泥棒猫の頭撫でてるの!?」
「あぁ、わかったわかった」
アッシュは先手を打って、頭撫で撫での対象をカテジナからジゼルに移してやる。それだけで、彼女の機嫌も直った。
「アッシュはなかなか厳しい教官ですね」
「そうか? 俺としては、随分優しく教えてるつもりなんだけど」
マークの感想に応じる。アッシュは『彼女』から一週間ほど魔法全般についての手ほどきを受けただけで、後はほとんど実戦と独学で学んできた為、加減がよく判らないのだ。眼鏡を押し上げて位置を調節しながら少し考える。
「まぁ確かに、飴と鞭って言うよな。厳しくしたら、なにかその分御褒美をあげないとならないか」
無意識にジゼルの頭を撫でていた手を止め、カテジナに向き直った。
「じゃあ、一応座標指定型の複数対象指定を習得した御褒美に、俺が作った範囲指定型をプレゼントしよう。自慢じゃないけど、市販のものより使い易いと思うぞ」
「え!?」
一同が一斉に驚きの声を上げて、アッシュに視線を集中させる。アッシュは少し怯んだ。
「な、なんだ? 市販のものとかちょっとカスタマイズした程度の魔法オブジェクトをコピーするのは違法だろうけど、これはベースにした魔法プログラムはあったとは言え、もはや元がなんだかわからないくらい原形留めてない俺のオリジナル魔法だぜ? それでもコピーするのはマズいのか?」
アッシュが尋ねると、マークが口を開きかける。
「い、いえ。まずいとかではなくてですね――」
その後を、クォンが引き取って続けた。
「自作した魔法なんて、勿論出来にもよるだろうけど、魔法を開発してる企業とか研究所に売り込めば、お小遣い程度じゃ済まねー額の金が入るんだぜ? もっとも、たいていの魔法使いにとっちゃオリジナルの魔法なんてのは敵に予想されてない奥の手だ。そう簡単に売ったりするやつは少ねーと思うけどなー。そんなわけだから、皆そんな代物をただで人にくれてやるってことに驚いたんだよ」
「――そうなのか?」
アッシュにとって、魔法をほぼオリジナルで自作してしまうのはわりと日常茶飯事だ。そんなことを言われても実感が湧かない。
「いまいち価値がわかんないんだよな……。まぁ、でも、師匠が弟子に自分の技を伝授するってのは普通のことだよな?」
「武道の流派なんかではよくあることよね」
意外な例えでクラリッサが同意する。実は格闘技好きだったりするのだろうか。アッシュは頷き返した。
「じゃあ、問題なしだ。だいたい製作者の俺がいいって言ってるんだから、問題なんかあるわけもねぇ。――カテジナ、手出して」
「え、あ、は、はい!」
少し呆然と大きな目を見開いて話の成り行きを見守っていたカテジナが我に返り、慌てて魔装具の指輪を着けた右手を差し出す。アッシュは自分の手袋型魔装具を着けた右手でその小さな手を握った。
「コネクト」
接続の命令を口にして、二つの魔装機をリンクさせる。魔装機の操作端末を開いた。
「こいつ――と、ついでだ、こいつもやろう。これは単体目標用だけど、使い勝手がいいんで重宝してる拘束魔法だ」
「ふ、二つも!? あ、あの、申し訳ないです!」
ただでさえ控え目なカテジナが酷く恐縮したように身を縮める。アッシュは優しげな笑みを浮かべてみせた。
「いいんだよ。俺が可愛い教え子にプレゼントしたいって言ってるんだからさ」
「……さすが、あたしのダーリンは気前がいいわねー」
少し呆れたようにジゼルが言う。
「それから、用が済んだらさっさとその泥棒猫の手を離しなさい」
「おまえ、あんまりカテジナをいじめるなよ?」
苦笑しつつ、アッシュはカテジナから手を離した。
「じゃあ、早速使い方を簡単にレクチャーするか。――カテジナ、魔装機の端末開いて」
「は、はい」
カテジナの魔装機の操作端末のモニターを覗き込んで、指し示しながら説明する。
「これが範囲指定型で、これが単体目標用な。あぁ、コマンドになるオブジェクト名はうちの国の言葉にしてあるから、後で好きな名前に変更してくれ」
「は、はい……」
一緒にモニターを覗き込んでいるので顔の位置が近い。カテジナは頬を染める。そんなことには気付かず、アッシュは話を続けた。
「あと、カスタマイズもな。好きにいじってくれて構わない」
「は、はい。でも、わ、わたし、まだ、カスタマイズなんて、全然――」
「あ、お、俺も解析させてもらっていいか?」
クォンが首を突っ込んでくる。自作魔法に興味があるらしい。
「ああ、構わねぇよ。ていうか、それならカテジナのカスタマイズを手伝ってやってくれ」
アッシュは、第八小隊でサーニャがアリーセとエリカの魔法のカスタマイズを手伝っているという話を思い出してそう言った。クォンに任せておけば多分安心だろう。
「おう。引き受けたぜー」
「でも、解析した俺の魔法プログラムをどっかの企業に勝手に売り込んだりするのは勘弁してくれよ?」
一応、釘を刺しておく。
「ななな、なに言ってんだよ? そそ、そんなことしねーよ?」
「……するつもりだったのか?」
動揺するクォンを見て、思わず突っ込む。
それは置いておいて、諸注意が終わったのでアッシュはカテジナの魔装機の操作端末の前から身体を離した。
「さて。それじゃ悪いけど、皆最初みたいに一箇所に集まってくれるか?」
その指示で、ジゼルたち四人はカテジナの少し前方に並ぶ。アッシュはカテジナに向き直った。
「この範囲指定型の対象範囲は、直径約五メートル、高さ約三メートルの円柱状だ。底面の円の中心の座標を指定して起動する。まぁ頭の中で、この辺り、って感じで円を描いて大雑把に指定することも出来るけど、あんまり正確にはならないからよっぽど急いでるときでもなければお勧めはしないな。――じゃ、あの四人を対象範囲に含むようにして起動してみろ」
「は、はい。――『ハガネノアギト』」
たどたどしくカテジナがコマンドを唱えると、四人の足元と頭上に直径五メートルほどのクリーム色の魔法陣が出現し中心に向かってバクンッと閉じる。その中にいた四人はまとめて拘束されてしまった。すぐにカテジナが拘束を解除する。
「どうだ?」
「は、はい。ざ、座標指定型の複数対象指定に比べて、とても、楽です」
感心したような顔で使い心地を答えるカテジナ。
「何人かが固まってるときはこれを使うといい。ただし、上下の拘束魔法陣が出現してから完全に閉じ切るまでに約二秒のタイムラグがある。予想されてたら簡単に抜けられちまう隙だ。だからこれを使うときは、相手に気付かれない状況で起動するなり、不意を突いて使うなり、運用に気を配らないといけないぞ」
「は、はい。せ、先生」
解説するアッシュに、カテジナが真剣な様子でコクコクと頷く。
「じゃあ、次は単体目標用のほうな。コマンドを唱えて右手を振ってみろ」
「は、はい。――『トウカノウタゲ』」
またカテジナがコマンドをたどたどしく唱えて右手を左から右に大きく振ると、その右手からクリーム色の蔓がするすると伸びた。
「そいつは右手の動きに連動するように設定してある。効果的な射程距離は三から五メートルぐらいか。相手が近接攻撃に入ろうと近付いてきたところへ一手先にカウンターで使ってやると、成功率が高くなるかな」
アッシュの説明を聞きながらカテジナは右腕を動かして、五メートルほどに伸びた蔓の動きを確かめているようだ。
「なにかに接触すると、そこから巻き付き始める。適当に誰かに当ててみろ」
「は、はい。せ、先生」
カテジナは本当に適当にクリーム色の蔓を振り回した。狙いもなく振り回された蔓はジゼルに当たり、その身体に巻き付き拘束する。
「……正妻を拘束しておいて、その隙になにするつもりなの!? この泥棒猫!」
「あ、わ、す、すみません、小隊長!」
慌てたカテジナがあわあわと両手を振り回すと、その右手からプツリと蔓が切り離されてしまった。
「あたしを拘束したままで、両手を自由に!? まさか、このまま葬り去るつもり!?」
「あぁ、そいつは拘束した後、手から切り離せるようにしてあるんだよ。拘束した相手をいったん放っておいて、別の敵の相手をしたりする為にな」
サスペンスドラマの見過ぎのようなことを言っているジゼルを放っておいて、アッシュは説明する。しかし、パニックを起こしているカテジナには聞こえていないようだ。アッシュは溜め息を吐く。
「落ち着け。解除操作は他の拘束魔法と変わらないから」
「あ、は、はい!」
先生に声を掛けられたことでようやく少し落ち着きを取り戻したカテジナが、魔装機の端末を操作してジゼルの拘束を解除した。アッシュは先手を打ってジゼルの頭を撫でてやる。
「偉いな、ジゼルは。可愛い部下の為に、自らを実験台にするなんて」
「え? あ、うん……」
撫でられて、ふにゃーっと表情が弛んでいくジゼル。クラリッサがわざとらしく驚愕した顔で大袈裟な驚きのポーズを取った。
「扱いに慣れてきてる!? アッシュ、なかなか侮れないわね……」
「俺だって学習するんだよ。――さて、もう一つの特徴だ。誰か、魔力剣で今の蔓を切ってみてくれないか?」
アッシュは苦笑交じりにクラリッサに応じると、話を『藤花の宴』の使用法レクチャーに戻す。その呼び掛けにクォンが立候補した。
「なんかわからんけど面白そうじゃねーか。俺がやるぜー。――『ブレイド』」
クォンが魔力剣を起動する。魔力光は一般的な白だ。
アッシュはジゼルを撫でるのを止め、カテジナに向き直った。
「じゃあ、カテジナ。もう一回だ。クォンを狙え。――クォンは魔力の蔓をその剣で切る。いいな?」
「はいよー」
「は、はい。い、いきます。――『トウカノウタゲ』」
意外に鋭くクリーム色の蔓がクォン目掛けて振り下ろされる。
「うぉっとー!」
それを、クォンが危ういところで切り払った。すかさず、アッシュが指示を飛ばす。
「カテジナ、右手に魔力を流し込め!」
「は、はい!」
カテジナが、んっと力むと右手から伸びているクリーム色の蔓が切られたところからまた伸び始め、元の長さに戻った。カテジナはそれを今度は右から左へと振るう。
「うわっとー!」
また、クォンが危ういところで切り払った。それでも、カテジナはまた魔力を流し込んで蔓を伸ばしてクォンを狙う。
「うわったー!?」
「……こ、これ、面白い、です」
切られても切られても蔓をまた伸ばして、何度もクォンを狙うカテジナ。
「わっ! っと! ちょっ! 待っ! ――」
何度目かの攻防で遂にクォンは蔓に巻き付かれてしまった。カテジナは、はぁはぁと荒い息を吐いている。アッシュは苦笑して、ポンッと彼女の頭に手を置いた。
「維持するだけよりは余程魔力を使うからな。あんまりやり過ぎると、そうなる」
「……は、はい」
「今みたいに強引に何度もやったとしても、相手の剣の腕のほうが上だったらいつまで経っても拘束出来ずにこっちの魔力が消耗していくだけだ。引き際はちゃんと判断すること」
「……は、はい。すみません」
「まぁ、これで使い方の感覚はだいたいわかったろ。あとは実戦ではどの魔法をどのタイミングで使うか、それを見極めることだ。と言っても、こればっかりは一朝一夕にどうにかなる問題じゃない。経験を積むしかないな」
「は、はい。御指導、ありがとうございました」
カテジナがアッシュに敬礼する。
「おーい、そこの師弟。いい加減、この拘束解除してくんねーか? 構造式解析して解除してもいいけど、見たこともねー構造式だから時間掛かりそうなんだよ」
拘束されたままのクォンが、情けない声を掛けてきた。
「あ、す、すみません!」
慌ててカテジナが端末に指を走らせる。その様子を眺めやって、クラリッサが両手を挙げて伸びをした。
「んー。とりあえず、今日の訓練はお仕舞いかしら?」
「ああ、そうだな。こんなとこにしておこうか」
アッシュが応じる。それを聞いてクラリッサがにっこりと笑った。
「それにしても、ホント、今夜も暑いわねー。アイス食べたくなっちゃったわー。ねぇ、ジゼル。買ってきてくれない?」
ジゼルが頬を膨らませる。
「上官に使い走りさせようって言うの? そんなのはクォンにでも――」
「あー、でも、女の子の夜道の一人歩きは危険ねー。アッシュ、一緒に行ってあげてくれるかしら?」
「行きましょ、ダーリン!」
文句を言いかけたジゼルだったが、その言葉でいきなり真剣な顔になって素早くアッシュの腕を取った。アッシュは苦笑するしかない。クラリッサの意図は明らかだ。買い物にかこつけて二人で夜の散歩をしてこい、というのだろう。
「お客様にそんなことをさせるわけにはいかないでしょう。付き添いなら僕が――」
言いかけるマークの脇腹を、こういうことにはホント鈍いなこの人は、という顔でクォンがつつく。
クラリッサには先ほどジゼルの怒りを静めてもらった恩があった。ここは彼女の計画に乗っておいてやるべきか、と苦笑混じりに思う。
「ああ、わかったよ。俺とジゼルで行ってくる。――でも、俺のこの服装で外に出たら目立つんじゃないか?」
「服は僕のを――、クォン、お貸しして差し上げなさい」
言いかけて、マークは言い直した。アッシュが拗ねる。
「――今、身長見たろ?」
「あー、まぁ、その……」
成人男性でその上長身のマークの服では、小柄な少年であるアッシュには大き過ぎる。同年代で中肉中背のクォンのものでも少し大きいくらいだ。
「まぁ、服はそれでいいとしても、この星には俺みたいな黒髪はいないんだろ? 帽子とかで隠したほうがいいのか?」
「あ、それは大丈夫よ。確かにこの星の人たちの髪の色は皆淡い色だけど、濃い色に染めてる人もいるのよ。ちょいワル系って言うの? そんな感じで。リッサやクォンは、そういうことにして誤魔化してるわ」
尋ねるアッシュにジゼルが説明する。アッシュの国で黒髪を脱色して金髪にするようなものなのかもしれない。
「エルロー通りのフォティッツがいいわね」
「うん。フォティッツね?」
クラリッサのリクエストをジゼルが復唱する。おそらくその店は適度に遠く離れているのだろう。
「じゃ、ダーリン、行きましょ!」
「待て待て! 着替えねぇと! ていうか、ダーリンって言うの止めろ!」
ジゼルはアッシュの腕を引っ張って、エレベーターホールへ続くドアへと向かった。




