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身分違いの朝食係はもう辞めます、辺境公爵家で病人食を作ります。  作者: 小竹X


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第46話 ガレア商会の最後の荷

秋の雨が続いた日、北門に古い商標を焼き消した荷車が入った。積まれていたのは乾燥薬草と蜂蜜の壺である。荷札には新しい商会名が書かれていたが、壺の紐の結び方を見たリディアは、手を止めた。


 ガレア商会のものだ。


 正確には、王都で処罰を受けたガレア商会の残り荷を買い取った小商人の品だった。北境の冬前に薬草は貴重である。捨てるのは惜しい。だが、出どころを隠した荷をそのまま使うわけにはいかない。


 リディアは門番に頼み、荷車を食養院の裏庭へ回してもらった。小商人は青ざめていた。


「夫人、私は横流しをしたわけではありません。王都の競りで正規に買いました。書類もあります」


「責めるために呼んだのではありません。確かめるためです」


「それでも、ガレアの名がつけば誰も買いません。荷を捨てれば、うちの冬越しができない」


 雨が庇を叩いた。リディアは壺の蓋を開けた。甘い香りが広がる。前に王宮で見た花蜜湯ほど強くはないが、香りをごまかすための香草が混じっている。


 ネリが横から小さく息を吸った。


「これは、苦味を隠していますね」


「うん。全部が悪いわけではない。けれど病人食には使えない」


 小商人は唇を噛んだ。


「では廃棄ですか」


「分類します」


 リディアは、庭に机を三つ並べさせた。一つ目は食養院で使えるもの。

 二つ目は健康な人の嗜好品として、産地と検査日を明記すれば売れるもの。

 三つ目は煎じても香りが濁り、腹を壊すおそれのあるもの。


 雨の中、炊事係と薬師が葉を広げ、茎を折り、匂いを確かめた。湿ったものはすぐに別にした。蜂蜜は薄く湯に溶き、口に含まず香りと濁りを見た。


 小商人は初め、ただ立っていた。やがて彼は、袖をまくって葉を並べ始めた。


「……この結び方をした荷は、古い棚にあった品です。競り人は新しいと言いましたが、たぶん違います」


「それを記録してください」


「私が書くのですか」


「あなたが買った荷です。あなたが次に買わないための記録です」


 彼はしばらく黙ってから、借りた鉛筆を握った。夕方には、三つの山ができていた。使えるものは思ったより少ない。嗜好品として売れるものは半分ほど。廃棄は荷車の底に重く残った。


 エルヴィンが裏庭に来たとき、小商人は雨に濡れたまま頭を下げた。


「公爵閣下、処罰は受けます。ですが、できれば検査の仕方を教えていただきたい。王都では、安く買って高く売る者だけが生き残ると思っていました」


 エルヴィンはリディアを見た。リディアは小さくうなずく。


「検査の講習に参加してください。合格したら、北境の市場で売ることを許可します。ただし、荷札を偽れば二度目はありません」


 小商人の肩から力が抜けた。


「ありがとうございます」


 ガレア商会の最後の荷は、復讐の火で焼かれなかった。けれど、名前を変えれば済むことにもならなかった。


 葉は葉として見られ、壺は壺として調べられた。そこに嘘が混じれば、冬の胃を痛める。だから、リディアは許すものと許さないものを、同じ机の上に並べた。


 夜、廃棄する薬草を焼く匂いが庭に漂った。エルヴィンは窓を閉めながら言った。


「優しすぎると言われるかもしれない」


「売る道を残したからですか」


「ああ」


「でも、道を残さなければ、次は隠れて売ります。見える場所で乾かし、見える帳面に書くほうが、台所には安全です」


 彼は少し笑った。


「君は、鍋だけでなく商人の胃まで整えるのだな」


「そこまではできません。けれど、嘘を飲み込む市場にはしたくありません」


 リディアは焼け残った灰を見た。王宮で焦げた粥の匂いを思い出しても、もう胸は痛むだけではなかった。


 焦げたものを見て、次の火加減を変える。それが彼女の仕事だった。

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