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身分違いの朝食係はもう辞めます、辺境公爵家で病人食を作ります。  作者: 小竹X


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第40話 朝食係たち

結婚から一か月後、食養院には第一期の修了式が開かれた。受講者は十五名。


 城の厨房番、兵舎食堂の係、村の世話役、王宮から派遣されたネリ、そして慈善厨房から参加したミレーヌもいた。


 修了式といっても、華やかな証書を渡すだけではない。一人ずつ、実技がある。冷えた人への湯。胃を壊した兵への粥。咳のある子どもへの煮林檎。食べたがらない老人への少量の麦湯。薬草棚の札分け。記録の書き方。


 リディアは見守る側にいた。以前なら、危なっかしい手つきを見るたび、自分で代わろうとしただろう。今も指先はうずく。火が強い、塩が早い、湯が熱い。けれど、すぐに口を出さない。


 学ぶ人には、失敗しないための小さな揺れも必要だ。トマは粥の火を見事に整えた。


「泡が小さいうちに待ちます。焦ると焦げます」


 彼はそう言い、周囲を笑わせた。ユアンは携行食の講習を担当した。


「干し肉を隠れて食べるより、粉団子を練った方が楽です。経験者が言うので間違いありません」


 ミレーヌは、子ども用の煮林檎を作った。最初の頃より甘みは控えめで、香りも弱い。彼女は緊張しながら器を差し出した。


「病人用ではありません。咳が軽く、食欲が戻り始めた子ども用です。食べた後に胸が詰まるようなら量を減らします」


 リディアは頷いた。


「用途が分かれています。よくできています」


 ミレーヌの顔がぱっと明るくなり、すぐに泣きそうになった。ネリは薬草棚の管理を発表した。


 王宮で作った新しい札の写しを持ち込み、北境の棚と比べて改善点を話す。以前はリディアの後ろを走っていた少女が、今は自分の言葉で説明している。


 リディアは胸が熱くなった。朝食係は、もう一人ではない。


 修了式の最後、エルヴィンが短い挨拶をした。


「あなた方は、派手な魔法を学んだわけではない。だが、冷えた朝に湯を出し、食べられない者へ食べられる一口を作る技術は、北境の命を支える。誇りを持ってほしい」


 受講者たちの背筋が伸びた。リディアは彼の横で、静かに頷いた。


 その後、全員で同じ粥を食べた。修了証の代わりに、一人ひとりへ小さな木匙が渡される。持ち手には名前が刻まれていた。セラの木匙を元に、北境の職人が作ってくれたものだ。


 ネリは自分の名をなぞった。


「名前があるって、不思議ですね」


「そうね」


 リディアは自分の木匙を握った。


「でも、とても大事です」


 式の後、食養院の入口に新しい板が掛けられた。朝食係たちの記録。


 そこには第一期生十五名の名前が並ぶ。王宮の隅で、名前も役職もなかった仕事が、今は人を育てる名前になっていた。


 リディアは板を見上げ、母に見せたいと思った。そして、母はきっと、静かに笑うだろうと思った。

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