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25.出発後のエルドレドでは(ナタニエル)

気持よく目覚めたと思えば、すぐに侍従が部屋に入って来た。


「朝から何の用だ」


「……本日、昼の時間にオードラン公爵令嬢は帝国に向けて出発いたしました。

 殿下からの手紙は間違いなくお渡ししました」


「ああ、そうか。リンネアが出発する日だったか。

 何か言っていたか?」


「いえ、特には」


リンネアはアンジェラの代わりに帝国に行くことになって、

その重圧に恐れをなして倒れたと聞いていたが。


あの生意気なリンネアでも皇太子妃になるのは無理なのかと思えば、

いつものむかつきがすっきりするような気持ちになった。


俺のすることなすこと反対して、アンジェラのことも可愛がろうとしない。

あいつは俺の妃になるつもりがあるのかと言いたくなる。


帝国に向かったのなら、しばらくは王宮には来なくなる。


まぁ、アンジェラの代わりになどならないだろうから、

帝国に拒否されて送り返されることになるだろう。


アンジェラも少し拗ねただけで、本気で戻って来たのではない。

皇太子が悪かったと言って迎えに来てくれるのを待っているのだ。


あんなに可愛らしいアンジェラに試験などさせようとするのが悪い。

失うかもしれないと思えば、撤回して大事にするようになるだろう。




次の日、アンジェラとお茶を楽しんでいると、

文官長が険しい顔で書類を運んできた。


「ナタニエル様、もう一か月も書類が滞っています。

 さすがにこれ以上は……」


「そんなにか?」


「はい」


思い返せば、アンジェラが帝国に行ってしまった後、

さみしくて何もする気にならなかった。

その間に仕事が溜まってしまっていたのも仕方ない。


「しょうがない。仕事をしてくるよ」


「ええ?アンジェラと遊びに行ってくれないの?」


「これ以上仕事を放棄すると後がめんどうだからね。

 アンジェラは買い物にでも行って楽しんでおいで」


「はぁい。わかったわ。お仕事頑張ってね」


「ああ」


いつもながらアンジェラは物分かりがいい。

俺を困らせるようなことはせず、たいしてわがままも言わない。


リンネアにアンジェラの十分の一でも可愛げがあればよかったのに。


いつ見ても無表情で、小言しか言ってこない。

お前は女官なのかと腹立たしく思う。


王太子妃になるのなら、細かいことは気にせず、

俺の言うことに従って微笑んでいればいいだろうに。


執務室に入ると、机の上に書類が積みあがっていた。

文官長が呼びにくるのも当然だった。


ため息をつきながら書類をめくる。


王太子の仕事を手伝う側近をつければいいのだが、

高位貴族の令息たちはなぜかリンネアを庇おうとする。


もう少しリンネア様を大事にしてください、

リンネア様に優しくできませんか、などと言って来るから、

ついいらだって解雇してしまった結果、一人もいなくなってしまった。


それでも俺一人で仕事ができるのだから、父上たちも何も言わない。

国王になるまでに宰相になれる誰かを見つけられれば問題はないはずだ。


半分ほど書類を片づけた時、ドアがノックされた。


「誰だ?」


「……ナタニエル様、私です」


「なんだ。レイラか。久しぶりだな」


「ええ……しばらく体調がすぐれなくて」


「ふうん」


入ってきたのは同じ学園に通う子爵令嬢のレイラだった。


こげ茶色の髪と琥珀の目。顔は平凡だが、身体つきは大人びている。

性格も明るくて開放的で、遊ぶのにはもってこいだった。


アンジェラのことがあって忘れていたけれど、

もう二か月近く会っていなかった気がする。


学園も休んでいたようだが、そんなに体調が悪かったのなら会わなくてよかった。

大事な身体に変な病気を移されても困るからな。


「どうして休んでいたと思います?」


「病気だったのだろう?もう治ったのか?」


治っていないのなら帰らせようと思い聞いてみれば、

レイラはふふふと楽しそうに笑っている。


病気には見えないから大丈夫だろうが、

機嫌が良すぎるのも気持ち悪いな。


「リンネア様が帝国に行ったと聞きました。

 ナタニエル様との婚約も解消されたと」


「いや、俺は解消してないぞ」


「え?」


「どうせすぐに戻って来るからな。俺は何も署名していない。

 議会が解消させたんだが、本人が認めていない場合はすぐに婚約は復活できる。

 戻ってきた時に再婚約となるとめんどうだから、そうしたんだ」


「え……リンネア様は戻って来るんですか?」


「あいつが皇太子妃になんてなれるわけないだろう。

 すぐにアンジェラが呼び戻されることになる」


「……そんな」


なぜか落ち込んだ様子のレイラに、

そういえばこいつはリンネアを嫌っていたなと思い出す。


「お前はリンネアが嫌いだろうが、王太子妃になれる身分の者が他にいないんだ」


「わ、私がなります!」


「は?」


「私のお腹の中にはナタニエル様の子がいます!

 リンネア様がいなくても、私が王太子妃になりますから!」


思わず書類から顔をあげて、まじまじと見る。

こいつは何を言っているんだろうか。


「ずっとナタニエル様が可哀想だと思っていました。

 好きでもないリンネア様に行動を縛られて……。

 私ならナタニエル様を幸せにできます!」


「……何を言っているのかわからないんだが、

 とりあえず身ごもっているということなのか?」


「はい!」


「で、産むつもり?」


「……え?」


「子爵は父なし子を産んでもいいと認めているのか?」


平民だと父なし子もめずらしくないと聞くが、子爵家もそうなのだろうか。


生まれてきた子は貴族として認められないが、

それでも養っていくだけの財力はあるのだろうか。


「え……?父なし子?この子はナタニエル様の子ですよ?」



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