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酒場従業員(3)




目が覚めると少女は姿を消していた。

いつもと変わらぬ天井、古びたベッド、お気に入りの小さなソファ…部屋を一通り見回したが、少女どころか彼女の痕跡すらない。


「…夢だったのかしら」


小さな呟きは静かな部屋に吸い込まれていった。





「おい、ボーっとしてないで4番テーブル頼む!」


「は、はい!すみませんオーナー!」



遅刻はしなかったものの、今日の私の働きは酷い有様だった。料理を運んでいても、ふとした瞬間に昨夜の出来事を思い出してしまう。


少女は紳士のように私を優しくリードし、流れるようにベッドへと誘導した。そして気付けば私は彼女に身を委ねていたのだ。…遊びである事を了承して。


遊びにするには勿体ないくらい幸せな時間だったな、と少し後悔したものの、彼女なら許せてしまうから憎らしい。



「いけない、仕事仕事…!」



相変わらず混雑した店内を走り回り、なんとか雑念を振り払う。


ふと聞き覚えのある声が私を呼んだ。



「おい姉ちゃん!注文こっち!」


「へ!?あ、はい!」


酒の影響で嗄れたその声に、一瞬ビクリとしてしまった。

相手が昨夜酔い潰れていた迷惑客だったからだ。



「これと同じのあと2つな。それと」


「はい?」


「俺きのう随分酔っ払っちまってよ、どうやって帰ったか覚えてねぇんだ。店で姉ちゃんに迷惑かけなかったか?」


「いえいえ!問題ありませんでしたよ」


少々悩んだが、男の申し訳なさそうな顔に免じて許した。


「そうかい、それなら良いんだ」


ニカッと笑う男は昨夜の少女とのやり取りを覚えていないようだ。

安堵から小さい溜息が出る。これなら彼女がまた店に来ても大丈夫だろう。



「でももう飲み過ぎちゃダメですよ!身体壊しちゃいますから」


「分かったよ。ありがとうな」



男と話し終えて再び仕事に戻りつつ、私は少女を探した。店内を見る限りまだここへは来ていないようだ。

昨夜掲示板の依頼をいくつも引き受けていたから、今はあちこち駆け回っているのだろう。



本人の話によると、彼女は女勇者なのだそうだ。

半信半疑ではあるが、確かに昨日彼女が受けていた依頼が並の冒険者では歯が立たないものばかりだった事を思い出すと、信憑性は増してくる。勇者でもなければ掲示板の使い方も知らなかった少女にこなせるとは思えないのだ。



でもやっぱり心配だなぁ。怪我してないと良いけど…


色々思い出す内に、彼女が恋しくなってしまった。今日もまた誘ったら部屋へ来てくれるだろうか。



カランコロン、と店の扉が開く。


「いらっしゃいませーーー、あっ」


入り口には昨日と変わらない姿の女勇者がいた。

良かった、無事だったんだ。



「依頼が終わったから報酬を貰いに来たの。そうそう、昨日はごちそうさま」



優しく微笑む女勇者に、従業員という立場も忘れて駆け寄る。今日一番の、とびきりの笑顔で。



「お疲れ様です!報酬、今お持ちしますね」








何で書き溜めた文ってすぐ消えてしまうん…?


もうストックないぽよ~~~




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