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異世界で命のせんたくをすることになりました。  作者: fuminyan231
2 となりまち
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おおいそがしのたびだち

途中から視点が変わります。◇から変わります。

 「ふわあ。ウェズデクラウスがもうあんなに小さくなってるよ♪」

「本当だ。かなり離れてたんだ」


私達は今、ザックレーエズ街道を北上している。いきなりな話だが、もう旅を始めているのだ。例の件で私達が目立ちすぎた事もあって、ウェズデクラウスでの行動に支障が出そうな感じがしたらしい。


本来は冒険者ギルドで依頼を受けて、隊商の護衛をしながら移動しようと考えていたのだけど、それも断念した。


「根掘り葉掘りされながら護衛も無いでしょ?」


アークラウス男爵領の中では一番の大事件だったわけで、行き交う行商人や隊商にとっては他人事でもない。おそらくギルドでもそういった護衛の仕事は多くなってるだろうけど、余計な詮索をされる方が面倒だと思ったのだろう。ノーリゥアちゃんは、さっさと旅立つ事を決めた理由はそんなところだ。


取り急ぎ、関係各所にご挨拶に伺う。ウェイバール伯父様の所で、伯父様に頭を撫でられ、ロザリンド様に抱きつかれた。お元気でと言うと、今度は家にも泊まっていらっしゃいと涙ぐんだままに仰ってくれた。是非ともと返事を返すわたし。


「お調子者だから、手綱を取ってやってくれ。年下の子に言うことじゃないけどな」


ヤゼンさんはイリーナの事を頼んできた。ああ見えてしっかりしてるのに、親にとっては子供は子供なんだと再確認。


「イリーナもジュンも、フランも。体に気を付けてな」


ハイヤール老はそんな事を言って、一袋のココアを渡してくれた。ご馳走様です。


「ジュンに迷惑かけないでね」

「あーうーぅ」


ソリシアさんはイリーナにそういって私にファリナちゃんを抱かせてくれた。何だかんだ言っても心配されるイリーナをちょっと羨ましく思ってしまった。戻ってきたら、小さなファリナちゃんがどれくらいになってるだろうか。小っちゃなぽよぽよとした手を触るととても幸せになれた。大きくなると言えば、レガン君は私に謝ってきた。


「ごめんなさい。ジュンが悪い訳じゃないのに、ビビっちゃって」


仲直りの握手をしてくれたその手は、私よりも小さいけどゴツゴツしてる男の子の手だった。


「そっか、もう行くのか。ちょっと更新してからにしろよ」


オルガさんは、そう言って測定板を使って私たちの状態を教えてくれた。印字された紙を見る私達はそれぞれの能力やクラスレベル、技術(スキル)なんかを確認していた。


「本来は登録初日に見せる筈なんだけどな。まあごたついてたし。お前らの事だから心配はしてない。さっさと戻れよ、ぐらいかな?」


オルガさんはさばさばと言って送り出してくれた。フランと握手するときに少し照れていた。フランの方は全く動じてないので少し憐れな気もする。


「お嬢様、私のクラスなんですが…」


フランが自分のシートを見せてきた。どれどれと見てみると、なんと[戦士]は相変わらず(ゼロ)なんだけど、その下に[拳闘士(グラップラー):1]とあった。まさかの他クラスの取得と成長だった。そう言えばここんとこのフランは素手でライデル殴ったりオルガさん殴ったりしてた。そのせいなのかな?


「あー、そっちが伸びちゃったのか…クラスレベルが勝手に上がっているのは、その経験を積んでいた証だから」


ノーリゥアちゃんが言うには、拳闘士(グラップラー)は伸びやすいものの防具の制限とか武器が素手とか棒状の武器に限られるらしい。つまり、戦槌(メイス)を使っても伸びてしまう。防具の条件とかをクリア出来る[戦士]クラスと比べて防御面で不安が出るが、極めていけばやはり、強くはなるんだそうだ。


「この『EXP』っていう数字は何なの?」


私は3045となっているけど、フランは2012、イリーナは1504となっている。


「それは、あんた達が今までで得てきた経験が数値化されたものよ。具体的には言えないけど、何らかの経験を積む機会を正しくこなしたか、こなせなかったか。倒した敵が強かったか弱かったか。数はどれくらいか。そんなモノがこの数値で表してあるの」


むう。経験の数値化…。誰がどんな基準で決めているのやら。


「うえー、ジュンの半分しかなーい!やり直しを要求するぅー」


ほら、イリーナが拗ねちゃった。頭を抱えてノーリゥアちゃんが答える。


「それを決めてるのが神様なのかどうかは分からないわ。ごねても増えやしないしね」


人智を越えた存在から与えられるのか。私もあまり面白くはないけど、文句言っても始まらないし。


「EXPはクラスを取得するのに使えるわ。フランみたいに自然に取得する場合もあるけど」


ほう。どうすれば良いのかな?


「冒険者ギルドなら『測定板』その下位の『更新板』で出来るし、魔術師が(能力確認(ステータスチェック))を使えるなら、何処ででも出来るわ」


あれ、そんなの覚えてたっけ…覚えてた。何に使うのか分からないから確認してなかった。

ノーリゥアちゃんは私を連れて『更新板』のある部屋まで来た。部屋は衝立がいっぱい有り、それひとつ毎に小さな石板が置いてある。その内の一つに座り、私の手を石に触れさせる。そうすると、魔術の管理画面(コンソール)みたいなものが出てきて、そこに『クラス』『技術(スキル)』と書いてある。


「ここで、クラスを選択。すると取得可能なクラスが列挙されるわ」


ふむ。私の持っているクラスは[戦士(ファイター):1][野伏(レンジャー):1][魔術師(メイジ):1][賢者(セージ):2]。戦士の所には[1500]と書いてある。賢者も同じく[1500]だ。野伏は安くて[1000]、魔術師は一番高くて[3000]とある。

持っていないクラスも下にいっぱい書いてある。[僧侶(プリースト)][1000]、[吟遊詩人(バード)][500]、[斥候(スカウト)][1000]、[拳闘士(グラップラー)][500]。

新しいクラスを得ることも出来るけど、試しに[僧侶(プリースト)]を選んでみる。すると、横に空欄が出来て下にいっぱいずらっと神様の名前が出てくる。キョウガイシ、ジョウコウカン、セイサイゴク、ゴーカシャ、アソーギ、?。


?、はてな?


「ノーリゥアちゃん、ノーリゥアちゃん」

「ノーリゥアちゃん呼ぶな!」


ゴチン。うぐ、体罰反対。でも、聞かないと。


「ねえ、このはてなって何?」

「うん?え、なにこれ」

「なんかおかしいよね?」

「うおーい、オルガー!」


行ってしまった。フランとイリーナも席を離れてこっちに来た。


「どうかしましたか?」

「なに騒いでるの?」

「いや、この神様の中に『?』っていうのがあってね」


二人に言うと、自分の方で確認してみたらしい。でも、二人にはそんなのはなくて、五柱の神しか書いてなかった。


「なんだよ、エラーだって?」


さっき別れを済ませた筈のオルガさんが駆り出されてきた。彼以上の知識を持つ人はここにはいないらしい。色々調べた結果、私のだけに出る間違いだそうだ。


「どうせ僧侶は取らないだろうけど、何が起こるか分からんからな。選ばなければ問題はないはずだ」


原因の追求はしておくと約束してくれた。師匠レベルの人なら何か分かるだろうとの事だが、果たしてそうなのか。何となく解明はされない気がする。


それはともかく。今回、私は[戦士(ファイター)]を上げることにした。高い魔力のおかげで、魔術師はなんとかなりそうだけど、身体面の弱さが際立っている。せめて攻撃を避けるのくらいはしたいと思う。EXPは1545に減ったけど、[戦士(ファイター):2]になった。クラスレベルは2のままだ。


「『SKP』って数字があるわよね。それはさっきの経験と同じようなものだけど、技術(スキル)に回すモノよ」


私の場合、取得済みなのは魔術系統の技術(スキル)が三つ。[詠唱隠蔽(ハイドキャスト)]と[遅延魔術(ディレイドマジック)]。後は、[無詠唱(クイックキャスト):(小火弾(ファイアーボルト))]…あれ?


「ノーリゥアちゃん、あのさ」

「だから、ノーリゥアちゃん言うな!」


ゴチン


「ええっ?[無詠唱(クイックキャスト)]って呪文一つ一つで分かれるの?」

「そうよー。でなきゃみんな詠唱なんかしないわよ」


なんと…ああ、だから[短縮詠唱(ショートキャスト)]なんて技術(スキル)あるのか。こっちは一つで全ての呪文に対応してる。詠唱を短縮すると何が有利になるのかと言うと、詠唱以外の行動を少しだけ可能になるという利点だ。

位置を少しだけ変えたり、武器を捨てて抜いたり。体勢を変えながらとかも出来るようになる。

攻撃をしたりするのは無理だけどね。それは[行動詠唱(デュアルキャスト)]になる。

こちらの技術(スキル)は、呪文詠唱を除く全ての行動が同時に可能になる。つまり、詠唱しつつ攻撃をしたり、武器を鞘に納めて他の武器を装備したり。弓や弩での狙撃中にも唱えられるようになる。

無詠唱(クイックキャスト)]は、単一の呪文に限ってはこの[行動詠唱(デュアルキャスト)]に近い。ただ、呪文はすぐに発動するし、詠唱無しなので沈黙結界に囚われていても問題なく使える。

対して[行動詠唱(デュアルキャスト)]は呪文の発動に詠唱を必要とするので、沈黙結界内だと呪文は使えない。もっとも、これは自身が目標になってなければ移動して抜ければ問題はないけどね。


かように、色んな技術(スキル)がある。魔術系に限ってはこんな感じだが、戦士系、斥候系、野伏系、賢者系、僧侶系、吟遊詩人系、拳闘士系とクラスに合わせて色々ある。


その他の技術(スキル)もある。対人系、製作系、作業系、悪徳系、など。


このその他に属する技術(スキル)はだいたいクラスレベルとかに依存しないのが殆どで、逆に言えばクラスに関する技術(スキル)はそのクラスにしか使えないし、特典も得ることはない。


例えば、その他の『作業系、採掘』の技術(スキル)を3レベル取得しているとする。彼は鉱物の採掘にシャベルやつるはしなんかを使うけど、それは鉱物の採掘するためのもので、それを使った戦闘に有利になる訳ではないのだ。

『戦士系、両手槌』を3レベル持つ者は、戦闘においてそれに属する武器、ここではつるはしにしておこう、を扱う際に有利になる。攻撃や打撃に補正がかかるのだが、だからといって採掘をするのが有利な訳ではない。採掘は採掘で、別の技術として確立しているからだ。


なんか、ややこしい話になってしまったが、この技術(スキル)があるとかなり有利になる側面もあったりする。私の取得しているSKPは1535。魔術系の技術(スキル)三つを取得しているから後は別系統にしていこう。まず、賢者系から魔法薬(ポーション)[錬成:1]を得る。同時に賢者系から魔法薬の元になる薬草の採取や加工を行える[薬草学:1]を取得する。残った分で野伏系から[危険感知:1]を取得して終わり。


戦士系や斥候系、野伏系の武器に属する技術(スキル)は3レベルくらいまで取得しないと補正がかからないという話なので、武器系統は見合わせた。そもそも、私は魔術師だからね。


「さ、そろそろ行くわよ。ぐずぐずしてると色んな人に見つかって出づらくなるわ」


ノーリゥアちゃんが言うとみんな席から立って色々と確認をしている。


ちなみに今は昼の鐘の一つ前。つまり早朝だ。先ほど挨拶しに行った方たちにはご迷惑だったかも知れないけど、なるべく早く発つべきだとノーリゥアちゃんが決めたのだ。


冒険者ギルドの前でダリエル執政官が待っていた。護衛の人が付いているけど、身が軽いのはお互い様かもしれない。


「フリーダが寂しがってたよ。君を抱けなくて」

「そういう事はあなたにいうべきではないのですか?」

「違いない。まあ、僕の事はどうでもいい。ともかく、生きて帰ってきてね」


ダリエルさんが手を出してくる。私もそれに応えて、握手をする。ヤゼンさんやウェイバール伯父様に比べると小さく柔らかい手。だけど、私よりは大きくてゴツゴツしている。頼り無さげだけど、ちゃんと鍛練は怠ってないようだ。


「次に会う時はお子さんも見せてくださいね」


ニヤリと笑って言ってみた。バツの悪そうな顔で答えてくる。


「大人をからかうんじゃありません」

「はーい♪」


でも、これは本心だ。子供が出来ればそれは私の甥か姪だ。嬉しくない訳はない。

それにフリーダ様に男子が出来れば、彼女は正室として磐石になる。フェデルを側室に迎えたって角はたたないんではないだろうか。

…いや、こういう事は考えない方がいいな。人との関係なんてなるようにしかならない。あれこれ外野が言うことでもないよね。


別れに際して涙はない。まだそれほど郷愁を感じる年でもないし、それよりも未知の旅路に対しての心が踊る方が大きい。まだ見ぬ土地。まだ食したことない食べ物。まだ知らぬ敵に、まだ会ってもいない味方や友達。様々な事がこれから起こるだろうけど、私達は行く。


「所で、なんか忘れ物してないかな?」


ノーリゥアちゃんがそう言ってくる。


「買い物とか足りないものは次の町で入手しようって言ってたし、大した物じゃないでしょ?」


イリーナは楽観的にそう言う。フランが何故かニヤニヤ笑っているので聞いてみると。


「いえ、別に何でもありません」


と、答えた後は笑うのをやめていた。


「うーん、なんだっけなぁ」


ノーリゥアちゃんは頭を捻っている。私はこれからの旅路に思いを馳せてたので気が付かなかったが。

夜営の時に思い出した。四人用と一人用のテントを【保管(ストレージ)】の中に見つけた時に。





「やあ、いい酒が入ったと聴いて来たぞ」


夕暮れ時にライデルが家を訪ねてきた。それ自体はよくあることだから何も言うまい。だけど、今朝のことを知っている以上、それを聞かない訳にはいかない。


「ライデル、君は付いていくんじゃなかったのかい?」

「なんの事だ?」

「ジュンに剣を捧げた身なんじゃなかったかな。今朝、旅立ったんだけど」


「「……………」」


「なんだってぇー!!?」

「あ、やっぱり知らなかったんだ」


慌てふためいて飛び出して行こうとする従兄弟に、僕は酒瓶を放り投げる。


「餞別だ、あげるよ」

「ありがとう、友よ」


歯をキラリと光らせて、彼は行ってしまった。僕には真似の出来ない生き方を選んだ彼に、精一杯のエールとして贈った逸品。

『クレメンタイン侯爵領、ザッカロート酒蔵製の二十五年物』価格にして金貨二十枚の品だ。

ただ、彼女に見せたらあっという間に飲まれるだろうな。僕はくすりと笑って窓を見る。

もう、日は暮れていた。

メタな話を入れると話が助長過ぎる気がします。ちなみに、基本は某剣の世界のRPGを元に色々とローカルルールを足したモノになってます。

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