↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で命のせんたくをすることになりました。  作者: fuminyan231
2 となりまち
39/266

ぎるどしぶちょうとのかいわ

 今のところ、同席するイリーナには私の正体はバレてないはず。ギルド長のオルガさんは、『あいつの娘か?』と聞いてきただけだから、誰の娘とかは言ってない。

 つまり、彼はそのまま押し通すのか? と聞いているのだろう。


 だとしたら、押し通す。

 そのために来たのだから。

 師匠が言ったのだから、便宜は計ってくれると信じたい。ただ、偽装を認めるとかバレたら問題になるかもしれないしなぁ。


「虚偽を書いたことは認めます。申し訳ありませんでした。それを曲げて、登録していただけませんか?」


 なるべく、誠意を見せるように。私ができる事など彼に対してはほとんどない。家の力がなければ、私なんてただの小娘だ。

 だからといって、何でもするなどとは絶対言わない。

 そこまでは落ちるつもりはない。


「ああっと、忘れてた。そっちの二人は登録はすんだのか?」


 話を逸らしてきた。さらに二人を引き離すつもりか。むしろイリーナがいない方が私にはやり易い。


「イリーナ、フランの登録がまだだから付き合ってあげて」

「え……いいけど。いいの?」

「お願い、フランだけだとちょっと難しいかもしれないし」

「お嬢様、私は……」


 フランに目配せをして、大丈夫だと告げる。こくりと頷いて、イリーナと一緒に出ていく。


「さてと、じゃあ本題に入るが……」


 オルガ氏がさっきの書類を見ながらこちらに言ってくる。


「まず最初に俺に話を通せとフレスコは言ってなかったか?」


 最初にとは言ってなかった気がするけど、迂闊だったのは認める。


「……すいませんでした」

「いや、別に謝れって言ってんじゃねえよ。そう言わなかったならアイツが悪いだけだ。そう言ってたらお前の落ち度だろうがな」


 む、意外に理屈っぽい人だ。


「まあ、その辺もどうでもいい。お前の親父にも頼まれたし、登録も改竄してやる」


 話が早いと思ったら父様が連絡したのか……えっ?


「と、父様と連絡取れたんですか?」

「奴からかけてきたからな」


 あっさり言いおった。確かに符丁も知らないし、今は覚えたけどあれ以前には使えなかったし。


「ん? なんだ。今さらあいつに文句でも言うつもりか? なら、教えてやるが」


 ……むう。

 やな言い方するな。確かに今さら話してもな。なんか気まずいし……。でも、声は聞きたいな。


「まあたぶん、奴は出ないけどな。フレスコの奴も拒否られたらしいし」


 ニヤリと笑ってまたしてもやな事をいう。怒らせたいのかな? ならのってやらない!


「父様の符丁は教えてください。今は連絡する気はありませんが、方法はあった方がいいので」


 努めて平静に言う。オルガ氏は口頭で父様の符丁を教えてくれた。二度は言うつもりないんだろう。


「それで、とりあえず聞きたい事がある」


 なんだろう。私が旅に出る理由とか聞きたいのか? そんなわけ無いか。この人はおそらく線を引ける人間だ。自分の損得を考えて理性的に判断できる。人の情動とかには興味はないだろう。


「お前は勇者か?」

「違います」


「「………」」


 なぜ、黙る。

 睨むわけでもなく、自然体のままで互いの視線がしばらくぶつかり合う。

 あれ、見つめ合ってるのかな? これは……


「いや、なんで照れてやがる。子供を口説くつもりはねえよ」


 とか言いつつ、少し顔が赤い。お互い、ちょっと気まずい感じになってしまった。オルガ氏がごほんと、咳払いをして話を戻す。


「いや、おかしいだろ。勇者じゃなきゃこんなアビリティになるわけない」


 そう言えば、ステータスだけ見てたけど、アビリティ欄は見てなかった。ピラッと紙をひっくり返してこちらに見せてくる。


器用度:16

敏捷度:18

 知性:21

 筋力:5

生命力:9

精神力:18

信仰心:18

幸運度:12

 体力:14

 魔力:65

 神力:45

命中補正:+3

打撃補正:±0

回避補正:+4

防御補正:±0

魔術補正:+13

神術補正:+10




「うわっ……私の筋力低すぎ……」

「驚くところはそこじゃねぇよ!」


 何故かキレられた。どういうことなの?


「あの、ひょっとしてこの信仰心ってのですか? 私、神様なんて信じてないんですけど…」

「そこもおかしいんだけど! けどもっとおかしいのがあるだろ?」


 んー。どこだ……?


「まさか、魔力ですか?」


「そうだよ、それだよ!」


 なんか、最初のイメージからどんどんキャラが崩れてるな、この人。更年期かな?


「普通の魔術師は魔力はだいたい12~17位まで、高くても21くらいだ。歴代の魔術師の中でも最高値だったのは、ロートシルトの25だ」


 え、そうなの? じゃあこの数字って……


「故障とか?」

「んなわけあるか!」


う、うう、怒鳴らなくてもいいじゃん、ぐすっ。


「泣くなよ! 俺が泣かせてるみたいじゃないか!」


 私だって泣きたくなんかないやい!

 でも、なんだか無性に涙が溢れてきて。

 ……あ、だめだ。


「うぐっ…ひっ…あ、ああぁわ~ぁぁ」


 うう、止められない。

 なみだも、嗚咽も、鳴き声も。


 ひとしきり泣き止むまで、オルガ氏は待っていてくれた。すごくばつの悪そうな顔だ。


「……悪かった。お前のせいじゃないんだよな」


 ……すん。

 鼻を少し啜ると、ちょっとは喋れるようになってきた。


「……わたしは、召喚なん、てされてない。……えるざむ父様と、てれーぜ母様の、むすめだ、もん」


 うわ、子供みたいなしゃべり方になってる。

 けど、これは言わないといけない。

 私はきちんと生まれてきた人間だ。



 勇者なんかじゃない。



「……そうだな」


 ポンポン。

 わたしの頭を軽く、そっと叩くオルガさん。ぶっきらぼうな慰めかただ。子供をあやしたことは、無さそうだな。


 でも、不思議と心地よかった。もっと小さい頃。自分の事もよくわからなかった頃に、父様が頭を撫でてくれた事を思い出した。


 しばらくして、フランとイリーナが戻ってきた。二人ともオルガさんが私をいじめたと怒ったが、大人な彼は相手にもせずこう言ってきた。


「詫びにメシご馳走してやるよ。『宵闇のサルビア』って宿を知ってるか?」


 ……聞いたことあるよ、そこの事は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。