1-21 心の奥底
今回は視点が変わってます。
なんか久しぶりですね。
──なんか呼ばれた気がする。
あ、私か。
いや、おれか?
最近だいぶ同化が進んだのか、俺という自我が出づらくなってる気がする。
いま、こうしているのもユーニスが寝ているために浮き上がってくるのだ。そうでなければ、あんなかわいい会話や行動を俺が取れるわけはない。
なりは華奢であったが、間違いなく男だった自分にJSの年代の行動は理解できない。
さらに言えば、ユーニスの考え方も理解できない。
いや、放火とかされて無事生きてたのは良かったな。
けどさ、あんな意味不明なメッセージを頼りに旅に出ようってのは、とうてい理解できない。
御大層な理由はあるのは分かるんだよ、でも普通は二の足踏むだろ? 子供なんだから!
本当は怖くて仕方がないはずなのに、こいつったらおくびにも出さないで冷静に考えてて。
自分の好きに動けるチャンスだと思ったら、即座に行動しちまうし。
昔の俺から比べたら、行動力が段違いすぎる!
昔のおれといえばだけどさ。
なんだよ、あの【超加速】って権能。
なんで身体は無事なのに、装備なくなっちゃうの?
俺だって路上で全裸とか勘弁だわ!
使いどこが無さすぎて意味ないわ!
【保管】も便利だけどいまいちだよなー。
枠一つじゃなくて、せめて六個くらいあればまだ使いやすかったのに。
あと、出し方とかね。ガラスみたいな壊れ物とか出せないじゃん。
……あ、いちおう対処法はあったか。
しかし、女の子の身体だとは思わなかった。
悪いけど少女趣味じゃないんでご褒美もなんにもない。
細い身体で、あのドワーフの言う通りに肉が足らない。
言っとくけど、十歳だってもっと出来上がってる奴はいるんだぞ、あの世界だって。
実際、ユーニスだって通りすがりの少女の胸を見てたし。
なんか羨ましそうに。
まあ、気持ちは分かるけどな、劣等感なんて誰でも持つもんだ。
逆にフラン、いやフランドールさんって呼ぶべきか?
あの子はすごいものをおもちでしたからね。
眼福でした、ホントに。
なんでユーニスにそこまで尽くすのかは知らないけど、健気で可愛いよな。
彼女がひどい目にあわないように頑張らないとな。
とはいえ、おれ自身の自我はあまり出番がなくなりつつある。
というか、肉の体が魂が歪みを補正するというのが本当の話なら、歪みの象徴であるおれの自我は消えた方がいいのかもしれない。
何度も言われているが、俺自身はすでにユーニスと同一だ。
彼女の精神構造などにおれの魂が影響を与えているのは、間違いないだろう。
と同時に、ユーニスの影響もおれの自我は受けている。
これがおそらく、寝ているときしか出てこれない原因になっている。
そのうち、おれの自我は消えてなくなってしまうのかもしれない。
まあ、なくなった方がいいのだろう。
彼女の身体は女の子で、ひねくれた性格の男が入り込んでいい場所じゃない。
おれの自我が消えれば、俺はおれを認識出来なくなり、そういった二律背反な感情をもて余す事も無くなる。
少し淋しいが、それは仕方ない事なのかもしれない。
そもそも、秋津潤はすでに死んで、その魂は転生しているのだ。
魂と記憶、自我は同一ではない。
普通に生まれ変わっても、記憶は残らないし自我が残る筈がない。
でも、少しは期待していよう。
底に沈んでいても、いちおう何が起こってるのかは視えている。傍観者というか視聴者みたいな感じだった。
テレビを見ているような感覚でユーニスの行動を見るのも、実はけっこう楽しい。
おれの自我とか、どうでもいい。
今はやれるだけなってみればいいさ。
どうせ失敗しても、死ぬだけだ。
そんな事は知ったいた。
なら、せめて楽しまなくてどうする?
たった一度の人生なんだ。
やりたいようにやっていくしかないんだ。
お、なんか自我が歪んできた気がする……もう起きたのか、ユーニス。
いや。
今はジュンか。
俺の名を呼ばせるつもりはなかったのに。
健気だね、おまえ。
じゃあ、また暫くは潜っていようか。
意外に慣れると楽なんだよね、意識の底って。
──またな。
潤さんは、ユーニスの行動を見守ることを選択しました。これがどういった事になっていくのか。今のところはあまり関係はないです。




