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異世界で命のせんたくをすることになりました。  作者: fuminyan231
1 たびだち
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1-10 ちゅうぼうのたたかい

 ほどなくチコさんが帰宅し、黒パン、チーズを幾つかに葉ものの野菜など諸々の食材が持ち込まれた。

 彼女はすぐに帰るようで、あとを引き継ぐのはフランになるが、実はフランはあまり料理が得意ではないので私がやることになる。


 フランは後ろでお手伝いをするために子供のようにうろうろしてる。刃物が使えない彼女にはチーズを削り器で削っといてもらおう。

 フランが刃物使えないというのは別に宗教上の問題とかクラス制限とかではない。

 ただ単に不器用すぎて見てて怖いという他のメイドやメイド長の意見からやらせなかったのだ。

 なんというか、ただではすまない皮の剥きかたをする。

 仕事で指を落とすとか裏の仕事の落とし前じゃあるまいし、若い婦女子に背負わせていい十字架じゃないよね。


 キッチンに残っている食材は幾つかあるが、冷蔵保管庫(クーラーボックス)(魔石を使って物を冷やす魔術装具)に干してない肉があったのでこれを使うとしよう。


 空気は読まない。

 フランがした事は良いことだったのだ。


 とりあえず、肉を塊から幾つか切り出し、サイコロのようにカットする。奥に転がっていた芋の皮を取り、人参を(ここの人参は黄色い!)も同様に、鍋底に葡萄種油をひいて肉とカットした根菜を炒めてから水を張る。ちなみに竈は普通に薪と炭だ。


 ハーブの葉っぱを幾つか浮かべて塩や香辛料で味を整え、しばらく煮込めば手軽なスープの出来上がり。ほんとは手間かけてホワイトシチューにしたかったけど面倒なので。まだ寒くないしね。


 肉を薄く切り出していって軽く炙る。塩と香辛料は少な目だ。これも少し細かくカットして洗っておいたリーフっぽい葉ものの上にちりばめ、黒パンをこれまたサイコロのように細かく刻みばらまく。削ってもらったチーズを振りかけて、そこに葡萄種油と葡萄酢を混ぜたドレッシングをかける。


 最後に肉をやや厚目に切り出し、網で焼いていく。こちらは塩と香辛料をたっぷり使っていこう。

 香ばしい匂いが空腹を刺激するので、ちょっとだけ味見をしてると、フランも物欲しそうに見ていた。

 切り分けて口へ放り込むとうっとりとした表情になった。


 なにこのかわいい生き物。


 黒パンは適当にカットして炙る。固いけど焼くとバケットみたいな食感になるので私は嫌いじゃないが、だいたいの貴族は嫌がるそうだ。白いパンなんて男爵家の食卓でも毎日は出ないんだよ?


 これまた冷蔵庫にあったバターを盛大にカットしてパンにのせておいた。

 ちなみにここでは子供でも酒精の弱いワインなら飲むのを認知されてる。水よりも安く取引されるものだと、酒精はほとんど感じないからだと思う。


 久々の厨房だが、なんとかなったかな? 旅に出たらもっと質素に手早くやらないとね。


「ほう、あの肉を使ったのか? 魔物の物だったが、平気か?」


 それは知ってた。たぶん一角狼(ホーンウルフ)だと思う。この辺りではよく群れを作って旅の行商人や旅人を襲うのだが、二年ほど前に父が狩ってきた物をみているのだ。冬に向けて脂肪がのって美味しくなる時季だし食べない手はない。


 ちなみに、やはり貴族の多くは魔物の肉は食べない、と言われている。食わず嫌いだと思うけど、安い魔物の肉は庶民の大事な食材なので彼らには蒙を覚まさないで戴きたいものだ。


 フレスコ導師とフランも席に付き、食事がはじまる。ちなみに給持しようとしたのはやめさせた。貴族である事を隠していかねばならないのに、喧伝(けんでん)してどうするの?


「お嬢様に食べるところをお見せするなんて……」


 なんで恥ずかしがるのかな? みんなで食べた方が美味しいと思うよ。私は一人っ子でたいがい食事は父とだけなんで、こういうのには憧れてたのだ。


「おいおい、直していけばいいさ。ところで、フラン君は何か武器は使えるかね?」


 導師が聞いてくると、彼女は肩を落とした。


「実は何度か旦那様に剣を教えていただいたのですか……」

「芳しくなかったかね?」

「はあ、どうも私は不器用らしいので。力はそこそこあると仰られて、もし使うなら殴打系の物が良いと言われました」


 それなら両手用のモールがいいと思う。防御力が足らないから盾とか使って欲しいけど、おそらく盾でうまく防御できないだろう。


「ユーニスはどうだった? 総合的には剣士にはなれないとあいつは言ってたが」


 おっと、こっちにきた。父の見解であればたしかこうだった。


 『体捌きや反射は目を見張るが、いかんせん身体が小さく、長く剣を振る体力もない。器用に使うから短剣での一撃離脱で、基本は格闘戦には入らない方がいいと思う。体力の向上や身長・体重の増加があったとしても、軽戦士の枠はでないだろう』


 そう伝えると師匠は首肯した。まったく同意見だそうだ。

 そんなわけで、盾役になる前衛が急務となる。この街、サンクデクラウスの近郊には迷宮(ダンジョン)があり、そこから運び出される魔石やアイテムを目当てに冒険者も多い。そのために冒険者ギルドの支部もある。

 都合のよい人材がいれば雇うとかも出来るかもしれない。ただ、そのためにはユーニスはユーニスでなくなる必要がある。


「師匠に折り入ってお願いがあります」


 食事の途中だが話を切り出す。

 ワインを傾け、口を湿らせると師匠はこう言った。


「今は見返りは求めない。いずれ返すこと、それが条件だ」


 やっぱり、この人もカッコいいな。



 まあ、父様には負けるけどね。




 ユーニスは子供でも酒を飲めると言っていますが、これは間違いです。

正確には「安いエール」であって、ワインやもっと強い蒸留酒などは親御さんに怒られます。

ユーニス自身は酒に耐性が強いようで気にしてませんし、父も意外と放任なので注意してないだけなのです。

ちなみに成人(十五歳)になったらアルコールは解禁になります。

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