旅支度
商館では、フレイ=レックナールが突如いなくなるという事態から、大騒ぎになっていた。
ほら見ろ、言わんこっちゃない。
ルナのほうを見ると、ぽりぽりと頬を掻いている。
「取りあえず受付に行くぞ。」そうルナは言って歩き出した。。
受付に行くと、「あーーー、あなた!昨日の!!あの、フレイさんを知りませんか!?」ともの凄い剣幕で聞かれた。
昨日、フレイ(もといルナ)のところに案内してくれた受付のお姉さん…だよな?
髪は掻きむしってボサボサ、服装も乱れに乱れ、昨日の落ち着いた雰囲気は何処へやら、今にも掴みかかられそうな勢いだ。
「な、何かあったんですか?」と尋ねると、
「何かって、あなたと会ったのを最後に急にいなくなっちゃったんですよ!昨日の月例会もすっぽかすし、部屋の机には変な書置きはあるし!」
「昨日からずっと探してるのに、全然見つからないなんて、有り得ないわ!」
「ていうか旅?旅って何よ。もう70歳だから、俺は引きこもるぞー。ってこの前言ってたのに…。」
「せめて、せめて、どこか行くなら、私も連れてってよーーー!!!」
うわーんと、泣き出してしまった。
おいおいジジイ。話が違うじゃねーか。
お前、居なくなっても大丈夫大丈夫とかって、言ってたよな?
なんか商館全体で探してる雰囲気だし、この人凄い勢いで泣いてるぞ?
おい!何とか言えよ、くそジジイ!!
と思っていると、
「メソメソすんな。自分の道は自分で切り開け!」
隣にいたルナが言った。
お姉さんは、驚いた顔をして俺の隣に立っているルナを見た。
「フレイからの伝言です。もし俺がいなくなって受付のジルが泣いてたら伝えろと…。」
ルナは、持っていたハンカチをジルに渡し、涙を拭くよう促した。
「…。」
ジルは、受け取ったハンカチで涙を拭くと、二回大きく深呼吸をした。
そして彼女は落ち着きを取り戻していた。
「びっくりしました。」
「その言葉、フレイさんの口癖なんです。昔から何度も言われました…。」
口調まで一緒だったから、一瞬フレイさんかと思ったと彼女は笑って言った。
「それとこれ、あなた宛ての手紙です。昨日街の入り口で彼から預かりました。」
ルナは手紙をジルに渡した。
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『ジルへ』
なんも言わず悪いな。
お前のことだから、俺がいなくなってぴーぴー喚いてるんだろ。
また泣いてるんじゃねえのか?
いいか、いつまでも俺の影を追うな。
お前にはお前の生きる道がある。
自分の道は自分で切り開け。
俺はもう歳だ。いずれ死ぬ。
この街にザンの弟子とその使いが現れたのがいい機会だ。
最後に会わなきゃならん奴もいる。
まぁ、そんなんで、ちょっと旅に出てくるわ。
後は頼む。
麗しのお爺様フレイより。
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ジルは、はぁ、とため息をつき、ルナを見た。
「えーっと…?」
「ルナ=ウインドです。フレイにここに立ち寄るよう言われました。背中の剣がその証です。」
「ということは、あなたが、あのザン=フィールドの弟子?ず、随分若いのね。」
「で、あなたは?」
俺のほうを見てきた
「あ、その使いです。」
手紙の内容が目に入ったので、話を合わせる。
「そっか…。わかりました。あなた達のことは、前館長であるフレイから聞いています。彼の私室に案内しますので、こちらにどうぞ。」
そう言われ、案内された部屋は、昨日案内された部屋とは違い、非常に大きな部屋だった。
30畳位の大部屋の中には、書物や武器・防具等色々なものが置かれていた。
「ここにあるものは自由に使っていいとのことです。それと、何かお困りのことがありましたらお呼び下さい。」
そう言ってジルは、部屋を後にした。
最後に、あなた達ほんとにフレイさんがどこに行ったか知らないんですか?と聞かれたが、ルナはさぁと肩をすくめていた。
「ふぅーーー。」
ジルが居なくなったと同時に、ルナは大きく息をついた。
「何とかなったな!」
ルナは、念のためと言って左目に付けていた変装用の眼帯を外して言った。
「いや、なってないよ!この女泣かし!」
俺は言ってやった。
「あーーー、いいのいいの。あいつはガキの頃から俺にべったりだったからな。丁度いいんだ。」
大丈夫大丈夫とルナおじいちゃんは言った。
このジジイ、正体ばらしたろか…。
ルナの準備はすぐに終わった。
本棚から本を数冊。金庫から宝石を数個。
後は、水晶のように透き通った剣を二本両腰に差しただけだ。
その剣はお気に入りなのか、と聞くと、水竜の両角から削り出し、水の精霊が鍛え上げた剣とのことであった。
なにそれ~、格好いいー。ずるいー。と一人拗ねていたら。
ミズキも適当に選んでいいぞ、と言われたので、探してみることにした。
武器は選り取り見取りだった。
剣、大剣、刀、曲刀、槍、斧、弓、棍棒、ナイフ、等々。
それぞれが数十本はあった。
その中で、一際妖しく輝く一本の曲刀が俺の目に留まった。
この刀、わかる……。
俺にはわかる……。
妖刀だ……。
「世界にまつわる伝説の武器全集」を元の世界で愛読してきた俺の目はごまかせん。
ふふふ、とその刀を腰に差すのを、ルナはじっと眺めていた。
そして、とことこ近づいてきて、一本の曲刀を手渡してきた。
「それは模造刀だぞ?曲刀ならこっちにしとけ。」
① ルナから渡されたもの
曲刀『銀月』
魔界に住む銀狼の血と骨、そして特殊な黒砂から作られ、火の精霊により鍛え上げられている。
② 俺が取ったもの
曲刀『模造刀』
ステンレスの包丁より切れ味の悪いなまくら。だって、キラキラしてたから…。
あ、そうですか…。
俺はもう自分で何かを選ぶ気力を失っていた。
その後、ルナおすすめのナイフを一本と魔除けに効くという首飾りを一つ貰った。
ともあれ準備は整った。
後は馬車がいるな。御者も欲しい。
それにルナは方向音痴らしいので、道に詳しい人もいる。
俺たちはジルを呼び出して、馬車の手配と魔法都市までの道のりに詳しい者の紹介を頼んだ。
「丸をつけた人から選ぶといいと思います。うちの商会員で、運転もできますし道にも詳しい者たちです。」
ジルが持ってきた紙の束を見る。
これから一緒に旅をする仲間だ。
獣人か……。
砂漠と森は迷いやすいため、獣人と行動を共にするのがベターとのことだ。
うーん。ネズミとかはいやかなぁ。
ライオンはかっこいいけどちょっと怖いなぁ。
なんて思って見ていると、ルナは、オオカミの獣人を見つけて、おっこいつにするかな、といって指をさした。
そして、その指の隣にキリンの獣人がいた。
「この人にします!!!!」
「キリンの!」
「絶対!」
こうして、男(?)三人(?)の旅が始まった。
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リスト記載事項 (キリンさん)
【ドリー=キャンパス】
種族:獣人 (キリン)♂
職業:戦士
特技:乗り物の操縦が得意。楽器の演奏。
趣味:歌うこと。食べること(草とか)。アクセサリー集め。
一言:「きりんです。」、あなたに会えることを首を長くして待ってます。




