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だってそれは、深森にとっては一番いちばん「潜ってはいけない世界」だから。意識して、常に意識して潜ってこなかった。
金髪を不服げ不満げ苛立ち気に揺らす見た目ちびっこ幼女な陽菜は丸く愛らしい瞳をきっ、と強くしたまま難しい顔で悩み始めた。
「…………」
にまり。深森な中で悪戯心がふつふつとくすぐってきた。
この国特有らしい、深森がいた世界とは違う民族衣装のような服を着た陽菜が、まるで絵本の世界にいるかのような、朗らかで可愛らしい色でそこにいる。
きれい。の類いではないが整った顔立ちの陽菜は美少女と呼んでも過言ではない。愛らしくちいさな背丈と、逢って僅かだがとにかく一生懸命に一途な纏う空気が絵本に現れる女の子を思わせて深森の頬を緩ませる。緩ませて、迷子になって困っていた緊張を解してくれてーーーーー悪戯をしたいと言う精神的な余裕を作ってくれた。
クリーム色のワンピース。それが冬風に染められ群青色と着替えた草の上に広がる。
可愛いよねぇ!
と、誰に同意を求めたかは知らないが深森は心の中でその感情の同意を求め、制服のポケットからスマートフォンを取り出した。
タッチ。そしてスライド。
お目当てのアプリを見つけ、深森にどう説明したら良いか考えてくれている陽菜をカメラの力を借りて液晶の中にしっかりと捉えた。
今時の世界に生まれてよかったと思った。シャッター音のないカメラアプリ万歳、と。
シャッターの絵を押して、深森はしっかりと陽菜を携帯カメラで撮影し、ほくほくとデータ保存を完了した。陽菜曰く“冬世界”のこの場所は肌寒いことこの上ないが問題ない。
自分は可愛いものが好きなのかそうかそうだだってあたし女の子だもんテヘ☆と、ただの危ない趣向が発覚したのにも関わらずなんとも自分勝手に解釈した深森は盗撮に加え、更に今撮った陽菜の写真をスマホの待ち受けにしようと設定の為、指を動かした。
しかしそれはまた後程のこととなる。がっつりと陽菜が深森の肩を掴んだからだ。