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……まて?ん?伴侶?
そう言えばさっき「妃」とかも話していたような気がするけれど……と深森はは記憶を辿る。
が、そんなことも許されないような切羽詰まった状況が深森をくるむ。
少しばかり暖かい空気が渦を描くように深森と陽菜を取り巻く。深森の手はしっかりと陽菜に握りしめられていた。
「私の傍らの“南の竜王”はね、四人いる竜王の中で一番……持っている力が戦闘に長けているの」
物騒なおはなしですね。
「業火。飛翔。……本来なら持つ力はひとつのはずなんだけど……他の竜王より馬鹿だからかな?とにかくふたつあるの」
馬鹿だけがやたらと強く聞こえたのは深森の気のせいではないだろう。
学校の先生に言われているかのようなひっそりとした嫌味がちくちくと刺さる。いや、学校の先生はどうにかこうにかして生徒にやる気を出させようと発破をかけようとしているだけなのだが。
「お……おおぅ……耳が痛い……。……ぅうわあっ!?え?え?えっ?」
ひゅう……と下から持ち上げられるような感覚。地に足がついていない事実。正真正銘、深森と陽菜は宙に浮いていた。
なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?
陽菜の深森の手を握る力が一層強くなった。離さないように、強く強く。
母に頼まれた兄姉が弟妹の手を固くなに握りしめている……外出時のそれと同じ。
手を離したら危ないよー。車が来ちゃうよー。である。
陽菜は焦っている様子だった。
「言葉だけじゃ……ましてや言って直ぐじゃ頭が追い付かないよね。ごめんねお姉さん。詳しくは飛びながら……じゃ無理か。……きっとこれから“お姉さんが住む”北の竜王のお城に着いたらおはなしするね。……飛ばすから、私の手を絶対ぜったい、離さないでね?」
ーーーーそれから。優しく優しくくるんでいた温風は勢いを強めて、文字通り深森は“風になる”と言うことを体験した。
絶叫系の乗り物は苦手の極みである深森が心底「少しでも乗っておけばよかった」と後悔するほどに恐怖体験であったらしい。
時おり、涙がほろりと光ったとか。




