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第38話 ごめんなさいは、離れてから

 久々にお姉ちゃんと話し、詩織にあれこれと言われて、それでお姉ちゃんはすんなり去ってしまった。

「川田さんもどこか抜けてるわね、私達二人を置いて戻っちゃうなんて。私がまた理久をあれこれして溺れさせるとは思わないのかしら」

「いや、さすがに少しは考えを改めるよ。詩織のことも、他のことも。」

 だから口調も、無理して詩織の言うとおりにするのやめるし。

「……理久が協調性なさ過ぎるっていう、それすら私が適当言ってるとか思わないの?川田姉弟は見ていて心配だわ」

「適当言ってるも何も……、まだよく分かってないから。何が悪かったのか」

 結局どうしたらいいって?

 お姉ちゃんのことは分かる。お姉ちゃんだって女の子になって変わってしまったんだから、以前のお兄ちゃんと同じ事を俺が求めるのは自分勝手だったって。

 でも……。

「お姉ちゃんのことは分かるけど、陸上部は?俺もダラダラ喋ってろってこと?」

「まあ、そうね、そこから初めて見たら?」

 そうしてみよう。

 私はうん、うんと頷く。

「ホント心配だわ……。こんなに簡単に私が言う通りして。自己中な割には私の言うこと飲み込みすぎでしょう」

「それはちょっと、今後気をつけるよ。だから恋人も一旦解消」

「え!ちょっと!?」

 さすがに詩織が驚く。

「いや。そもそもあれは、元女と知ったら断ると思ってカマ掛けて言っただけだし……」

「えっ、そういうことだったの!?私は元から本気だったんだけど!だから……、だから、私は……」

 涙声になっている詩織が、何が言いたいのか、分かるけども。

 だから俺に本気で接してくれたってことだろう?

「俺だって、詩織が俺のこと本気だって気持ちくらいは分かるけど。俺はその一部に惹かれていた、溺れていただけかもしれないから」

 だから。

「だから、一旦なんだよ。詩織の他の魅力に気づけたら、ちゃんと俺から言うから。だから一旦、解消だ」

「……それは私も悪かったわね。そういうアプローチしかしてなかったんだもの」

「じゃあね」

 俺は別れの言葉を自分の今後の決意の代わりに告げて、その場を離れようとした。

「待って」

「何?一旦解消するのは変えないよ?」

 何かにつけてそれを回避しようとするんだろうけど、そうはさせない。

「帰る部屋……、同じよ?」

 そうだったね……。

「…………、帰ろっか」


「ただいま」

「理香!」

 コテージの扉を開けると、2人とも居た。

「ど、どうだったんですか?」

 綾ちゃんが結果を聞いてくる。

 ……う~ん。

「とりあえず男のままでいる方向で前向きに検討中で、今晩にでも結論教えて貰える感じ」

「よかったじゃん!」

 うん……。

「そうなんだけど、話がまとまったのは佐々木さんのおかげというか……」

「……は?」

「え?」

 そうだよね、そんな反応になるよね。

 私だってそうだもん。佐々木さんは色気で理久を虜にした悪女くらいに思ってたのに……。

「まさか、理久の悪いところを指摘してくれるとは思わなかった。でも理久ってちょっと言い寄られたりするだけであんなに異性に溺れるなんて、将来詐欺に遭ったりしないか心配になるわね……」

「え、溺れるって……。もしかして理久と佐々木さんヤったの?理香よりある意味変わった性別をこなしてるじゃん」

 ちょっと、咲恵、言い方……。

「藤島先輩、言い方が下品ですよ、せめてまぐわったとか……」

 いや、そういうことじゃないでしょ?

「えっと、まあ……。そこはいいじゃない」

 あ、ダメ。私こういう話苦手なのかも。

 すごい顔が熱い感じだわ。

「そういえば……、佐々木さんと理久があんな感じになっていた理由分かっちゃったから、多賀先輩の説明ってもう要らないんじゃ……」

「説明?」

 あ、そういえば私しか先輩からのメッセージ見てないんだったっけ。

「えっと、これ」

 私は二人に多賀先輩からのメッセージを見せた。

「え~っと?」

 咲恵が私のスマホを見てメッセージを読み上げる。

「『多賀先輩のこと大好きです、好きすぎて今日もムラムラして眠れません。しゅきしゅきだいしゅきー!』」

 は!?

「勝手に作らないでよ!」

「どこにそんなことが?」

 本当に。咲恵の冗談に疑問を口にした綾ちゃんが、メッセージを読み終えた。

「ああ、私達にも説明してくれる予定だったんですね……。じゃあ教えてくださいよ理香先輩……」

「ご、ごめん。でもそれくらい積極的にならなきゃ、多賀先輩にアプローチするんでしょ?私が送ってあげようか?」

 そう言って咲恵が私のスマホに手を伸ばそうとする。

「や、め、て!」

 そう強く言ったとき、スマホにメッセージが届いた。

「あれ?理久くんじゃん」

 理久だった。

 ブロック解除もしてくれたのね。


『お姉ちゃん、ごめんなさい。

 俺が勝手にお姉ちゃんにお兄ちゃんの姿を追いかけて、

 現実はそうじゃなかったから、もう要らないと思っていたんだ。

 でも、お姉ちゃんだって女の子になって、物事の考え方とか変わったりするよな。

 そんなことも考えずに俺の希望だけをお姉ちゃんに押しつけて勝手に絶望してました。


 本当にごめん』

「理久は私に何を求めていたのかな?」

「……さあ?」

 そうだよね、ここからはスッキリはしないよね。

「この文面からは先輩の物事の考え方が以前と違うってことが原因、ってことしか分かりませんね」

「違う……、かなあ?私には分からないわ」

 とりあえず返信しておこう。

「『いいのよ、心配しないで。怒ったりはしてないから。これまで通り接してくれたらいいからね』送信、……と」

「理香先輩優しいですねえ」

「私ならあんな態度取られたら当分相手しないかも。理香は優しすぎるよ」

 そうかなあ……。

「さて、色々一旦片付いたなら遊びましょ?」

「賛成です!水着はもう着ました!」

 そう言ってTシャツを脱いだ綾ちゃんは今朝見たビキニ。

「そうね、着替えるから待って」

 少し肩の荷が下りた気がして、今日は楽しく過ごせそう。

 あ、多賀先輩には一応説明してもらおうかな、違う話かもしれないし。


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