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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第4章:立身出世編

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68:ナカムラさんの遺品



「ギアーッ! ギェーッ!」

「キィエーーーッ!」

「やかましいわ! クソ、参った…」


 何が参ったって、急降下と急上昇を繰り返しやがるもんだから、かなりタイミング良くカウンターを入れないと木刀じゃ急所に届かない。


 十数体に急襲されて、どうにか首を圧し折れたのは僅か二体。

 これはマジ死ねると思ったので逃走し、ルートを大きく外れてしまった。


 最後はララック山の絶壁沿いに走り、絶壁の中腹に洞穴を見つけたためブースト全開で絶壁を駆け登ってどうにか退避した。

 が、ワイバーン共はしつこく洞穴前を飛び回っているので、連中が諦めるのを待つしかない。


 今日を含めて四日以内にアデーレへ戻らないと、代官府訪問をぶっちぎってしまう。

 まぁ焦って死ぬとかアホなので、詫び入れてリスケするしかないんだが。


「流石に中腹まで登ると寒いわ。つーかここ……天然じゃなくね?」


 足元は平坦で天井はアーチ型。

 見える範囲は幅と高さに変化がない。

 最奥まではざっと三〇メートル。

 そこには強度と濃度の高い魔力溜まりがある感じ。


 これはこれで嫌な予感がしなくもないんだが、感知に引っかかる生き物はいない。


「取り敢えずメシ食うべ」


 三種を二個ずつ買っとけば良かったと思ってしまうが、どうせ背嚢に入らなかったので仕方ない。

 あー美味いなちくしょう。残り一個かあ…


 腹が減るまでの時間を少しでも長くすべく魔力隠蔽で循環を止め、今夜は寝かさないぜ火も点けちゃうぜマン……やっぱ長えな。

 何にしろ魔力バーナーで足元を照らしながら奥へ行ってみる。

 こっちに来て初めての冒険っぽいシチュエーションに、少しばかり心が躍る。


「げ、マジっすか」


 最奥の壁を背にあぐらをかく即身仏がいた。

 いや仏教ないから餓死者のミイラか。

 こういう光景に恐怖や嫌悪を感じないあたり、こっちに染まってると自覚させられる。


「魔術師か」


 ミイラの両手指には、魔術発動体だろうリングが六つある。


「悪いけど使わせてもらう」


 大腿骨を手に取り、元はローブだろう衣服の袖を引き千切って骨に巻く。

 バーナーで火を点ければ松明(たいまつ)の出来上がり。

 乾燥した骨は良く燃えるから、後で焚き火代わりに燃やしてしまおうかしら。


 少々不可解なのは、ミイラが魔力溜まりを背にしていること。

 というか、魔力溜まりが余りにも局所的すぎる……お宝でも隠したか?


「再び悪いけど、どいてくれ」


 カコン コロコロ…


 落ちて転がった頭蓋骨が俺を見ている。なんつーか、ごめんね?


「膝立ちの高さ。これは何かある」


 両手だけ軽くブーストして壁を掘ってみると……薄い本?

 思わずサークルにいたヲタが『ぐふふ、薄い本』と呟くヤバい顔を思い出したが、続けてルーカスから聞いた話が脳裏をよぎる。


『リョウタロウ・ナカムラは魔導書の開発者でもあった』


 後にも先にもナカムラ氏だけらしいが、修得・会得した式や陣を恒久的に残す、もしくは、後進に継がせるための本が魔導書らしい。

 帝国には国宝として三冊の魔導書が保管されているものの、一人として継承できた者はおらず、転写や刻印もできないとか。


 とまぁそれは横に置いといて、このミイラがナカムラ氏である可能性はない、はず。

 ルーカスの話を信じるなら、彼は帝都の屋敷で最後を迎え、遺言に従い国葬で荼毘に付されている。


「またまた悪いけど、読ませてもらうぜ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

魔導書を読む者よ、我はアルベルト・カーン。

我が師リョウタロウ・ナカムラの遺志により、老師の魔導書を此処に残す。


老師が何故、ララック南壁に洞穴を穿てと仰せられたのか。

何故、魔導書を此処に残せと仰せられたのか。

矮小なる知恵しか持たぬ我には知る由もない。


されど今この時、汝は魔導書を読んでいる。

これに勝る喜びはなく、正しく我が本懐である。


老師がこな魔導書に記されし魔法は唯一つ。

万物に及ぶ重さを操る法則である。


魔導書を読む者よ、魔導書が汝を認めんことを切に願う。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「そうくるか……認められなかったどうなるんだい? んん?」


 即死とかマジカンベンなんだが、ページを捲りたくてたまらない。


 なんせ魔法っすよ。

 しかも、たぶん重力っすよ。

 空飛べちゃうかもっすよ?


「なんで舎弟キャラなのか分からんけど………おりゃあ!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

私の氏名は中村遼太郎です。



「魔法と違うんかーーーいっ! 俺の気合を返せ! いや待て!? なぜ日本語……」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

私の氏名は中村遼太郎です。

日本語でこの文章を残そうと考えた理由は、私の異能にあります。

私は時空間の境界を越える際、時に干渉する予知という異能を獲得しました。


この世界で327年を生きてきた私は、3ヵ月後に寿命を迎えます。

変えようのない未来を予知した時、久々に日本のことを思い出しました。


そして考えたのです。

平凡なサラリーマンでしかなかった私が転移したのだから、いつか他の日本人が転移し、この世界へ現れても不思議なことは何もないと。


予知には知りたい未来を明確、且つ、複数が対象にならないよう指定するという制約があります。

そこで私は、こう指定しました。


〝私が迷宮の最奥で獲得した重力魔法を継承できる日本人が、単独で必ず通る場所を予知したい〟


これを読んでいる君は、若くて背が高く、髪を青く染めていますか?

非常識なレベルで魔力の量が多く、強度も高いですか?


もしそうなら、私にとって最後の予知は成功しました。

どうして君は、こんな場所に独りで来るのか…

どれだけ考えても判りませんが、君は重力魔法を継承することが出来ます。


魔法は魂に宿る、神の権能の欠片です。

会得できる者であれば無条件に魂へ刻まれ、何が出来るのかも自ずと悟ります。


但し、最初から難なく十全に操ることは出来ないはずです。

継承するならば多くを経験し、研鑽を積んでください。

君が私を超えて研鑽を詰める人物ならば、あの日、あの時、あの場所へ帰ることさえ可能になるかもしれません。


もちろん、日本にです。


私にとって、この世界は悪くない場所でした。

何をするにも時間と労力はかかりますが、自由に生きることが出来た。

『何か違う…』と思いながらも、皆がそうするから自分もそうしなければといった、日本特有のルールやモラルが、この世界にはなかった。


親愛なる我が同胞よ。

何を選択するにしろ、君がこの世界での人生を謳歌できるよう祈ります。


中村遼太郎


追伸:

出来れば我が(つい)の愛弟子、アルベルト・カーンを荼毘に付してあげてください。

そしてもし可能なら、彼の指輪を生家へ届けてあげてください。

彼の生家はルベリオン帝国カーン公爵家ですから、帝国が存続しているなら残っているはずです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「俺も思うよ中村さん、この世界は悪くない。魔法、ありがたく継承させてもらいます」


 ページを捲ると、怖いくらいに長い魔法式が書いてあった。

 文字が一つずつ、吸い込まれるように俺の胸へと消えていく。

 そして最後の文字が俺の中へ消えた。


「………なるほど、空を飛ぶのはちょっと無理だな。でもこれは助かる」


 今の俺に出来るのは、宙を踏むこと。

 練習してみないと判らないが、十中八九は空中を走れる。

 が、その前に頼まれ事をやらないといけない。


「リングは預かっとく。アルベルト・カーン、あんたにも礼を言うよ」


カチッ ボォオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!! カチッ


 折角だし、カーンの遺灰を集めて瓶に入れておこう。

 洗ったけどバター臭は否めないし、要らないと言われるかもしれないが。


 さてと……


「おぉ!? スゲー! マジで歩けるんだが!」


 洞穴の中を行ったり来たりして練習した後、背嚢を担ぎブーストして駆け出す。


「あ~ばよ~~~! 羽根つきトカゲども~~~!」


 茜色に染まる空を走るのは最高に気持ちがいい!

 後ろでギャーギャー鳴きながら追って来るワイバーンなんざ遅い遅いーっ!



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