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13階段  作者: WAIai
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1話の⑦

Aの家は平屋建ての一軒家だった。父母は早くに他界しているので、一人暮らしのようだった。

「あがれ」

スリッパを出されて、貴明は大人しく従う。Aが自分をバカにしていないのは心の声が教えてくれる。こういう時にありがたい力だった。むしろ、何か気になることがあるような心の声だった。

何だろう、こいつ。そう聞こえた気がした。

スリッパを履いたまま、廊下を歩き、Aの部屋へ向かう。今どき珍しく和室で8畳くらいだろうか。綺麗好きで、物は少ない。

「座れ」

そう言われたが、貴明は立ったまま聞き返す。

「…本当なのか?」

「何が」

「その…、後ろに妻が…」

それ以上は言えず、黙る。自分を利用するか、脅してくるのだろうか。心配していると、Aが急に貴明の頭を指差す。

「それ、何なんだよ」

「それって…?」

「階段だ、階段」

貴明はびっくりして、悲鳴をあげそうになった。Aになぜ見えるのか。霊感が本当にあるのかもしれないと信じざるをえない一言だった。

「何が見えるって?」

「だから、階段だ、階段。13階段あるだろう?」

的確に言われて、貴明は黙り込む。Aは嘘を吐いていない。むしろ、本当のことを言っていると心が教えてくれる。

「…何だよ、話って」

怖くなって話を変えると、Aはちょっと待てと言ってきた。

「コーヒーでも…」

「いい、要らない。それよりも言いたいことは何なんだ?」

「ああ、それなら」

Aがあぐらをかいて、畳の上に座った。貴明も仕方がなく、机を挟んで座る。内心はドキドキしていたが、顔色を変えずにAの言葉を待つ。

「さっき言っただろう。俺、末期の癌なんだよ」

「聞いた。ショックだった」

素直に言うと、Aも強ばりを解く。

「ありがとう。心配してくれて」

「それで?」

下手なことを言わないように短く返すと、Aはまるで他人事のように言う。

「もう長くはないから、挨拶に行ったんだ」

「…そういうことか」

貴明も納得し、いくらか体の力を解いた。Aもようやく、本題を言えたと思ったのか緊張を解き、再び貴明の頭を指差す。

「その階段、何なんだ?」

「……」

貴明は一瞬黙り込む。言おうかどうしようか迷っていた。しかしAの心の声はしっかり聞こえてくる。

「階段、上ったら何かあるのか?」

Aは妻殺しよりも階段に興味があるようだった。貴明は何度も唇を舐める。Aが気をきかせて、若干にこやかに言う。

「安心しろ。誰にも言わないから」

「……」

また黙り込むと、Aがたたみかけてくる。

「もう少しの命だ。約束する」

「そうか…」

貴明は力を抜くことにした。階段がなぜAに見えるのかは分からないが、初めて気づいてくれたからかもしれない。

乾いた口でゆっくりと言う。

「…分からない。その、急にできたんだ」

妻殺しは飛ばして、若い男のことを話しだす。ずっと誰かに言いたかった。信じて欲しかったのかもしれない。

Aは時々頷きながら、話を聞いていた。それにすっかり安心をして、階段を指差す。

「どうすれば良いと思う?」

「そうだな…」

Aは腕を組むと、いきなり立ち上がった。

「俺が見てくる」

階段を指差し、目線はその先にある扉に向かう。どこと繋がっているのかは分からなかったが、頑丈そうな扉だった。

「お前、本気かよ」

問いかけると、Aが言い返してくる。

「本気だ。行ってくる」

頭よりも体が先に動くのか、Aは貴明の頭にある階段に足を向けた。重くなると思ったが、そんなことはなかった。

「行ってくる」

「…ああ」

神頼みよりもA頼みだった。Aが少しずつ、階段を上っていく。扉まで後少し。貴明は息を殺して、見守ることしか出来なかった。

「開けるぞ」

13階段上ったAが話しかけてきたので、貴明も頷き返す。

Aが扉を開いた。すると、眩い光が放たれて、貴明は目を細める。

「うわ〜〜〜!!」

あまりの光の強さに、貴明は耐えられなくなった。Aの存在も忘れて、その場に倒れこんだ。








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