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13階段  作者: WAIai
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1話の⑤

部屋に入るなり、いきなりAが単刀直入に聞いてきた。

「お前、奥さんは?」

貴明は体が冷えた気がした。腕をさすりながら答える。

「実は、入院していて」

もちろん、真っ赤な嘘だった。思ったとおり、Aは切り返してくる。

「違うだろう」

そう言うと、風呂場の方に目を向けた。貴明はゴクリと唾を飲み込む。

「何言ってるんだ? 本当のことだぞ」

と返すと、Aの心の声が聞こえてくる。

「こいつ、まさか奥さんを殺したんじゃ…」

やばい。頭の警戒心が強くなった。早く帰らせた方がいいかもしれない。

「話は今度にしてくれ。俺も具合が悪いんだ」

風呂場を気にしつつ言うと、Aがたたみかけてくる。

「殺したんだろう、奥さんを」

「は…」

何でバレたんだ。一瞬、頭の中が真っ白になった。慌てて言い返す。

「そんなわけあるか!! 失礼だぞ」

しかしAも折れずに風呂場へ目を向ける。

「遺体は溶かしたのか?」

「何言ってるんだよ、さっきから!!」

無気になって言うと、貴明は精神科の薬をゴミ箱に捨てる。

「…お前」

Aが何か言いかけたが止める。ビール缶や焼酎のペットボトルが散乱した部屋を見つめて、真顔になる。貴明はゴミを両手で回収する。

「早く帰ってくれ。変な妄想はやめろ」

早口で言うと、Aの心の声が聞こえてくる。

「やっぱり、奥さんを殺している。目的は何だ?」

詮索される前に貴明は手を振って追い払おうとする。

「もういいだろう。別のやつに話を聞いてもらえ」

「それじゃあ、ダメだ。お前がいい」

Aが強い口調で返してきた。貴明も怒りながら返す。

「だから何で俺なんだよ!!」

「親友だろ? 俺たち」

Aが自分と貴明を指差し、答えてくる。確かに繕わなくていいのは、彼だけだった。貴明も地を出し答える。

「そうだけど、今は関係ないだろう?」

「いや、ある」

Aがはっきりと返してきたので、貴明は少し吃驚して言う。

「何の関係があるんだよ」

「俺な…、実は」

Aが言いかけて止める。代わりに心の声が聞こえてくる。

「癌なんだ。それも末期の」

「へ!?」

貴明が変な声を発すると、Aが決意したように言う。

「俺な、肺癌なんだ。もう長くはないかもしれない」

「……」

何と答えていいのか分からなかった。Aが居なくなる、そのことは大きくショックだった。妻には感じなかった思いやりが言葉をつむぐ。

「大丈夫…じゃなさそうだな」

「当たり前だ」

Aが怒ったように言い、いきなり襟首を掴んで殴りかかってきた。貴明は油断から尻もちをついて、抗議をする。

「おい! 何をするんだよ!!」

「それはこっちの台詞だ。奥さんに何をした!」

「またそれか。だから、入院…」

「違うだろう。本人、後ろに居るぞ」

Aに言われて、ドキリとしながら後ろを見るが、何もない。ここは穏便に済まそうと優しく言い返す。

「本人なら病院だ。俺一人だから、部屋が散らかってるんだよ」

「違う」

速攻で否定して貴明の後ろを指差す。

「俺、霊感があるんだ」

「は!?」

初耳なことに驚き、目を丸くする。そんな話は聞いたことがなかった。

「お前の後ろに、奥さんの霊がついている」

「!?」

また後ろを振り返るが、誰も居ない。貴明は誤魔化そうと口を動かす。

「まさか。そんなわけあるか」

「あるんだよ。俺には見える」

Aは自信満々に言い、続けて言う。

「お前、奥さんを首絞めて殺しただろう。生命保険目当てに」

「!!」

貴明は思わず、かたまった。何で分かるんだ、畜生。本当にAは霊感があるらしいと悟り、貴明は怖くなった。

「そんなバカなこと…」

といった後、急にこの場に居ることが嫌になり、玄関へ飛び出す。Aが「おい」と言ったのも聞かず、走り出す。不思議と冷静な自分が居て、靴を引っかけると外へ駆け出す。Aが後ろをついて来ているのは分かったが止まらずに、走り続ける。

「畜生」

Aが嘘をついていないことは分った。心の声がそう告げていた。

「何なんだ、この力!!」

唇を噛みしめると、とにかく必死で走った。







































































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