魔力は十分 調節は不十分
今日の授業は魔法学。
魔族として魔法に興味はある。問題は、わたしの魔法が少々元気すぎることだ。
以前、杖から花火が出た。
……魔法を使おうとしただけなのに、どうしてお祭りが始まるんだろ。
「今日は魔力の調節について学びます」
教壇に立つシェリオン先生が、黒板に文字を書いた。
先生はウァニュ家に悪い印象を持っているらしく、わたしとシックに少し意地悪だ。
「魔力が多ければ優秀というわけではありません。必要な量を扱えなければ、意図しない現象が起こります。魔法は魔力を利用して現象を起こす技術であり、魔術具も魔力を利用する道具です。大切なのは制御することです」
なるほど。魔力が多いだけでは駄目らしい。
「では、杖で手のひらに収まる程度の光を作りなさい」
わたしは杖を構え、魔力を流した。
小さな光が生まれる。
よし、成功!
パァンッ!
次の瞬間、色とりどりの花火が教室に広がった。
「エス、課題は花火の制作ではない」
「言われなくても分かってるよ! シック」
隣のシックが淡々とツッコむ。
「エスさん。説明を聞いていましたか?」
「聞いていました」
「では、なぜ花火を出したのです?」
「わたしが知りたいです」
「魔力量を自慢する前に、制御を覚えなさい」
……絶対わたしのこと嫌いだよね?
隣を見ると、シックの真っ白な髪が目に入った。
その髪は、教室の光を受けても色を変えることなく、どこまでも白い。
そんな髪の持ち主は、わたしよりも多い魔力を持っているというのに、杖の先には指定通りの小さな光が浮かんでいた。
「シック、魔力の調節が上手だね」
「魔力量が多いことと、調節が上手いことは別だからな」
「わたしより魔力が多いのに?」
「多いからこそ、必要な量だけを扱えるようにしている」
正論だ。悔しい。
「もう一度やってみろ」
シックに言われ、わたしは再挑戦した。
小さな光を作る。焦らない。余計な魔力を流さない。
……できた!
パァンッ!
「なんで!?」
「成功したと思って集中を切らしたんだろう」
「成功を喜ぶのも駄目なの!?」
「そういう話じゃない」
シェリオン先生が近づいてきた。
「シック・ウァニュさん。隣の生徒に構っていないで、自分の課題に集中したらどうです?」
「課題は終わっています」
「そういう問題ではありません」
「では、どういう問題でしょうか」
先生の眉がぴくりと動いた。
シック、淡々と正論をぶつけるのやめて!
結局、わたしは何度も練習し、ようやく小さな光を出して消せるようになった。
魔法は、魔力が多ければいいわけじゃない。必要な量を見極め、狙った現象を起こす技術が必要なのだ。
「練習すれば、もう少し安定するだろう」
シックが言った。
「もう少し?」
「花火が出なくなるくらいには」
「目標低くない!?」
いつか絶対、魔法を使いこなしてみせる。
そして花火を出すときは、自分の意思で出してやるのだ。
……教室では、もう出さない。
たぶん。
次回 魔界の法と禁忌




