報連相はお大事に
「どういうことですか! ってか誰ですかあなた! わたしの影武者ですか?」
エスは自分とまんま同じ顔体格をした子供がトイレに行く隙を見て連れ出し、屋上へとやってきた。
「影武者って……そんなんじゃないですよ。ぼくはただのジーです」
「ジー!? え? ジーがわたしの姿に!?」
ジーはわたしの興奮さにため息を吐きながら腰から杖を出した。金色の綺麗な宝石が浮いている。こいつも金持ちかよっ。
「ピーピー」
「え? 何を言って……」
ジーは意味わからん言葉を発して杖を振る。少し煙が出てジーの姿がわたしから普通に戻った。服も変えられるのね。
「さっきの“ピーピー”は呪文ですか?」
「まあ、はい。魔法を解くものです。自分にしか使えません」
「ふへー」
……ピーピーってちょっとダサいね。わたしならもっとかっこいいの思いつくのに。魔術の王、ここに逸材がいますよ!
「あ、そういえば、なんでジーがわたしの恰好していたんですか?」
わたしが本題に移るとジーは真面目な顔になった。わたしは彼のイケメン顔に息を呑む。
「始まりはザック様の言葉です」
~昨晩~
ザックの部屋にジーが呼ばれた。
「ねえ。ジー」
「なんですか、ザック様」
ソファーでくつろいでいるザックにジーは返事をする。
「エス……明日から学校だよね」
「そうですね」
ジーは眠たそうにしているザックの隣に座る。
「心配ですか?」
「当然だ。親だからな」
ザックは眠気に耐えられなくなったのかベッドへ歩く。
「待ってください、お義父様! なぜ僕を呼んだのですか?」
ジーがベッドの天蓋を閉めようとするザックの腕を掴む。ザックは反射的にジーの足を蹴ってしまった。
「いたいっ!」
苦しむジーにザックの治癒魔法は逆に煽られた気になる。が、ザックは話し合おうと体を起こす。
「ごめんね。こんな夜遅くに。せっかく来てくれたのに。蹴っちゃって」
「で? 用件は?」
ジーもザックの隣に座る。
「エス。大丈夫かなって。杖買った時から悩んでたから。もしかしたら学校が心配なのかも。でも私は何もしてやれない。親なのに」
~現在~
「という感動的な話に泣いた僕がこの案を提案したって訳です」
「なるほど、お父様にも感情が……」
わたしが別の所で感動しているとジーが軽く頭を叩いた。痛くはないけど怒りがこみあげてくる。
ジーとお父様への怒りが。
「なんで……」
わたしの涙にジーが気付く。
「なんでわたしに何も言わなかったんですか!」
「え……」
わたしは涙が止まらない。
今日までお母様にたくさんの作法を学んだ。アールに貴族の言い回しをたくさん学んだ。ジーには護身術を。お父様には軽い魔力操作を。あと冬の英雄野郎に凍えながらも勉強も教えてもらった。
なのに。
全部無駄になった。
「ジーの意地悪! 予想外なことが起こってもう全部忘れちゃいました!!」
「はあ?」
床で泣きじゃくっているわたしにジーは困惑する。
「もう! 報連相はちゃんとしてー!!」
次回 凍えてぇ担任




