きいてったら、きいてよ!
ザックはジーを椅子に縛り付ける。
「あ、の、ザック様? これはどういう……」
ジーは訳が分からずザックを見る。
……確か昨日はベッドで普通に寝ていたはず! なのに起きたら椅子と縛られてて。
「ジー、私の話、聞いてくれるかい?」
ザックはジーを強く縛った。
ジーの答えなど一つしかない。
「は、はい……」
「前はジーが叫び散らかして話せなかったからね。どこまで話したっけ?」
ザックはジーの目の前に椅子を用意してそこに座りながらジーに問う。
「……」
ジーは黙る。
「あー、エスの誕生日の話だ。で、その誕生日のときにエスと二人っきりになったときに聞かれたんだ。お父様はまだ独身か? って。それで私は親が決めた婚約者がいるんだーって話した」
ジーは話したいことがあるのに話せない。今さっき口を塞がれたところだ。
「話すことがないなら続けるね」
……うっざ。ザック様うっざ。
僕が話せないことがわかっててこういうこと言うのホントにキモイ。
僕の心の中が分かっていながらザックはまた口を開く。
「でね、その半年後ぐらいに王宮に行く理由を聞かれたの。そこでも女性に会いに行っているって言った。それでエスは私を不倫男だと決めつけた」
ジーは静かに喋るザックを睨む。ザックは気づかず話し続ける。
「でも、最近のエスは私をニートで結婚できないと悪口を言われただろ?」
ジーに問いかけるものの、返事は帰ってこなかった。ザックは自分が彼の口を塞いだことを思い出した。
「でね? エスの記憶力の問題かと思ったけど、王宮のパーティーではっきりしたよ」
ザックは深呼吸をしてジーをまっすぐ見た。
「今のエスは人間。それは前分かったよね。でももとのエスも人間なんじゃないかなって。思い始めてる」
ジーは眉間にしわを寄せる。なにいってんだこいつと思いながら。
「王宮パーティー、エスと話している人間がいた。その子は耳が隠されていて、顔はメルに似ていた。私は英語ぐらいしか話せないけど、確かに彼女はエスに向かって‘セイカ’と言っていた。セイカが何かって? エスの人間の名前だ。彼女はエスの正体を知っていた。そしてエスはその彼女に向かって‘エス’と言っていた。意味が分かったかい?」
ジーは頷いた。
これは本当に意味が分かったら怖い話だ。
「つまり、エスは死んだんじゃない。人間界のセイカと入れ替わっていたんだ」
ザックは目を閉じて下を向いて言った。
~二年前~
このころのエスはお父様と庶民的なカフェに行って二人組出来た客たちの関係を考えるゲームにはまっていた。
今日もお日柄もよく関係あてゲームが行われないわけがなかった。
「ねえ、お父様、あの人達はどういう関係だと思います? 俺は兄弟に一票」
エスは斜め前の席を見ながらココアを飲み、ザックに砂糖を渡す。
「兄弟? どう考えても夫婦だろ」
ザックもその席の二人を見ながらエスからもらった砂糖をコーヒーに入れる。
「え? そんなに歳離れて見える?」
「いや、十は違うだろうけどあの距離感はねぇ。夫婦でしょぉ?」
ザックがコーヒーを飲んでエスを見るとエスは例の席を見ながら驚愕の表情をしていた。ザックも急いでその席に注目してみると新しく男が加わった。その男は元々いたカップルの男とキスをする。女はそれを見て二人ともにキスをする。
「わかんねー。魔界分かんねー」
勝敗がつくことはごくわずかだった。
でもそれがザックにとってすごく楽しいことだとしなくなってから気づいた。
なくなってから大切さに気づく。
魔界でもその経験をするとは。
ザックはジーを開放してやり、自分の部屋に戻った。
ジーも自分も部屋に戻る。
そのときに何か忘れているような気がした。
「あれっ、なにが気付かれたんだろ」
次回 エス、はじめてのおつかい! ~環境が変わると人は変わる そんなことわかってたよ~




