表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
30/30

赤倉・軽井沢編 3日目その3 〜我が家の「帰路あるある」ではなく、「なしなし」の話〜

 パターゴルフが終わり、そろそろ帰路につかねばと思いながらも、軽井沢で有名なパン屋に寄ってから帰ろうという家人の要望で、帰りの道すがらのパン屋の支店に寄るため、クルマを走らせていた。

 ネットで調べると、その店の閉店時刻まであと30分ほどしかなかった。クルマのスピードメーターと時計を見比べながら走っていると、

「あそこのカフェは、この間YouTubeで見た最近開店した有名珈琲店の支店よ。軽井沢に来たらああいうカフェに行きたかったわ。」

と反対側車線の沿道を眺めていたマダムが仰った。

「ええ〜、どうする?Uターンする?」

とお抱え運転手が尋ねると、マダムは、

「うん。お願い。パン屋はあきらめた。」

と命令するので、反対車線側の空き駐車場にクルマを入れ、Uターンしてそのカフェに向かった。

 カフェに着くと、開業してまだ日がそれほど経っていないため、建物は老舗の雰囲気はなかった。印象としてはここ数年来増えた「〇〇珈琲」という看板をつけた店と同じような造りだった。店内は、4時過ぎという時間帯のせいか、空いていた。

 メニューと自分の腹と家人と相談して、私は、ガレット (ハーフサイズ)のアイスコーヒーセット、家人は、YouTubeで見た栗のソフトクリームのホットコーヒーセットを注文した。

 コーヒーは、有機栽培のコーヒー豆を使った濁りのあるコーヒーで、フルーティーな酸味が強く感じられるため、口コミで賛否が分かれているが、苦味よりも酸味のあるコーヒーが好みの私たちは美味しく飲んだ。栗のソフトクリームをひとなめさせてもらったが、栗の風味があまり自己主張しておらず、好感がもてる味だった。

 私は、これまでガレットという料理を食べたことがなかった。蕎麦粉で作ったクレープのような物だとは聞いていたが、たまたま今まで私たちが行く店のメニューにはなかったのだ。どんな味がするものなのか楽しみに、フォークとナイフを持った。

 直径20cmの円の弧端を折って正方形にしたガレットの上に、ロースハム4枚が載せられ、それに生卵がかけてあった。

「これ、絶対美味しいに決まってるじゃん。」

と食べてみると、クレープのようには甘くはなく、出汁の効いていないもんじゃ焼きのせんべいを厚くしたようだった。ガレットの熱で半熟化した卵をハムに絡めて、生地と一緒に口に運ぶと、卵の甘さとハムで3倍増しに旨かった。家人のためにガレットの一切れを小皿に盛り、

「半熟卵ってなぜにこんなにも美味しんだろう?不思議だね。」

と尋ねると、ガレットをパクついた家人も同意した。


半熟を 熟年夫婦 食しおり


ガレットの大きさもちょうどよかった。これでハーフサイズなのだからレギュラーサイズを注文していたら、昨日の朝食の二の舞いになってしまう、と思った。

 味覚的にも量的にも満足して店を出た。あとは、駿河湾を目指して南下するだけである。

 道程は、佐久、八千穂、野辺山、清里を通り、須玉から中央道、双葉JCから中部横断道にのってひたすら南下し、富沢ICで、国道52号線に下りて、海に面した富士市を目指す。所要時間は、およそ3時間半である。

 2日前の往路では、眠気との闘いだったので、復路も眠気に襲われることを予想して、柿の種などの眠気覚まし菓子を何種類か用意してあったが、昨日の朝食ビュッフェ事件で胃袋の状態が芳しくなく、腹の脂肪が増えてきた私は、菓子類を食べる気にはなれなかった。どうせ家人はいつものように、途中から夢の世界に入り込んでしまうだろうから当てにはならないだろう。

 そこで、奥の手。「歌を大声で歌って眠気を吹っ飛ばす作戦」の実行である。まずは、お決まりの『富士川第一中学校校歌』。これを、1オクターブ高くして歌うのだ。正しい音程では効果がないのだ。高音部などはかすれて声が出ないが、構わず大声でキイキイ歌うのだ。

 次は、榊原郁恵の『夏のお嬢さん』だ。この曲は、逆に男声の低音でゴオゴオと歌うのだ。なぜならば、あの歌は、男が若い娘への恋心を歌っているからである。

 2曲歌ったので、家人に、

「なんかリクエストある?」

と尋ねると

「♪バラ色の雲と思い出を抱いて~」

と歌い出した。昭和のグループサウンズの曲だ。題名もグループ名も忘れ去っているが、有名なフレーズなので、一緒に唄えた。

「次の曲は?」

「♪昔アラブの偉いお坊さんが~」

「♪恋を忘れた哀れな男に~」

なんてことはない。家人は、私へのリクエストではなく、自分が唄いたい曲を唄っているのだった。


昭和曲 妻に従い 唱和かな


 いっしょに唄いながら帰ったため、珍しく家人は車内で一睡もせず、自宅に戻った。


口を開け (いびき)はかかず 歌唄い

 私は、高原のバラ色の雲と思い出を抱いて、海辺に近い街へ帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ