015-000 自由とは(閑話)
2日目は、本当に何も起こらなかった。
班員の行きたがっていた場所を巡って、写真撮影をして、様々なことを話し合って。
話題は政治経済からスポーツのことまで。もちろん、期待する超能力のことは出ない。
班員は政治家や弁護士を志望する子だっただけに、お互いの意見を交換する場となっていた。
「ウチは力が欲しいなぁ」
将来の話題になって呟いた一言に、班員の2人が食いついた。
「私は能力が無いから解らないけど。能力者って既に力、持ってるようなもんじゃん? それ以上、力が欲しいって思うことが不思議」
「右に同じく。というか、それ以上の力を得て何に使うの?」
「何に、って ……」
言われて、私まで困惑した。
力があれば、何でも出来ると思っていた。
何でも、の中には外界での一人暮らしや仕事などが含まれていた。
でも、力があっても死神様が居る限り、私に外界での自由は訪れない。
「(力だけじゃ、結局、自由にはなれないんだ ……)」
しかし、死神様を倒したい訳ではなかった。
それでも力が欲しいと願っていた私は、何のために力を得ようとしていたのか考え込んだ。
そんな様子に、黙っていた班員のもう1人が答える。
「羽生さんが欲しいのは、もしかしたら只の力では無くて権力かも」
「「権力??」」
「うん、そう。権力があれば自由になれるから。多分、私達と同じかも、って思った」
班員の言葉に私は耳を傾ける。
「私の家、昔から弁護士の家系だから、私も当然、弁護士になることを強要されているの。
もちろん、今の家から逃げ出したいって気持ちはある。両親の期待が大き過ぎて、テストの成績が悪かった時は、私が潰れそうになるから。
でも、弁護士になったら両親から解放されて、お金も得られて、自由になれる。
そう考えているから、今が辛くても頑張れるの」
私は今の話しを死神様と里に置き換えてみた。
それがピッタリ当て嵌まるものだから驚いてしまう。
つまりは、誰もが将来の自由を求めて今を我慢しているのだと理解した。
「両親が私に期待しているのは私が権力を得ること。だから、羽生さんの力というのも、多分、権力のことじゃないかな? 能力的な力ではなくて、ということね」
権力があれば、外界で自由な活動を公認される可能性があった。
非能力者に言われて、初めて気付かされた事実だった。
ホテルへの帰りのバスの中で発表された、個人のお風呂を2回に分散するという内容に首を傾げながらも、私達は話し疲れて自然と眠りに落ちていた。
ホテルに到着した時は橋本先生に叩き起こされる程、私達は深く眠ってしまっていたらしい。
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計画は完璧。
だから、計画通りに例の薬をカレーに混ぜる。
これで下準備は出来た。
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バスを下ろされて、再三、お風呂の説明を受ける。
その際に、私は1組の生徒の不穏なオーラに気付いた。よく見れば、それは1組全体から大きめの黒い湯気のようになって湧き出ていた。
通常、オーラは体の表面から溢れ出ている。だが、その量は能力を鍛えているか、いないか、ではっきりとした差が表れる。
もっとも、鍛えているならば多すぎるオーラを抑え込むことや、逆に放出して量を調整することも出来るが、鍛えていない者はその調整は難しいとされている。
しかし、元々の量が少ない人は、そもそも調整する必要がない、とも言えた。
だが、鍛えていないと思われる者だけではなく、何故か非能力者からもオーラがかなり溢れていた。多すぎるオーラは調整しなければ肉体に悪影響が現れてしまう。
『原因は解らん。が、気があんだけ出てるってことは、誰かさんが何ぞ動いたってことやろ。もっとも、あれだけの異変、咲九が気付いてへん訳がないけど』
花菜子の呟きに私は冷汗を掻く。
『まさか ……』
朝のバイキングで出されたカレー鍋を思い出す。
夢の中で、誰かが黒い粉末を投入していた。
その粉末を、私は良く知っている。
同じものであって欲しくないとどこかで願った。
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1組の生徒が、次々と顔を黒く染めていく。
『その術は、2人にはまだ早い!!』
私は必死に円と瞳に叫ぶ。
でも、鬼の面の2人には届いていない。
このままだと、2人だけの話しではない。
このままだと、1組の生徒は誰も真の地獄から戻れなくなる。
『お願い …… 誰か、誰か助けて!!』
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