014-020 嘘か真か①
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* 桜色のソレに言う。
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*「貴方が助けてくれた。ありがとう」
*『私は引き寄せただけ』
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* 答えたソレが言う。
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*『貴方は私とは違う。後は、運命に抗うだけ』
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目を覚ますと、布団の中だった。
花菜子と部屋に戻った後、すぐに就寝時刻になってしまったので、あまり会話をすることなく班員と一緒に布団に潜った。
真面目な班員が寝息を立てる中、私は背中側に居る花菜子の方向に寝返りを打つ。
しかし、そこに花菜子の姿はない。
夜冷えしないように上着を羽織って廊下に出た。
気配は下の階からあったので階段を途中まで降りてみる。
「岸間さんが持っとるその十字架は、神の力が宿っとる。あんまその十字架の魔力を酷使せん方がええで。ウチはそれを忠告しに来た」
花菜子の声が聴こえたので足を止めた。恐らくは、ロビーで誰かと会話をしているのだろう。
しかし、その発言以降は小声だったので良くは聴こえない。
次に聴こえたのは、
「ちょ …… ちょっと待った! 死ぬってどういうこと?!」
という香穂里の声だった。
「いや、何で私が死ななきゃならないの?? そもそも理由を知っているなら!!」
「そーゆうのが面倒なんよ。説明は咲九の得意分野や。咲九に聞いて。
ウチは貴重な神器が壊れんよう動いとるだけや。その十字架は貴重な神器や。
でもな、誰でも使える代物でもない。ウチが使えるなら力ずくでも奪っとる」
言い放った花菜子がこちらに向かってくる気配がした。
ちょっとだけ階段を戻って様子を伺う。
すると、花菜子は道中で大きな溜め息をついていた。
花菜子をエレベーター前で捕まえ、自販機の前に設置されていたベンチに座らせる。
こういう時、私にお金があったらよかったのに、なんて思ったものの、私の代わりに自販機で飲み物を購入してくれた花菜子から温かいお茶を渡される。
夜の静かな空気が少し冷たかった。
『花菜子、聞いても良い?』
『ん?』
『何であんな嘘、ついたの?』
神器を壊したくないから香穂里に伝えた ―― それは上辺の言い訳だと勘付いたのは、花菜子が不自然にキレたから。
すると、花菜子がまたも溜め息をついた。
『今の紫には、説明しても解ってもらえへんと思う。…… その内、教える』
『…… 花菜子は、円の計画のこと、知ってるの?』
何となく、聞いてみた。
花菜子は一瞬止まったものの、面倒臭そうな表情をしてから頷く。
『その情報源は、如月さん?』
『そう。咲九はもう、気付いとる。せやから既に対策済み』
花菜子の言葉で私は悟る。
そう言えば、夕飯の席に瞳の姿が無かった気がする。
『瞳が仕事で居ないのは、もしかして ……』
『そう。咲九がある人に依頼して、(鬼の面が)青い方を仕事として雇ってもろたらしい』
末恐ろしい、と感じた。
もしかしたら、花菜子は香穂里の様子を知る為にわざと接触したのかもしれない。
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*『運命に抗う、ね』
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* 桜色の半透明の水に失笑を返す。
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*『じゃぁ、私にその力を頂戴?』
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