7 四層の秘密
今日は2話投稿します。
6時と18時に投稿します。
これから毎話ステータス書いていきます(そこ!文字数稼ぎなんて言わない!)
次の一週間、俺たちは新しい装備に慣れ、チームの連携を磨きながら、それぞれができる限りの準備を進めた。特に俺は、夜な夜な魔石ガチャに明け暮れ、わずかながらもステータスを上げるとともに、三つ目のスキル『運命の選択』の習得に没頭した。
ある夜、訓練施設で一人、スキルの練習をしていると、優しい声がかかった。
「健太さん、お疲れさまです。そんなに遅くまで……?」
振り向くと、聖子が立っていた。純白の聖職者ローブからはんだるが、私服の彼女は淡いパステルカラーのワンピースを着ており、また違った優しい雰囲気を漂わせていた。
「聖子か。まだ少し練習していたところだ」
「新しいスキル、難しいですか?」
「ああ……未来を見通すなんて、どうやったらできるのか見当もつかない」
聖子はそっと近づき、俺の隣に腰を下ろした。
「未来……ですか。私はよく、女神様にお祈りを捧げます。その時、ふと、目の前の人の未来がほんのり明るく照らされるような……そんな感覚になることがあります」
「ほう……? それは興味深い」
彼女の言葉に、ふと閃くものがあった。『運命の選択』は、未来の「確率」を読むスキルだ。聖子の「祈り」は、もしかしたらそれに近いものなのかもしれない。
「聖子、一つ頼んでいいか?」
「はい、何でしょう?」
「俺がこのスキルを練習している間、そばで……祈っていてくれないか? あるいは、何かヒントになるようなことがあれば」
聖子は少し驚いた表情を見せた後、優しく微笑んだ。
「わかりました。お役に立てるなら」
彼女は目を閉じ、静かに手を組み始めた。特に大きな動作や詠唱はない。しかし、彼女の周囲には確かに、穏やかでありながら強い「何か」が満ち始めている。APP58の輝きが、ほのかに増しているようにさえ感じた。
俺も目を閉じ、『運命の選択』の感覚を探る。未来……分岐点……最も有利な選択……
(……無理だ。やはり何も……)
すると、その時だ。
聖子の穏やかなオーラが、ほんのりと俺に触れてきたような感覚があった。そして、暗闇だった視界の向こうに、かすかに、幾筋もの光の道のようなものが見え始めたのだ。
(……!?)
一本の道は明るく輝き、別の道は曇っている。さらに別の道は、途中で突然消えている……。
「これは……!」
「どうかされましたか、健太さん?」
俺は目を見開いた。ほんの一瞬、ほんのわずかな未来の断片を、確かに「見た」気がした。
「今……少しだけ、道筋のようなものが見えた気がする」
「まあ! 良かったです!」
聖子の顔がぱっと輝いた。その笑顔は、APPの数値以上の、心からの喜びに満ちていた。
「聖子……お前の『祈り』が、俺のスキルに何らかの影響を与えたかもしれない」
「そうでしょうか? 私にできることなら、いつでもお手伝いしますよ」
彼女は照れくさそうにうつむいた。
「……ありがとう、聖子。助かった」
「いいえ……こちらこそ、お役に立てて嬉しいです」
その瞬間、なぜか俺の胸の中に、ほんのりとした温かみが広がった。LUCKの力とはまた違う、穏やかで確かな温かみだ。
◆◇◆◇◆◇
任務前日。迷宮社本部の作戦室で、最終ブリーフィングが行われた。
カゲトが、最新の偵察データをスクリーンに映し出す。古代観測所は、森の中心にある円形の広場に、ぽつりと建つ白亜の建造物だった。しかし、その周囲には、強力な結界が張られているのが確認できる。
「結界は五重に張られている。物理的障壁、魔法障壁、精神干渉、そして……確率変動障壁だ」
「確率変動……?」
「ああ。内部への侵入を試みる者の『運』を歪め、失敗に導く障壁だ。通常の手段では、門前にすらたどり着けない」
カゲトは俺を見る。
「ここが、お前の出番だ、健太。お前のLUCKが、この確率変動障壁を無効化できるか、あるいは突破する弱点を見つけ出せるか」
「やってみるしかないな」
「ただし、油断は禁物だ。結界の外にも、強力な魔物が徘徊している。前回のアースゴーレム以上の個体も確認されている」
スクリーンに映し出される魔物のデータを見て、紫子が厳しい表情を浮かべる。
「LV60前後……かなり手強そうです」
「ですが、新しい装備もあります。必ずお守りしてみせます」
聖子が確かな口調で言う。
「では、明日の朝8時に、ここに集合だ。しっかり準備を整えておけ」
ブリーフィングが終わり、各自が解散する中、聖子がそっと俺の袖を引いた。
「健太さん、よろしいですか?」
「ああ、どうした?」
「もしよければ……今夜、一緒に女神様にお祈りを捧げませんか? 明日の任務の安全を願って」
彼女の瞳は真摯で、優しさに満ちていた。あの日、スキルの練習を手伝ってくれた時の温かみを思い出し、俺はうなずいた。
「ああ……そうさせてもらうよ」
◆◇◆◇◆◇
迷宮社本部には、小さな礼拝堂が設けられていた。聖子に導かれ、その静かな空間に足を踏み入れる。柔らかなろうそくの灯りが、穏やかな空気を醸し出している。
聖子は祭壇の前で跪き、静かに祈りを始めた。俺は少し離れた席に座り、彼女の後ろ姿を見つめる。その佇まいは、まさに「天使」の名にふさわしい、神聖ですらある美しさだった。
やがて、彼女の祈りが終わると、俺の隣に座った。
「ありがとうございました、健太さん。来てくださって」
「いや……むしろ、ありがとう。なんだか、心が落ち着く」
「そう言っていただけて、嬉しいです」
少しの沈黙が流れる。ろうそくの火が揺らめく音だけが、静かな礼拝堂に響く。
「聖子は、なんで迷宮社に入ったんだ?」
「はい……私には、幼い頃から『癒し』の力がありました。傷ついた小鳥や、道端の花でさえも、私が触れると元気になることがあるんです」
「それは……生まれ持った才能だな」
「ええ。でも、その力で、もっと多くの人を、世界を救いたいと思って。迷宮社なら、その力が必要とされていると聞きまして」
彼女の目は、強い決意に輝いていた。見た目以上の芯の強さを、改めて感じさせられた。
「健太さんはどうですか? なぜ、あんなに……『幸運』に全てを賭けようと思ったんですか?」
珍しくストレートな質問に、俺は少し考え込んだ。
「……最初は、ただの反抗だった。『運に振ったら人生棒に振る』って、よく言われたからな。その言葉に反発したってのもある」
「でも今は?」
「今は……この力で、守りたいものがあるからだ。明日香も、紫子も、聖子も……このパーティーのみんなをな」
聖子の頬がほんのり赤くなった。
「……嬉しいです。私たちのことを、そう思ってくれているなんて」
「当たり前だ。お前たちは、かけがえのない仲間だ」
再び沈黙が訪れる。しかし、先ほどとは違い、心地よい静寂だった。
「健太さん」
「ん?」
「……お手を、貸していただけますか?」
聖子が、少し恥ずかしそうに、しかし確かな意志を持って手を差し出した。俺は少し驚きながらも、その手を握った。
すると、彼女の手から、あの温かなオーラが再び流れ込んでくる。しかし今回は、祈りの時よりもっと強く、確かに。
「これは……?」
「私の……精一杯の『祝福』です。明日の任務が、無事に成功しますように……そして、健太さんが、ご自身の道を見出せますように……」
その瞬間、俺の《マイチェック》が、ほのかに反応した。
状態:精霊の加護| LUCK効果微増 | 精神安定 |
「聖子……お前……」
「どうか、お気になさらずに。これは……私からの、少しばかりのお守りです」
彼女は微笑んだ。その笑顔は、ろうそくの灯りに照らされて、一層美しく輝いて見えた。
◆◇◆◇◆◇
任務当日。朝8時、全員が作戦室に集合した。それぞれの顔には、緊張と決意が浮かんでいる。
カゲトが最終確認を行う。
「全員、装備の最終チェックは済んだな?」
「「「はい!」」」
「では、行くぞ。健太、先頭を頼む。紫子、前衛のサポート。聖子、中衛での支援を忘れるな。明日香、魔法攻撃はタイミングを見計らえ」
エレベーターで深部へと降りていく。第四層のゲートが近づくにつれ、あの不気味な静寂が再び迫ってくる。
ゲートをくぐり、第四層「静寂の森」へ。今回は、最初からLUCKの感覚を最大限に研ぎ澄ませている。無数の確率の流れが、より鮮明に感じ取れる。
「結界までは、ほぼ直進だ。前回のルートを覚えているな」
「はい、任せてください」
紫子が先頭に立ち、慎重に進路を開いていく。新しい装備を身にまとった彼女の動きは、以前よりも軽やかで力強い。
しばらく進むと、前方から複数の気配が感じられる。
「魔物だ。三体……いや、五体か」
「《マイチェック》!」
シャドウストーカー (LV52)
特徴:高速、暗殺術、集団行動
「後ろにも回り込まれる! 注意しろ!」
「《鉄壁の構え》!」
紫子が盾を構える。しかし、シャドウストーカーは紫子を無視し、なんと後衛の聖子と明日香を狙って動き出した!
「っ!? こいつら……!」
「聖子さん!」
紫子が焦りの声を上げる。その瞬間──
(……左から二体、右から三体。右の一体がまず仕掛ける……!)
『運命の選択』のスキルが、かすかに、しかし確かに未来の断片を映し出した。
「明日香! 左にウィンドカッター! 聖子、右に浄化の光を!」
「「はい!」」
明日香の風の刃が左側の二体の動きを封じ、聖子の放つ浄化の光が右側の魔物の目をくらませた。
「紫子! 今だ! 右の混乱している三体を!」
「了解!」
紫子が猛然と突撃する。ミスリル合金の盾「皎月」が、魔物たちをなぎ倒す。
「ふん……!」
「残り二体は俺が──《ラッキーパンチ》!」
俺の拳が、残りのシャドウストーカーの頭部を粉砕する。
一連の流れが、水が流れるようにスムーズだった。
「……凄い。あの連携……」
「お兄ちゃん、今の……『運命の選択』?」
「ああ……少しだけ、だがな」
聖子が嬉しそうに微笑んだ。彼女の『祝福』が、わずかながら効果を発揮しているのかもしれない。
そうして一路、古代観測所へと向かう。結界が張られた広場が見えてきた。白亜の建造物は、近くで見るとさらに威容を誇っていた。
「これが……古代観測所」
「結界の圧力が凄まじい……」
五重の結界が放つオーラは、物理的に迫ってくるほどだった。
「健太、頼む」
「ああ」
俺は結界の前に立ち、精神を集中させる。LUCK3000の感覚を最大限に研ぎ澄ませ、確率変動障壁との干渉を試みる。
(……この結界……確かに俺の『運』を撹乱しようとしている)
しかし、LUCK3000という圧倒的な力の前では、その撹乱もかき消されてしまう。さらに、聖子の『祝福』が、ほのかに結界との調和を促しているような感覚さえある。
「……大丈夫だ。ついて来い」
「まさか……あの強力な結界を、ただ歩いて突破するつもりですか?」
「信じろ、紫子」
俺はためらいなく結界へ足を踏み入れた。他の三人も続く。結界のオーラが体を包むが、特に支障はない。
「信じられない……本当に突破できた」
「これが……健太さんの『幸運』……」
観測所の重厚な石造りの扉が、眼前に立ちはだかる。ここにも、強力な魔法のロックがかかっている。
「このロック……どうすれば」
「待て」
俺は扉の前に立ち、再び『運命の選択』に意識を集中させる。未来の分岐……開ける方法……。
(……右上、左下、中央……この順に魔力を注げ……)
「明日香、聖子。俺の指示通りに、扉に魔力を注げ」
「「はい!」」
「まず右上……次に左下……そして中央だ」
二人が指示通りに魔力を注ぐ。すると、扉に刻まれた紋章が順番に輝き、重厚な音とともに扉が開いた。
「開いた……!」
「中へ急げ!」
中は薄暗く、ほこりっぽい空気が漂っていた。壁には古代の文字や、複雑な魔法陣が刻まれている。
「ここが……古代観測所」
「あの机の上に、何かありますよ」
明日香が指さす方向には、分厚い書物と、いくつかの水晶のような道具が置かれている。
俺が近づき、書物を手に取る。そこには、古代語で何かが記されている。
「読めるか?」
「ちょっと待って……《マイチェック》で……」
すると、《マイチェック》が反応し、古代語が自動的に翻訳されて表示され始めた。
|『確率論と運命改変に関する考察』……真の幸運とは、数値化された確率を超え、運命そのものに干渉する力である……|
「!?」
「まさか……これは……」
まさに、俺の「幸運」そのものを論じた書物ではないか!
その瞬間、観測所の奥から、不気味な気配が迫ってきた。
「お兄ちゃん、何か来る!」
「全員、警戒を!」
奥の闇から、ゆっくりと現れたのは──人間の形をしているが、明らかに人間ではない、漆黒の鎧に身を包んだ騎士だった。
その姿を見て、カゲトから渡されていた念話器から、彼女の声が緊迫した口調で響く。
“まさか……『運命の番人』がまだ活動しているとは……健太! あれはこの観測所を守る自律守護者だ! LVは70以上ある! 撤退だ!”
“だが、この資料は……”
“命あっての物種だ! 今すぐにだ!”
漆黒の騎士──『運命の番人』が、重々しい足音を響かせて一歩踏み出す。その圧迫感は、これまで戦ってきたどの魔物よりも桁違いだった。
(ここで戦うか……撤退するか……)
俺は必死に『運命の選択』に問いかける。未来の分岐……最も有利な道は……!
すると、視界に、一本の光の道がはっきりと浮かび上がった。それは──戦う道ではなかった。観測所の壁の一部を指し示している。
「みんな! あの壁だ! 全力で壊せ!」
「え? でもあの騎士は?”
“信じろ!”
紫子が迷わず盾で壁を強打する。しかし、びくともしない。
「硬い……!」
「ならば……これで!」
明日香と聖子が魔法を放つ。それでもひびが入るだけだ。
その間にも、『運命の番人』が迫ってくる。
(くそ……間に合わないか……!)
その時、俺の体内で『確率保存』のスキルが自然発動した。蓄えられていたLUCKが解放され、壁の「弱点」が《マイチェック》に浮かび上がる。
「右上だ! 明日香! 右上を狙え!」
「はい! 《サンダーボルト》!」
雷撃が壁の弱点を貫く。壁が崩れ、その向こうに──秘密の通路が現れた。
「行くぞ!」
「でも、資料は……”
“持って行け!”
俺は机の上の書物と水晶を掴み、四人で秘密の通路へと飛び込んだ。
背後で『運命の番人』の咆哮が響くが、もうこちらには迫ってこない。どうやら、通路の外には出られないらしい。
「……どうやら、助かったようだな」
「はあ……はあ……あれが……LV70……」
「信じられない……本当に脱出できた……」
皆、安堵の息をつく。
「健太さん……あなたの『幸運』が、また私たちを救ってくれました」
「いや……これはみんなの力だ。お前たちが信じてついて来てくれたからこそだ」
俺は手にした古代の書物を見つめる。ここに、俺の「幸運」の秘密、そしてさらなる可能性が記されているに違いない。
「さあ、帰還だ。カゲトにも、報告しなければな」
「はい!」
四人は、秘密の通路を進み、無事に第四層からの脱出経路へとたどり着いたのであった。新たな発見と、深まった絆を胸に──。
■ パーティーメンバー ステータス (第四層「古代観測所」調査任務前)
1. 横嶋 健太 (よこじま けんた)
レベル: 31
ステータス:
· STR: 240 (+5)
· VIT: 225 (+7)
· AGI: 225 (+7)
· INT: 220 (+5)
· DEX: 220 (+5)
· LUCK: 3000 (※変動あり)
· APP: 42
主なスキル: 腕力強化、拳術、剣術、魔石ガチャ、ドロップ率増加、ラッキーパンチ、確率干渉(習得中)、確率保存(習得中)、運命の選択(習得中)
装備: 機動の腕輪、各種ガチャ獲得装備
2. 横嶋 明日香 (よこじま あすか)
レベル: 31
ステータス:
· STR: 125 (+5)
· VIT: 125 (+5)
· AGI: 155 (+5)
· INT: 460 (+10)
· DEX: 215 (+5)
· LUCK: 25 (+5)
· APP: 55 (+2)
主なスキル: 脚力強化、基礎魔法、思考加速、並列思考、器用
装備: プロテクトネックレス、マナバンドリング、魔導師のローブ【詠唱速度+10%】、翠晶の杖【魔法威力+5%】、幸運の指輪【ドロップ率微増】
3. 皇 紫子 (すめらぎ しこ)
レベル: 33
ステータス:
· STR: 370 (+20)
· VIT: 400 (+20)
· AGI: 140 (+20)
· INT: 130 (+20)
· DEX: 180 (+20)
· LUCK: 30 (+5)
· APP: 50 (+2)
主なスキル: 鉄壁の構え、挑発、盾術大師、剛力、頑健、不動心
装備: ミスリル合金盾「皎月」、ミスリル全身鎧「銀華」、衝撃吸収ブーツ
4. 天使 聖子 (てんし せいこ)
レベル: 32
ステータス:
· STR: 125 (+5)
· VIT: 190 (+10)
· AGI: 140 (+5)
· INT: 340 (+20)
· DEX: 160 (+5)
· LUCK: 45 (+5)
· APP: 58 (+3)
主なスキル: ヒール、エリアリジェネ、防御バフ【光の加護】、浄化、祈り、精霊の祝福
装備: 聖杖「慈愛の枝・改」、精霊衣「純白の誓い」、聖なるペンダント【MP回復速度UP】
5. 黒鉄 カゲト (くろがね かげと)
レベル: ?? (測定不能)
ステータス: 全て?? (完全隠蔽)
主なスキル: ??? (多数の未知スキルを保有)
装備: 魔装コート「夜霞」、双剣「闇鴉」「白鷺」、偵察用多機能ゴーグル
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