赤く染まる月
翼、夏美そして大阪から来た男女は必死で走り、その場を離れた。
息を切らしながら森を抜け、キャンプ場へと戻ってきた。
翼と夏美は自分達のテントの中に入り、携帯を取り出し警察へ電話しようとするも何故か通じない。
残る2人はそこから少し離れた公衆便所の個室トイレの中に隠れた。
「くそ、くそ、なんで通じないんだ・・・」
携帯をいじくる横で夏美はテントの隙間から外を見回す。
夏美は何かを見て、とっさに口を手で覆い、息を殺す。
外ではゆっくりとこちらに歩いてくる口裂け女の姿が見えた。
突然、口裂け女は方向を変えて公衆便所の方へと歩いてった。
それを見た夏美は翼に言った。
「ねぇ、あの女さっきの2人の方に行ったわ。早く2人にそこから離れるように教えなきゃ!」
翼は少し前に連絡を交換をしていたので、男に電話をかけた。
プルルルルルル・・・・
「繋がったぞ。頼む早く出て来れ・・・」
ブッー、ブッー・・・
トイレに隠れている男の携帯がマナーモードで振るえる。
男はとっさに画面を見て、通話ボタンを押した。
「なんや?」と小声で言った。
「そっちにさっきの女が向かったぞ!早く逃げろ!!」
それを聞いた瞬間、トイレ中に小さく不気味な声が響く。
「ぜった・・・い・・・に、コロす」
男は静かに通話を切った。
一緒に居る女はガクガクと震えて座り込んでいる。
現在、2人は一番奥の個室トイレに隠れている。
口裂け女は強くドアを叩き、中にいるかいないかを調べて行く。
「いな~い」
足を引きずる音が近づいてくる。
1つ、そしてまた1つ・・・
ついに隣のドアがバァンっと開けられた。
次は自分たちがいる所だ。と考えるだけで女は恐怖ですでに意識がもうろうとしていた。
しかし、数秒経ってもドアを叩く音どころかドアの前にいるような気配さえない。
男は少し安心し息を小さく吐いた。
そして携帯を取り出し、翼たちに連絡しようと携帯の液晶画面を見た瞬間、男は凍りついた。
画面には反射した天井が映っているのだが、その画面には隣の個室の壁からこちらをじーっと覗いている女の姿が映っていた。
男が悲鳴を上げると、女は反射的にドアの鍵を開け泣きながら外へと飛び出した。
男の叫び声と足をジタバタさせる音が響く。
翼と夏美はトイレから走って逃げる女の姿を見た。
翼はテントから上半身を出し、こっちにくるように合図した。
しかし泣きじゃくる女の背後から猛スピードで追いかけてくる口裂け女がいた。
そして女の腹からハサミが飛び出した。
女は腹から大量の血を流しながら、足をぴくぴくさせている。
口裂け女はその女の上に馬乗り、ハサミでなにかをしている。
翼はテントのファスナーを閉め、振るえた手で警察を呼んだ。
「こちら〇〇警察署です、緊急の事件ですか?」
「殺人事件だ・・・早く〇〇キャンプ場へ来てくれ!!」
夏美は隙間から外の様子を窺っていると、他の旅客達が死体に気付き大騒ぎしている。
2人はゆっくりとテントから出た。
「そんなバカな・・・あいつはどこに行ったんだよ」
翼は携帯を持った手を下した。
しばらくして数台のパトカーと救急車が到着し、この場は殺人事件とされ調査が開始された。
2人は警察署に連れて行かれ事情聴取を受けた。
すべてを警察に話したが信じてもらえたのかは分からない。
とりあえず東京に戻ってもよいことになり、2人が外に出た時にはすでに朝になっていた。
車に乗り込みエンジンをかける。
夏美は悲しそうな顔をしている。
翼は警察からもらった一枚の名刺を取り出した。
東京に戻った際はこの名刺の人が話を聞いてくれることになっている。
翼は名刺に書かれた名前を読み上げた。
「殺人課・・・大塚聡」




