第六十七話 時の風
前回
時風と大和は、深い海の底で永遠の眠りについた・・・残されたものは大和の永光と時風の日本刀であった
日本原爆事件から10年後・・・2021年1月1日・・・駆逐艦時風沈没地点にて
この海域に2隻の駆逐艦が停泊していた、この駆逐艦は矢野海上警備会社所属、警備艦2号艦の時波と警備艦3号艦の時である、時波の艦首には青年が二人立っていた
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「・・・あの事件からもう10年か・・・」
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「長いようで短かったですね・・・」
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「・・・この海も・・・兄貴達が居なくなった時より・・・綺麗になってるな」
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「大和様は今もこの深い海の中でしょうね・・・」
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「それを言うな飛龍・・・」
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「失言でした・・・ヒュウガ様」
この二人は、かつて大和の相棒と言われていた飛龍と大和の弟のヒュウガである
ヒュウガは高等学校を卒業した後、岡山市内の大学に入り、闘気の後を継ぐ為に勉強中である
現在の年齢は20歳・・・時とは16の時にヒュウガから告白し、現在交際中である
飛龍は東京都内の専門学校に進学し、今は一人暮らしをしている、現在の年齢は22歳
恋人は無し
ヒュウガ
「兄貴は・・・自分で選んで死んで逝ったんだ・・・飛龍にも分かるだろ」?
飛龍
「はい・・・あいつとは幼馴染でしたから・・・」
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「過ぎ去った過去、それを台にして未来へ進もうとしている二人が何言っているのでござるか」?
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「そ、そんな言い方はないと思いますよ、時波お姉様」
そう言って二人の後ろから少女が二人やって来た
ヒュウガ
「時波と時か・・・姉さんの命日なのによくそんな事言えるな」
時波
「いつまでも過去を振り返っても仕方ないでござる・・・元々艦魂は軍艦の魂・・・いつかは解体か、戦場で死ぬかでござるよ」
時
「それに・・・お姉様に言われてる事ですからね」
ヒュウガ
「アメリカだと記念艦として残されている艦船もあるぞ、日本だと戦艦三笠と氷川丸だな」
時波
「あのお方達はまだ時代の流れの中に生きているのでござるよ」
ヒュウガ
「そうか・・・」
飛龍
「そろそろ日の出だな・・・」
飛龍が言うと東の空から太陽が昇り始めた
ヒュウガ
「兄貴・・・」
飛龍
「大和・・・」
二人はその場で目を瞑り手を合わせた
時波
「・・・姉上と大和殿に・・・敬礼」!
そう言うと時波と時は目を瞑りながら敬礼した・・・
時
「時風お姉様・・・」
ヒュウガ
「兄貴・・・俺にはこれは重すぎるぜ・・・これは一生兄貴の物だ・・・10年間預かっていたが・・・向こうでも使ってくれ」
時
「時風お姉様・・・時波お姉様と二人で決めた事です・・・大和さんのと一緒に渡します・・・」
そう言って二人は布に包まれた細長い物を出した、布を取ると中から大和の備前長船永光と時風の日本刀が出て来た
飛龍
「・・・向こうでもちゃんと使うかな」?
ヒュウガ
「兄貴の事だ・・・ちゃんと使うに決まってるよ」
時波
「姉上はあまり使う事は無かったのでござるが・・・」
時
「ちゃんと使いますよ、時波お姉様」
時波
「そうでござるな・・・」
ヒュウガ
「じゃあ、そろそろ・・・」
時
「はい・・・」
そう言ってヒュウガは大和の長船を、時は時風の日本刀に重しを付けて海に投げ入れた
両方の刀は海の底へと消えて行った・・・
ヒュウガ
「・・・・・・・・・」
時
「・・・・・・・・・」
飛龍
「これでよかったんですよね、ヒュウガ様」?
ヒュウガ
「あ、あぁ・・・時もよかったんだよね」?
時
「はい・・・こうした方が時風お姉様も喜んでくれるだろうと思います」
時波
「そうでござるな・・・姉上・・・また来年くるでござるよ・・・」
ヒュウガ
「それじゃあ、矢野海上警備会社に帰りますか・・・帰ったら俺が作ったおせち料理を皆で食べようぜ」!!!!
時
「ヒュウガさんの手料理ですか!?楽しみです」!!
時波
「拙者は昆布巻きが楽しみでござる」
ヒュウガ
「マニアックな・・・」
飛龍
「じゃあ私はくりきんとんを・・・」
ヒュウガ
「飛龍もマニアックだな・・・」
4人はその海域を後にした・・・
とある事から旧日本軍の駆逐艦を見付けた少年大和・・・その駆逐艦に宿っていた艦魂の少女時風・・・
二人は今深い海の底で眠りに付いている・・・二人の出会いは運命だったのか?それともただの偶然だったのか?・・・それはだれにも分からない・・・だが、これだけは言える・・・二人は、今も吹き続ける『時の風』の中での出会いだったと言う事を・・・
これからも未来へ向かって行く『時の風』は何者にも邪魔されす吹き続けるであろう・・・
★駆逐艦時風★ある少年の体験★ーー完ーー
ご意見ご感想お待ちしております
本編はこれで終わりです・・・
次回は後書きを致します