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才能EXの落ちこぼれ召喚士〜成長の鍵は地脈だった!?〜  作者: SN


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15/31

第15話 週次ランキング戦・駆爪鼠


木曜日。


午後最後の授業。

実技訓練。


普段のホームルームとは違い。

実技だけはランキング帯ごとに分けられている。


蓮が所属するのは。

250位から201位までの学年下位の生徒が集まる第五実技クラス。


訓練場には。

それぞれの召喚獣を連れた生徒たちが並んでいた。


蓮もゴロを戦闘形態へ変える。

使うのは、いつもの土の身体。


≪電晶ノ体≫も。

≪泥ノ体≫も使わない。


肉体スキルについては。

まだ周囲へ見せるつもりはなかった。


だが。


新しく得た大地系スキルまで隠すつもりはない。

実技訓練まで手札を伏せるためだけに使う気はなかった。


「始め!」


教師の合図と同時に。

訓練用の魔導人形が動き出す。


槍を構え。

一直線にゴロの胸へ突き出した。


ゴロは大きく避けない。


半歩。

身体をずらす。


心核だけを射線から外し。


──ガッ!


槍を肩で受けた。


そのまま。


「ゴロ。≪大地ノ拳≫」


拳へ魔力が集まる。


──ドゴォッ!!


重い一撃。

魔導人形の胴体が大きく揺れた。


「……やっぱり」


近くから小さな声が聞こえる。


「岩崎のゴーレム、前より強くなってないか?」

「最近ちょっと変わったよな」


蓮は反応しない。

ゴロも目の前の人形だけを見る。


槍が引かれ。

再び、鋭い突きが放たれる。


「≪大地ノ甲殻≫」


ゴロの肩から胸へ。

硬い土の甲殻が形成された。


──ガギィン!!


槍が弾かれる。


「……え?」

「今の何?」

「新しいスキル?」


周囲から何人かの視線が集まった。


「そのまま反撃!」


ゴロが拳を振るう。


──ドゴッ!!


魔導人形が大きく後退した。


「やっぱ新しいスキルだろ」

「成長しないんじゃなかったのか?」

「最近、急におかしくない?」


ざわめきが広がる。

だが、蓮は気にしない。


訓練は続く。


次に起動したのは、剣を持つ近接型。

魔導人形がゴロへ向かって走り出す。


一歩。

二歩。


十分に引き付ける。


そして。


「≪大地ノ角撃≫」


額から土の角が伸びる。


「また!?」


次の瞬間。


──ドンッ!!


ゴロが一直線に加速した。


剣を振り上げた魔導人形へ。

真正面から激突する。


──ドゴォン!!


人形が大きく吹き飛んだ。


「二つも新しいスキル覚えてる……」

「いつの間に?」


今度は、明確に周囲がざわついた。


蓮はそんな声を聞きながらゴロを見る。


確かに使えるスキルは増えた。

だが、変わったのはそれだけではない。


以前なら。


相手へ近付こうとして、無理に追うこともあった。

攻撃が届かなくても、拳を振ることもあった。


だが今は。


追えないなら、追わない。

避ける必要のない攻撃なら、受ける。


そして。


相手がこちらの間合いへ入った瞬間に、重い一撃を返す。

低い機動力を無理に補おうとしない。


ゴロの強みをより活かす戦い方へ。

少しずつ変わっていた。


「……スキルだけじゃないな」


近くにいた教師が呟く。


「前より動きに無駄がない。

 戦い方そのものが変わっている」


その声に。

蓮は僅かに視線を向ける。


だが、何も答えない。


ゴロも次の魔導人形へ。

静かに拳を構えた。


◇


その後も。

訓練は続いた。


≪大地ノ拳≫。

≪大地ノ角撃≫。

≪大地ノ甲殻≫。


三つのスキルを状況に応じて使い分ける。


ただし。


≪電晶ノ体≫と。

≪泥ノ体≫は使わない。


それでも。


周囲から向けられる視線は。

以前とは明らかに違っていた。


やがて。


「そこまで!」


教師の声が響く。


動いていた魔導人形が一斉に停止した。


「今日の実技は終了。

 各自、召喚獣の状態を確認して戻れ」


蓮もゴロを見る。


「お疲れ」


こくり。

ゴロが頷き。


──どんっ。


と胸を叩いた。


その身体が白い光に包まれ。

待機形態へ戻っていく。


蓮は小さくなったゴロを肩へ乗せた。

周囲では、まだこちらを気にしている生徒もいる。


だが。


蓮が今、意識しているのは別だった。


明日。

金曜日。

週次ランキング戦。


対戦相手は、すでに決まっている。


無属性──“駆爪鼠”。


小柄で素早い召喚獣。

以前のゴロなら、苦戦する可能性の高い相手。


だが今は。


蓮は肩のゴロを見る。


「明日だな」


ゴロも。


──ぐっ。


と小さな拳を握った。


◇


翌日。


金曜日の午後。

ランキング戦用の訓練場。


複数のコートでは、すでに試合が始まっていた。


ここで行われるのは、週に一度のランキング戦。

対戦するのは順位の近い生徒同士。

一戦で順位が大きく動くわけではない。


それでも。


二百五十位。

最下位にいる蓮にとって。

上へ進むには一つずつ勝っていくしかない。


蓮は指定されたコートへ向かう。


向かい側には。

すでに対戦相手が立っていた。


その足元にいるのは。


灰色の毛並み。

細い身体。

鋭い爪。


落ち着きなく。

小刻みに身体を動かす鼠型の召喚獣。


無属性──“駆爪鼠”。


画面で見た通り。


攻撃力も。

耐久力も高くない。


だが、速い。


特に小回りが利く。

直線的な速さではなく、細かな方向転換を繰り返しながら相手を翻弄するタイプ。


低機動のゴロにとって、相性の良い相手ではない。

少なくとも以前なら。


蓮は駆爪鼠を見つめる。


そして。

蓮の頭に浮かんだのは。


≪泥ノ体≫。


一度でも泥を付着させられれば。

あの速さを鈍らせられるかもしれない。


「……いける」


とはいえ。


最初から使う必要はない。

土の身体で倒せるなら、それが一番だった。


蓮は肩のゴロを見る。


「まずは土で行くぞ」


こくり。

ゴロが頷いた。


その時。


審判役の教師がコート中央へ進み出る。


「双方、準備」


蓮の向かい側。

対戦相手も、駆爪鼠を戦闘態勢へ入らせる。


「行くぞ」


こくり。

ゴロが飛び降りる。


白い光。


待機形態から戦闘形態へ。

土で形作られたいつもの身体。


太い腕。

低い重心。


深緑色の瞳が正面の駆爪鼠を捉える。

相手の視線もゴロへ向いた。


審判が右手を上げる。


一瞬。


コートの空気が張り詰めた。


そして。


「試合──開始!」


その声と同時に。


「≪疾駆≫!」


対戦相手が叫ぶ。

駆爪鼠の脚へ淡い光が集まった。


次の瞬間。


──ダッ!!


一気に加速する。


右。

左。


細かく進路を変えながら。

ゴロの周囲を駆け回る。


「追うな」


蓮はすぐに指示を出す。


ゴロは動かない。

低く構え、駆爪鼠の動きだけを追う。


向こうから来る。


なら。


無理に追う必要はない。


「そこだ!≪裂爪≫!」


駆爪鼠の爪が白く輝く。

そのまま、ゴロの側面へ飛び込んだ。


──ザシュッ!!


脇腹が切り裂かれる。

土が削れ、傷が走った。


だが、浅い。


駆爪鼠は止まらない。

そのまま背後へ抜け、大きく旋回。


「≪疾駆≫!」


再加速。

間を置かず。


「≪裂爪≫!」


──ザシュッ!!


今度は背中。


さらに。


離脱。

旋回。

接近。


「≪裂爪≫!」


──ザッ!!


肩。


「≪疾駆≫!」


また方向を変え、再び飛び込む。


一撃。

また一撃。


駆爪鼠はゴロの周囲を走り続けながら。

≪疾駆≫で加速し、≪裂爪≫で傷を刻んでいく。


「そのまま削れ!」


相手の声が響く。


ゴロは追わない。

受ける。

ただ、攻撃の瞬間だけを待つ。


右。

左。

背後。

また右。


「次、来るぞ!」


駆爪鼠が斜め前から飛び込む。


「ゴロ。≪大地ノ甲殻≫!」


ゴロの肩から胸へ。

硬い土の甲殻が形成される。


直後。


──ガギィン!!


≪裂爪≫が甲殻へ激突した。


「っ!」


駆爪鼠の身体が僅かに弾かれる。


「今だ!」


ゴロが拳を振るう。


──ブンッ!!


だが。


届かない。


駆爪鼠は。

拳が振り抜かれるより先に離脱していた。


「惜しい……!」


蓮は目を細める。


≪大地ノ甲殻≫なら、攻撃を防げる。

反撃の機会も一瞬だけ作れる。


だが。


その一瞬でもまだ足りない。

駆爪鼠が速すぎる。


「大丈夫だ!お前の速さなら避けれる!

 もう一回!≪疾駆≫!」


再び加速。

右へ。左へ。


そして。


ゴロの正面は通らない。


必ず。


側面。

背後。

斜めから。


≪裂爪≫を叩き込み、そのまま離れていく。


蓮はすぐに理由へ気付いた。


「……角撃を警戒してるな」


昨日の実技訓練。


≪大地ノ角撃≫は、周囲にも見られていた。

一直線に加速するゴロの新しいスキル。

正面から来る相手には強い。


だが。


駆爪鼠は、決して正面へ長く留まらない。

攻撃する時も、離脱する時も、常にゴロの横へ回る。


「使わせてもらえないか」


角撃を出しても狙える位置にいない。

無理に撃てば。

避けられるどころか、その後の直進を狙われる可能性すらある。


対戦相手も昨日の訓練を見て、ちゃんと考えてきている。


「≪裂爪≫!」


──ザシュッ!!


また一つ。

傷が増える。


「そのままだ!ヒットアンドアウェイだ!」


相手の指示。

駆爪鼠は一瞬も足を止めない。


≪疾駆≫。

≪裂爪≫。


離脱。

旋回。


また。


≪疾駆≫。

≪裂爪≫。


ゴロは追わずに受け、拳を狙う。

だが、当たらない。


甲殻で防げても、捕まえられない。

角撃は使う機会すら与えられない。


傷だけが少しずつ増えていく。


蓮は静かに息を吐いた。

土の身体で倒せれば、それが一番だった。


維持魔力も必要ない。

肉体スキルをわざわざ見せる必要もない。


だが。


「……さすがに無理か」


判断を切り替える。


「ゴロ。変えるぞ」


深緑色の瞳が蓮を見る。


──こくり。


ゴロは頷いた。


「≪泥ノ体≫」


白い光がゴロの全身を包み込んだ。


「なっ……?」


対戦相手が目を見開く。


土色だった身体が濃い泥色へ変わっていく。

硬かった表面は湿り、僅かにゆらりと揺れる。


対戦相手はすぐに表情を戻す。


「見た目が変わっただけだ!そのまま行け!」


駆爪鼠が駆け出し。


「≪疾駆≫!」


再び加速する。


「≪裂爪≫!」


──ザシュッ!!


爪がゴロの肩を切り裂いた。


今度は、土の時より深く抉れた。

泥が大きく飛び散る。


「……!」


相手が一瞬だけ目を見開く。

そして、口元が緩んだ。


「なんだ。さっきより脆いじゃん」


駆爪鼠は止まらない。


そのまま離脱。

旋回。


「もう一回!≪疾駆≫!」


──ダッ!!


一気に背後へ。


「≪裂爪≫!」


──ザシュッ!!


今度は脇腹。

また、泥が飛ぶ。


「いける!」


声に明らかな余裕が混じる。


「その身体、防御が落ちてるぞ!」


再び。


≪疾駆≫。

≪裂爪≫。


──ザシュッ!!


腕を切り裂く。


離脱。

旋回。


「≪裂爪≫!」


──ザッ!!


次は脚。

泥の身体が次々と削られていく。


攻撃が通る。

土の身体より明らかに。


だから。


相手は気付かなかった。


爪に。

前脚に。

後脚に。


駆爪鼠の身体へ。

少しずつ泥が付着していることに。


蓮は何も言わない。

ただ駆爪鼠の動きを見ていた。


一撃。

二撃。

三撃。


泥が増える。

それでも駆爪鼠は攻め続ける。


「≪疾駆≫!」


脚へ光。


──ダッ!!


「……」


蓮の目が僅かに細くなる。


さっきより遅い。

ほんの僅かだが、確実に。


駆爪鼠はそのまま側面へ回る。


「≪裂爪≫!」


ゴロへ飛び込む。

そして、離脱しようとした。


その瞬間。


踏み込みが僅かに鈍る。


「そこだ!」


蓮が声を上げる。


「ゴロ!≪大地ノ拳≫!」


拳へ魔力が集まる。

泥の拳がぐにゅりと一回り膨らんだ。


──ドゴォッ!!


初めて。

ゴロの拳が駆爪鼠を捉えた。


同時に。


──バシャッ!!


弾けた泥が駆爪鼠の全身へ降りかかる。


「な、なんで……?」


駆爪鼠が立ち上がる。


「≪疾駆≫!」


脚が光る。


だが。


──ギッ。


遅い。


「……っ?」


そこでようやく。

相手が気付いた。


前脚。

後脚。

胴体。


全身へ泥が絡み付いている。


「いつの間に……!」

「もう遅い」


蓮は駆爪鼠の動きを見る。


先ほどまでの鋭い切り返しはない。

ゴロの正面を避け続けることも、もうできない。


「ゴロ」


深緑色の瞳が駆爪鼠を捉える。


「今ならいける」


ゴロが身体を低く沈めた。

相手の顔色が変わる。


「っ! 横に逃げろ!」


駆爪鼠が必死に方向を変えようとする。


だが、遅い。


「≪大地ノ角撃≫!」


額から泥の角が伸びる。


──ドンッ!!


ゴロが一直線に加速した。

今度は避けられない。


──ドゴォン!!


泥の角が駆爪鼠の脇腹を捉える。

そのまま。

角だけではなく肩から腕まで、ゴロの泥の身体が、駆爪鼠へべったりと擦り付いていく。


小さな身体が大きく吹き飛んだ。


「なっ……!」


駆爪鼠がよろよろと何とか立ち上がる。


「≪疾駆≫!」


脚が光る。


だが。


──ギ……。


ほとんど動かない。

付着した泥の量がさらに増えていた。


もう。


自慢の速さは、完全に失われている。


「くそっ……!」


相手の表情から余裕が消えた。


「駆爪鼠!≪裂爪≫!」


最後の抵抗。


爪が白く輝く。

駆爪鼠がゴロへ飛び込む。


だが、遅い。


蓮にははっきりと見える。


「受けていい」


こくり。


──ザッ!!


≪裂爪≫がゴロの肩へ食い込む。

泥の身体がぐにゃりと形を変え、衝撃を逃がす。


そして。


さらに泥が駆爪鼠へ絡み付いた。

もう離れられない。


「決めろ!≪大地ノ拳≫!」


ゴロが拳を引く。


低機動。

その代わりに持つ高い攻撃力。


重い拳が。


──ドゴォン!!


駆爪鼠を真正面から打ち抜いた。


「ギャッ──!」


小さな身体が後方へ吹き飛ぶ。

地面を転がり、そのまま白い光に包まれた。


召喚解除。


駆爪鼠の姿がコートから消える。


一瞬。

静寂。


審判役の教師が駆爪鼠の消失を確認する。

そして、右手を上げた。


「そこまで!」


蓮の拳が僅かに強く握られる。


「勝者──岩崎蓮!」

「……っ」


勝った。

ランキング戦で。


ゴロが泥色の身体のままこちらを振り向く。

そして。


──どんっ!!


力強く、胸を叩いた。


蓮も自然と笑みを浮かべる。


「ああ。やったな」


周囲では、小さなどよめきがまだ続いていた。


昨日は。


≪大地ノ角撃≫。

≪大地ノ甲殻≫。


そして今日。


身体そのものを変える≪泥ノ体≫。


最下位だった岩崎蓮が。

明らかに変わり始めていた。


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